スピッツ大学

入学試験無し!授業料無料!ただし学歴には書けません!

はじめに

■ スピッツ大学 沿革(2018年版)

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/1000/01/01/000000

 

 

■ スピッツ大学 学長紹介(2018年版)

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2016/06/20/215848

 

 

■ スピッツ全曲研究セミナー一覧

http://itukamitaniji.hatenablog.com/archive/category/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%83%E3%83%84%E5%85%A8%E6%9B%B2%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC

 

 

スピッツ大学ランキング企画 最終結

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_5

 

youtu.be

 

 

スピッツ大学 校歌

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/1000/01/04/000000

 

 

■外部活動記録

http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/1000/01/05/000000

 

 

その他、右の講義一覧より、上記以外の講義に飛ぶことができますので、そちらもよろしくお願いします。(PC版)

特講:スピッツ歴およそ23年の筆者が今の気分で本気で選んだ スピッツで大好きな曲ランキングBEST10

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■おはこんばんちは、スピッツ大学学長のitukamitanijiです。

 

最近は、暑かったり寒かったり、何だかよく分からない天気が続いておりますが、体調の方はいかがでしょうか?私の暮らす広島は、とにかく最近は雨が多くて、何となく気だるい日々が続いております。

 

そんな天気を吹き飛ばすように、我が広島が誇る広島カープの優勝を控え、最近の広島は何となく浮足立っております。頑張れカープ

 


■さて、早速本題に入りたいと思います。

 

ここスピッツ大学(という名前で始めたブログ)が創立されてから、今年の7月で以って、早3年の月日が流れました。

 

そこからさらに時間が経ち、冒頭の画像は8月に撮影したものですが、スピッツ大学は、”投稿記事数が300本”を越え、それからしばらく後、”総アクセス数が300万PV”を越え、さらに”読者数が300人”を越えたのです。

 

このことを、私は冗談も交えて「トリプルスリー」という風に呼んでおりますが、トリプルスリーを達成できたのも、他でもない、ここスピッツ大学を訪れて下さった、皆様が居たからでございます。

 

スピッツ大学なんて、仰々しい名前を勝手に名乗りはじめ、「スピッツの全曲を紹介・解説する」なんていう、変態的なことを、よくもまぁこんなに続けてこられたものだな、と自分自身の変態的な部分を振り返っているところでございます。まぁそんなスピッツ大学を訪れてくれた皆様も、随分と変t…。

 

いやいや、本当にここまで続けられたのも、一重に皆様のおかげだと思っております。何度でも、ありがとうございます、を言いたいのです。

 


■ということで、トリプルスリー記念で、何かをしたいなとか思ったんですが、あんまり気の利いたことは思い浮かばずにいましたが、ここは初心に帰って、シンプルにいこうと思います。

 

題して、

 

投稿記事数300本越え &
総アクセス数300万PV越え &
読者数300人越え
略してトリプルスリーを達成したスピッツ大学の学長である
スピッツ歴およそ23年の筆者が今の気分で本気で選んだ
スピッツで大好きな曲ランキングBEST10

 

をお送りいたします。早いもので、スピッツの全曲解説も終盤に差し掛かっておりますので、今の気分で、スピッツで好きな曲のランキングを改めて作ってみようじゃないか、とそういうことでございます。


あくまで、"今の気分"でのランキングになります。明日には変わっているかもしれないし、極端な話、出来上がったランキングを見てすでに、「あの曲の方が好きなんじゃね?」的に自問自答を繰り返しています。

 

まぁとにかく シンプルに好きな曲を並べました。スピッツをよく知っているファンの方々は、自分の好みなどと照らし合わせて楽しんでいただき、またスピッツをよく知らない&これから知りたい勢の方々は、よかったら自分に合いそうな曲を見つけてみてください。

 

 

 

第10位 猫になりたい 

猫になりたい

猫になりたい

  • provided courtesy of iTunes


シングル『青い車』のカップリング曲、アルバム『花鳥風月』に収録

 

もう文句なしで、スピッツの超名曲の一つですね。この曲と僕との出会いはとても古く、もうかれこれ20年以上も前になります。僕が小学生の頃でした。

 

当時の僕は、カセットにアルバム『インディゴ地平線』『フェイクファー』『花鳥風月』の3枚を吹き込んで(個人的通称:カセット3部作)、兄から譲り受けたカセットウォークマンで、擦り切れるくらい何度も、このカセット3部作を聴いていました。

 

その頃の僕には、少し難しい曲だったかもしれませんが、子ども心にとても印象に残った曲で、ずっと長く聴いてきました。僕が大学生の時に、僕がスピッツファンであることを知らずに、バイトの女性の先輩がこの歌をいきなり歌い始めて、シンパシーを感じて、そのまま恋に落ちたこともありました。

 

好きな人や恋人と一緒に居たいという想いを、”猫になりたい”と表現する草野さんの視点は、やっぱり天才的としか言いようがありませんね。

 

 

 

第9位 旅の途中

旅の途中

旅の途中

  • provided courtesy of iTunes

 

アルバム『三日月ロック』収録

 

アルバム『三日月ロック』には、その名前通り、ロックな曲が多いイメージなんですが、この【旅の途中】は、ロックとフォークソングの中間のような、これぞスピッツの真骨頂と呼ぶに相応しい曲であると思うのです。

 

アルバムの中で、あんまり目立ってないんですかね、個人的には『三日月ロック』の収録曲でも2番目に好きな曲です。やっぱり、草野さんの弾き語りは美しいですよね、好きなイントロランキングでもあれば、間違いなく1、2位を争う曲だと思います。

 

 


第8位 放浪カモメはどこまでも

放浪カモメはどこまでも

放浪カモメはどこまでも

  • provided courtesy of iTunes

 

第22作目『メモリーズ / 放浪カモメはどこまでも』、アルバム『ハヤブサ』収録

 

自分たちの意向に反して、レコード会社より、ベストアルバムを強行的に発売させられてしまった結果、スピッツの活動は一旦止まってしまいました。しかし、そこから、アメリカでの音探しの旅などを経て、新たに純粋なロックバンドとして、スピッツは生まれ変わり、再スタートを切ることになりました。この一連の出来事の流れは、長いスピッツ史の中では、”マイアミショック事件”と呼ばれています。

 

そして、そんな”マイアミショック事件”の真っただ中、迷走しながらも、自分たちのロックを模索しながら作り出した曲こそ、この【放浪カモメはどこまでも】に他ならないのです。

 

そういう背景を思い浮かべながらこの曲を聴くと、胸がジーンとくるのですが、とにかくロックな曲なので、テンションがどこまでもぶち上がってきます。酔っ払った時とかに、メチャクチャになりながら、カラオケで歌ったりしていました。

 

youtu.be

 

 

 

第7位 夢追い虫 

夢追い虫

夢追い虫

  • provided courtesy of iTunes

 

第24作目『夢追い虫』、アルバム『色色衣』に収録

 

これも、スピッツ屈指のロックナンバーなのですが、この頃のスピッツはもうすでに、ベテランの域に達していて、単純なロックナンバーに留まらず、渋さというか、重厚なイメージを曲にまとわせています。まさに、いぶし銀というにふさわしい、渋い感じの曲です。

 

ただし、歌詞はあいかわらず、

 


吐きそうなくらい 落ちそうなくらい
エロに迷い込んでゆく

 

などと歌っているので、やっぱりスピッツスピッツなんだなって思い、ちょっと安心します笑。

 

youtu.be

 

 

 

第6位 魚

魚

  • provided courtesy of iTunes

 

EP『99ep』(2004年に製造中止)、アルバム『色色衣』に収録

 

99ep』という、2004年に製造中止になってしまったEPがありましたが、その作品に収録されていた曲のひとつです。『99ep』曲は、個人的に好きな曲ばっかりなのですが、その中でもダントツで、この【魚】という曲が大好きなんです。

 

確か、ラジオで初めて聴いたんだと思うんですけど、これもすごく不思議な曲ですよね。僕はこの曲の解釈として”都会の隅っこで、何かに不安を感じながらも、慰め合いながらつつましく生きる男女”というのを当てはめましたが、何かそういう、ちょっと物悲しい雰囲気を感じる曲です。

 

鍵盤の音は、クージーが演奏しているもので、それがまたさらに、この曲の雰囲気に合っていて好きです。

 

 

 

第5位 フェイクファー

フェイクファー

フェイクファー

  • provided courtesy of iTunes

 

アルバム『フェイクファー』に収録

 

この曲との出会いもとても古く、もうかれこれ20年以上も前になります。【猫になりたい】と同様、カセット3部作時代の曲ですが、その中でも、アルバム『フェイクファー』は特別に好きな作品だったと思います。そして、またそのアルバムの中でもお気に入りだったのが、表題曲の【フェイクファー】でした。

 

今では、色んな想像を膨らませて聴いていますが、当時小学生の僕には、あんまり意味が分かっていなかったと思います。ただ、曲のタイトルに”フェイク”という言葉が使われていることや、歌詞の中にも、”嘘”や”偽り”と言った言葉が使われていたので、何と言うか、得体のしれない恐怖を感じていたことを覚えています。僕にとって、【フェイクファー】は、最初はどこか”怖い曲”でした。

 

しかし、アルバムの最後に入っているこの曲の魔力に引き込まれ、この曲だけを何度も繰り返し聴いては、その余韻に浸ることが好きでした。今思えば、ちょっと変な少年でしたね笑。

 

 

 

第4位 1987→

1987→

1987→

  • provided courtesy of iTunes

 

アルバム『CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection』に収録

 

昨年(2017年)、スピッツは結成30周年を迎えました。個人的にも、その30周年イヤーという節目に、生まれて初めて、スピッツのライヴに参加させていただきました。本当に素晴らしくて、今でもその光景が焼き付いています。

 

そんな、結成30周年を高らかに歌い上げた曲が、この【1987→】という曲です。見ての通り、スピッツ結成の年である、1987年を曲のタイトルにそのまま掲げています。ここからも、すでにスピッツがこの曲に特別な想いを込めたんだなと、ファンたちは皆、ニヤリとしたでしょう。

 


らしくない自分になりたい 不思議な歌を作りたい
似たような犬が狼ぶって 鳴らし始めた歌

 


ヒーローを引き立てる役さ きっとザコキャラのまんまだろう
無慈悲な鏡叩き割って そこに見つけた道

 

曲の内容は、まさしくスピッツの生き様を書いたそのものになっており、これでもかと言わんばかりの草野節が連発されるものだから、またしてもファンのニヤニヤが止まらず、それが程なく感動に変わっていきます。

 

youtu.be

 

 

 

第3位 漣

漣

  • provided courtesy of iTunes

 

アルバム『さざなみCD』に収録

 

スピッツの魅力は、何と言っても、草野さんが書く詞にこそあると、個人的には思っています。ここスピッツ大学でも、最初から、草野さんの書く詞の魅力を伝えることに一番力を注いできました(つもりです)。

 

何だか最初はよく分からなくても、読めば読むほど、深まって広がっていく詞の世界、しかもそれは、自分がその時に立っている立場や現状などによって、違って読めるものだから、何度も読む価値があるし、その度に新しい出会いがある。

 

そういうことを気づかせてくれる場面(楽曲)は、本当にたくさんあるのですが、ここスピッツ大学を始めてみようというところまで、気持ちを高めてくれた曲こそが、この【漣】という曲でした。いわゆる、スピッツ大学の原点となった曲ですかね。

 

 

 

第2位 僕はきっと旅に出る

僕はきっと旅に出る

僕はきっと旅に出る

  • provided courtesy of iTunes

 

第38作目のシングル『さらさら / 僕はきっと旅に出る』、アルバム『小さな生き物』に収録

 

何ていうか、聴けば聴くほど、想いが深まっていくような曲です。この曲の背景には、どうしても東日本大震災がちらついてしまい、だから、大好きな曲というよりは、大切な曲という言い方の方が相応しいと思っています。

 

”僕はきっと旅に出る”という、このタイトルも、草野さんらしい、優しい背中の押し方だなと思うのです。今すぐではなくて、いつか旅に出ることを、焦ることなく優しく後押ししてくれているのだなと、本当に草野さんという人柄が出ている言葉だと思います。

 


きらめいた街の 境目にある
廃墟の中から外を眺めてた
神様じゃなく たまたまじゃなく
はばたくことを許されたら

 

ここの歌詞を聴いた時、本当に感情が溢れて、涙が出たことがありました。とても大切なことを歌っている曲だと思います。

 

youtu.be

 

 

 

第1位 けもの道

けもの道

けもの道

  • provided courtesy of iTunes

 

アルバム『三日月ロック』に収録

 

動かざること、山の如し!もう文句なし、不動の第1位です。色々とこれを越える曲を考えてみるのですが、考えれば考えるほど、やっぱりこの曲しかありえないなぁと、ここに戻ってくるんです。

 

この曲には、これまで何度も何度も力をもらってきたし、それはこれからも一生変わらないんだろうなって思います。

 

ライヴでもお馴染みの、ゴリゴリのリーダーのベースから始まる、これぞスピッツロックの真骨頂と言うべきロックな曲です。


そして、あれだけストレートな言葉を避けていた草野さんから放たれる、渾身の”諦めないで”という言葉や、最後に繰り返される、”フレーフレーフレー”というエール。


スピッツは紛れもなく、ロックバンドなんだということを力強く表明する、強くて優しいスピッツ流の応援歌です。

 

 

 

■追記…


ちなみに、(僕も含めて)スピッツ大学に訪れて下さったファンの方々の投票により作った、スピッツランキングBEST10は、以下の通りでした。

 

第1位   スピカ
第2位   夜を駆ける   
第3位   ロビンソン   
第4位   運命の人   
第5位   8823   
第6位   桃   
第7位   渚   
第8位   愛のことば   
第9位   フェイクファー 
第10位  冷たい頬 

223時限目:モニャモニャ

【モニャモニャ】

 

モニャモニャ

モニャモニャ

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の9曲目に収録されている曲です。

 

割と明るい曲が続いてきた中、この【モニャモニャ】はバラードになっていて、アルバムの明るいテンションが、一旦ここで少し落ち着きます。静かな演奏の中、草野さんのボーカルが引き立っていて、存分に楽しめる曲になっています。

 

映像作品『SPITZ JAMBOREE TOUR 2016 “醒 め な い”』のLIVE映像では、三輪さんが12弦ギターを弾いていたり、崎山さんもブラシでドラムを叩いていたり、クージーのグロッケンの音が聴こえてきたりと(ただし、キーボードで音を作っている)、落ち着いた雰囲気を演出しています。

 


■さて。

 

何はともかく、このタイトルですよね笑。”モニャモニャ”って何よ?ふざけてるのか?笑、と一旦は思うのですが、でもまぁ、スピッツはいつだってこんな調子だったし、こういう変な言葉こそ、色々想像する余地があって面白いと思うのです。

 


ということで、この”モニャモニャ”の意味ですが、ずばり、アルバム『醒めない』のジャケットに写っている、正体不明の生き物の名前なんだそうです。犬のようにもウサギのようにも見える、個人的には「ネバーエンディングストーリー」に出てくる聖獣ファルコンを思わせる、大きくて角の生えた生き物のことですね。

 

そして、この”モニャモニャ”についても設定があるようで、MUSICAのインタビューにお話が載っていたので、ちょっと紹介しておきます。

 


草野さん「…一緒に写っている人とモニャモニャとの物語みたいなのが自分のイメージとしてあったんです。だから曲によって、この人が歌ってる曲、モニャモニャが歌ってる曲っていうふうに視点を変えようって最初は思ったんです。実際そうやって聴いてもらえると、『これはモニャモニャの視点かな?』『これは私の視点かな?』って思うと思うんですけど」

 


草野さん「…このジャケットのモニャモニャとこの子は小さい時から一緒にいて、その頃はこの子に抱かれるくらい小っちゃかったモニャモニャがこんなにデカくなっても、こうやって一緒に『醒めない』でいられるっていう」

 

ということなんだそうです。

 


■このアルバムのタイトルであり、1曲目に入っている表題曲のタイトルにもなっている”醒めない”という言葉について、スピッツが込めた想いはつまり、「いつまで経っても”醒めない”ロックに対する自分たちの想いや情熱」というものでした。

 

バンドの結成30周年を間近に控えていたことや、未だ東日本大震災との関連を形を変えながら引き継ぎつつ、コンセプトとして、「死と再生」の物語をアルバム1枚で表現しようとしたことも踏まえて、自分たちの活動を振り返りつつ、”醒めない”という気持ちを新たにしたのだと、個人的に想像しています。

 

その”醒めない”という気持ちを具現化させたものが、つまり”モニャモニャ”であるということなんです。

 


草野さんのインタビューの中に、”この子に抱かれるくらい小っちゃかったモニャモニャがこんなにデカくなって…”という言葉がありますが、実際に、アルバムのジャケットの表表紙には、もうすっかりデカくなって、人の大きさを優に越えた姿のモニャモニャが写っていますが、裏表紙にはちゃんと、人の腕の中に抱かれている”子モニャモニャ”が写っています。

 

自分の腕の中に収まるほど小さかったモニャモニャが、自分の何倍もの大きさに育つまで、ずっと長いこと同じ時間を共にしてきた。苦しかったり悲しかったりした時は励ましてくれたり、逆に、一緒に居ることが嫌になったこともあった。それでも、いつだって心は繋がっていて、離れることはなかった。

 

こういうところは、スピッツのロックに対する想いに通じるものがあるのではないでしょうか。スピッツは長く長く活動を続けてきて、もう30年以上ですよ。僕自身がスピッツに出会ってからも、すでに23年くらい経っています。そういう、長く続けてきたバンドの物語を、モニャモニャが育っていく物語に投影させたのかもしれません。

 


■あと、”曲によって、この人が歌ってる曲、モニャモニャが歌ってる曲っていうふうに…”という言葉に関しては、確かに思いますよね。

 

例えば、この人(以下、”飼い主”)が歌っていると思える曲としては、【子グマ!子グマ!】なんかは、”クマ”という生き物の名前が使われているので、自然に”クマ”の物語を思い浮かべましたが、これもモニャモニャが巣立っていく場面で、飼い主が歌っているところを思い浮かべることもできます。

 

あるいは、まだ書いていませんが、最後の【こんにちは】に関しても、モニャモニャと再会を果たした飼い主が、その再会を喜んで歌っているような感じにも聴こえます。

 


逆に、モニャモニャが歌っていると思える曲に関しては、例えば、【ナサケモノ】なんかは、僕はペットが飼い主に対しての気持ちを歌っているという解釈も少ししましたが、そのペットとして、モニャモニャを当てはめてもいいかもしれません。

 

また、【グリーン】なんかも、今考えると、自由な世界へ解き放たれたモニャモニャが、その気持ちを高らかに歌っているのかもしれません。

 


■じゃあ、そこへ来て、【モニャモニャ】という歌はどういう歌かというと、これはもうダイレクトに、飼い主とモニャモニャの関係、過ごした時間などを歌っていると思われますが、歌詞を読んでみても、結構難しいんですよね、考えすぎでしょうか?



優しい眼で聞いている 僕には重要な言葉
感情は震えても 余裕なふりして隠し続けてた

 

例えば、出だしの歌詞なんですが、いきなりここの解釈に迷うんですよね。”僕”とは、モニャモニャではない方、つまりは飼い主の方を指していると思われるのですが、どういうことでしょうね?モニャモニャがまさかしゃべるとは思えませんが、ひょっとしたら第三者からの言葉かもしれません。

 

例えば、飼い主とモニャモニャが別れるきっかけになる、何か話があったのかもしれません。確か、草野さんが、アルバムのコンセプトを思いついたきっかけになった「くまの子ジャッキー」というアニメは、確かクマがサーカスに売られるとか何かで、飼い主とお別れになってしまうという展開があったと思いますが、そういうのもあるかもしれません。

 

とにかく、アルバムの中で、モニャモニャとの別れが、何らかの理由であったのだとしたら、そういう話が、僕とモニャモニャに言い渡された場面なのかもしれません。”優しい眼で聞いている”のは、事情をよく理解できないモニャモニャの方で、”余裕なふりして”感情を隠し続けているのは、”飼い主”なんですかね。

 



モニャモニャが一番の友達
なだらかな草原を走りたい
つまづくまで 燃え尽きるまで

 


やがて雨上がり 虹が出るかも 小窓覗こう
笑うことなど忘れかけてた 僕を弾ませる

 

この辺りは、別れることを知った後の描写なのでしょうか。飼い主、つまり”僕”にとって、モニャモニャは一番の友達であり、悲しいことがあっても、笑うことを思い出させてくれる存在なのだということを歌っているのだと思われます。

 


■なんか、モニャモニャモニャモニャ言い過ぎて、よく分からなくなってきそうですが、そういう曲名の陽気でふざけたような感じとは裏腹に、このアルバムのひとつの核を成している重要な曲だということですね。

アルバム講義:11th Album『スーベニア』

スーベニア

11th Album『スーベニア』
発売日:2005年1月12日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. 春の歌
→ 141時限目:春の歌 - スピッツ大学

 

02. ありふれた人生
→ 10時限目:ありふれた人生 - スピッツ大学

 

03. 甘ったれクリーチャー
→ 9時限目:甘ったれクリーチャー - スピッツ大学

 

04. 優しくなりたいな
→ 187時限目:優しくなりたいな - スピッツ大学

 

05. ナンプラー日和
→ 122時限目:ナンプラー日和 - スピッツ大学

 

06. 正夢
→ 167時限目:正夢 - スピッツ大学

 

07. ほのほ
→ 160時限目:ほのほ - スピッツ大学

 

08. ワタリ
→ 208時限目:ワタリ - スピッツ大学

 

09. 恋のはじまり
→ 50時限目:恋のはじまり - スピッツ大学

 

10. 自転車
→ 70時限目:自転車 - スピッツ大学

 

11. テイタム・オニール
→ 97時限目:テイタム・オニール - スピッツ大学

 

12. 会いに行くよ
→ 1時限目:会いに行くよ - スピッツ大学

 

13. みそか
→ 180時限目:みそか - スピッツ大学

 


■通称「マイアミ・ショック」から、すっかり時間も経過して、ロックバンドとして生まれ変わったスピッツが、個人的に”板につきはじめた”、”ちょうどよくなってきた”などと感じたのが、今回のアルバム『スーベニア』辺りだったかなと記憶しています。

 

荒々しさで半ば押し切った部分もあった『ハヤブサ』から始まり、再度音楽をする意味を考えさせられた(であろう)『三日月ロック』で荒々しかった部分を少しずつ研磨していき、それらを経ての『スーベニア』は、色んな書籍やインタビューで語られていることによると、メロディーや言葉を、よりシンプルに伝えるように作られた作品のようです。

 


■アルバム『三日月ロック』では、プロデューサーとして新たに、亀田誠治さんを起用しましたが、引き続きアルバム『スーベニア』でも、亀田さんがプロデュースを務めました。

 

それに加えて、今回の作品では、レコーディング・エンジニアを、高山徹さんという方が務めました。高山さんが、初めてスピッツの作品に携わったのは、シングル曲の【夢追い虫】だったそうですが、その時の印象が強烈に残っていたようで、それから兼ねてより、スピッツメンバーは、高山さんと一緒に作品を作ることを望んでいたようです。

 

高山徹さんと言えば…というより、スピッツをプロデュースするまで知らなかったのですが、調べてみると、この人もまた、僕でも知っているような有名なアーティストをたくさん手掛けていることが分かりました。書籍の中で、スピッツメンバーが、高山さんを”日本一の”エンジニアと評していましたが、そう言われるのもうなづけます。

 

高山徹さん(とスピッツの関係について)の話は、下記の動画でたっぷり見ることが出来ます。時期としては、アルバム『とげまる』辺りですが、アルバム『スーベニア』についても少し話をしています。

 

youtu.be

 

中でも、草野さんのボーカルについての、倍音構成云々の話は、専門的なお話でしたが、とても面白かったです。

 

これを聞くと、草野さんと対極に居るボーカルの一人として、どうやらBUMP OF CHICKEN藤原基央さんが挙げられるかなと、個人的には思いました。草野さんは、レストランなどの雑踏で抜けにくい声の持ち主で、藤原さんは逆に、メンバーの誰が呼んでも店員が来ない中、一声で店員を呼ぶことができたというエピソードを聞いたことがあります。

 


ということで、プロデューサー亀田誠治さん×レコ―デングエンジニア高山徹さんという、いわゆる”黄金コンビ”が、アルバム『スーベニア』で誕生しました。ちなみに、この2人のコンビは、現時点(2018年)での最新アルバム『醒めない』まで、ずっと引き継がれています。

 


■では、アルバム『スーベニア』がどういう作品だったか、考えてみます。エキサイト・ミュージックのサイトに、アルバム『スーベニア』についてのインタビューがあって、それも参考にさせていただきました。色んなことが書いてあって面白いです。

Excite エキサイト : ミュージック (音楽) インタビュー・スピッツ

 

まず、先述したとおり『スーベニア』は、メロディーや言葉をよりシンプルに伝えるように作られた作品だったようです。何でも、ツアー(おそらくゴースカ?)で弾き語りのコーナーをしたことをきっかけに、ストレートなメロディーや言葉を重視したようです。

 

そう言われると、歌詞が分かりやすいかなと思ったりします。あと、全体的に前向きな歌詞が多いです。暗いなって感じる曲は無いですよね。

 

特に、恋愛系の曲は、ストレートで前向きに感じます。と言って、何がありますかね…【ありふれた人生】、【優しくなりたいな】、【正夢】、【恋のはじまり】辺りでしょうか。もうタイトルから、イメージがしやすいですよね。

 


■その一方で、このアルバムを形容する言葉として、”旅”を意識したアルバムということも、先述のインタビューの中で語られています。

 


(タイトルの”スーベニア”という言葉の意味について)
草野さん:これは“お土産”っていう意味なんですけど、13曲並べてツルッと聴いた時に“旅”を思わせるような言葉とかがあったりしたのと、沖縄風やジャマイカ風の曲があったところからつけました。いろんなところを旅してるようなアレンジあり、ということで、旅を思わせるようないい言葉がないかなって思いまして。

 

沖縄風の曲と言えば、【ナンプラー日和】でしょうか。なんつータイトルなんだろうって思いますけどね笑。 三線の音や琉球音階を使ったりして、沖縄風になっているんですが、それでもスピッツになるのはさすがです。

 

ジャマイカ風と言えば、【自転車】ですかね。民族楽器のようなパーカッションの音は、崎山さんが実際に叩いている音だそうです。

 

他にも、【会いに行くよ】がハワイアン風(?)でゆるい感じだったり、【甘ったれクリーチャー】が四つ打ちのリズムでディスコ調だったりします。1曲1曲の雰囲気が、本当にコロコロ変わるので、草野さんの説明にあったように、アルバム一枚で色んな場所を旅しているような気分になります。

 

なので、シンプルに…ストレートに…とは言うものの、結局は色々と凝ったことをしているんですよね。

 


■アルバム『三日月ロック』と同様に、アルバム『スーベニア』にも表題曲がありません。つまり、”スーベニア”という曲が存在しないのです。

 

そして、これもアルバム『三日月ロック』の時に語りましたが、表題曲がないということは、気分によってどの曲も自分なりに表題曲(のよう)に添えることができて、色んな気分でアルバムを聴くことができると思います。

 

さらに、『スーベニア』には、シングル曲が1曲しかないんですよね。【春の歌】は、後にシングルカットされたものなので、アルバム発売時ではシングル曲ではなく、具体的にはシングル曲は【正夢】だけでした。

 

だから、初めて聴いた時は、知らない曲(新曲)がこれでもかと続いていくので、たくさんの新曲が聴ける、お得感が満載のアルバムという印象でした。

 


■ここまででも(アルバム紹介の記事にて)、スピッツのオリジナルアルバムもたくさん紹介してきたんですが、その時その時の気分によって変わりつつも、個人的には、このアルバム『スーベニア』が一番好きなアルバムだったりします。

 

個人的に、アルバムで印象に残っているのは、【ほのほ】、【ワタリ】、【テイタム・オニール】、【みそか】の、超ド級のロックナンバー達ですかね。これらの迫力は、どれを取ってもすさまじいものがあります。紛れもなく、スピッツがロックバンドであることを示している曲たちです。

 

さらに、この中でも特に好きなのが、【ほのほ】と【ワタリ】の、ドラマチックロックナンバーコンビ(って何だろう?笑)ですね。両曲とも、これまでの荒々しかったロックに留まらず、長い長い物語や冒険の1ページを切り取ったような、壮大でドラマチックな世界観を感じます。

 

この時点で、もう20年近くやってきたスピッツですから、こういうところには年季を感じます。このアルバムには入っていませんが、【夢追い虫】とかもそうですが、重厚さや渋さを感じるようになってきました。

 

ちなみに【ほのほ】については、元々アルバムのタイトルは「炎」とする予定だったそうなので、それとも関連があるのでしょうか。

 


それから、【会いに行くよ】なんかも名曲ですよね。これは、打って変わって、ゆったりとしたハワイアン調のように感じる曲ですが、何でも最初は、弾き語りで演奏されたそうです。色んなストーリーが想像できる曲なんですが、個人的には、悲しいかな、この歌には”墓参り”を当てはめましたが、果たして。大好きな曲です。

 

もちろん、シングル曲の【春の歌】も【正夢】も名曲ですが、やっぱりロックな曲のインパクトが残っていて、全体的にもロックなアルバムという印象が強いです。

 

youtu.be

 

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アルバム講義:Special Album『色色衣』

色色衣

Special Album『色色衣』
発売日:2004年3月17日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. スターゲイザー
→ 76時限目:スターゲイザー - スピッツ大学

 

02. ハイファイ・ローファイ(NEW MIX)
→ 129時限目:ハイファイ・ローファイ - スピッツ大学

 

03. 稲穂(NEW MIX)
→ 14時限目:稲穂 - スピッツ大学

 

04. 魚
→ 55時限目:魚 - スピッツ大学

 

05. ムーンライト
→ 184時限目:ムーンライト - スピッツ大学

 

06. メモリー
→ 185時限目:メモリーズ - スピッツ大学

 

07. 青春生き残りゲーム(NEW MIX)
→ 80時限目:青春生き残りゲーム - スピッツ大学

 

08. SUGINAMI MELODY
→ 74時限目:SUGINAMI MELODY - スピッツ大学

 

09. 船乗り
→ 152時限目:船乗り - スピッツ大学

 

10. 春夏ロケット
→ 140時限目:春夏ロケット - スピッツ大学

 

11. 孫悟空
→ 83時限目:孫悟空 - スピッツ大学

 

12. 大宮サンセット
→ 30時限目:大宮サンセット - スピッツ大学

 

13. 夢追い虫
→ 193時限目:夢追い虫 - スピッツ大学

 

14.僕はジェット(Previously Unreleased Track)
→ 165時限目:僕はジェット - スピッツ大学

 


■アルバム『色色衣』(”いろいろごろも”と読む)は、時期としては、10枚目のオリジナルアルバム『三日月ロック』と、11枚目のオリジナルアルバム『スーベニア』の、その間で発表されたアルバムです。

 

1999年に、スピッツは『花鳥風月』というアルバムを発表しましたが、『花鳥風月』は”スペシャルアルバム”と呼ばれ、カップリング曲や未発表曲などを中心に収録された、いわゆる特別なアルバムとして、オリジナルアルバムとは一線を画した作品になりました。

 

そして、今回の『色色衣』についても、この『花鳥風月』と同様で、カップリング曲と未発表曲が主に収録されており、第二作目のスペシャルアルバムになっています。

 


ちなみに、僕も持っている、このアルバムの初回限定盤には、”スピッツ色色衣リリース記念特別座談会”なる冊子が同封されています。(ちなみに、『花鳥風月』にも、「特別対談」とよばれる解説書が同封されたそうですが、『花鳥風月』は僕は持っていないので…)

 

内容は、スピッツメンバーと、スピッツのデビューからのマネージャーである坂口優治さん、スピッツのディレクターの竹内修さんが、収録曲やスピッツの歴史について語っています。かなりボリューミーで、面白い内容になっています。ここスピッツ大学で記事を書くのに、この”座談会”の冊子からたくさん情報を引用させていただきました。

 


■ということで、『色色衣』について紹介したいのですが、まずは、『99ep』という作品の話をしましょう。

 

一応は、『99ep』は”アルバム”という位置づけの作品なので、別記事で単独で紹介するべきかもしれませんが、収録曲が『色色衣』に全て含まれているので、ここで紹介させていただきます。

 


99ep』とは、1999年1月1日に発表になった、スピッツのEPです。EPというのは、いわゆるミニアルバムが5、6曲入りで、EPがそれよりも短い作品みたいな感じですかね。

 

99ep』の収録曲は、曲順に、【ハイファイ・ローファイ】【魚】【青春生き残りゲーム】の3曲です。時期としては、アルバム『フェイクファー』のツアーのすぐ後に、リリースを前提とせずに、ライヴ後の勢いそのまま、レコーディングされた3曲だそうです。3曲とも、セルフプロデュース曲(特定のプロデューサーは置かず、自分たちだけで進めていった作品)になっています。

 

ちなみに、1998年の『フェイクファー』のツアーより、今やスピッツには欠かせないメンバー、キーボードのクージーことクジヒロコさんが加わります。そして、そこからそのまま、このEPのレコーディングに参加しています。クージーが、スピッツ作品のレコーディングに参加するのは、ここが初めてのことのようです。

 


竹内さん:…この時は、特にリリースの予定を決めずに、新曲が出来たからクジさんを含めたツアー・メンバーで曲を固めてみよう、ということだったと記憶してるけど。
田村さん:『フェイクファー』のツアーが終わって、この勢いのままレコーディングに突入したら、いいのが録れるかもっていう思いがあって、この3曲にそれを閉じ込めたかった。ライヴ感とか。
草野さん:あと、クージーと1ツアー回ったことで、(彼女の)プロデューサー的な側面というか、いろいろ相談できるってことが分かって、5人で作ったんだな。

 

と、”座談会”の中でこのように語っています。

 


■しかしながら、草野さんは『99ep』を「中途半端な作品」と語っており、おそらくそういう理由から、後にスペシャルアルバム『色色衣』に全曲を録して、『99ep』は製造中止になりました。

 

ということで、『99ep』は、現在はわりとレア作品になっています。何回か中古で売っているのを見たことがありますが…僕は、現物を持っていないですね。レンタルして録音したものはMDとして残っているのですが。

 


ただ、『99ep』曲は、どれも名曲ですよね。3曲とも、僕は本当に大好きなんですが、特に【魚】が好きです。最初は、確かラジオで聴いたと記憶しているんですけど、その時にすでに、きれいな曲だなって思いました。確かに、そんなに目立ちはしないんですけどね、【魚】に関しては、ファンの中でもかなり人気のある曲だというイメージです。ここスピッツ大学のランキングの中でも、第17位にランクインしました。

 

先述したように、クージーのキーボードが、特に【魚】では良い雰囲気・世界観を作り出しています。

 

僕は、【魚】の解釈として、”魚”=”都会を泳ぐように、器用に生きる人たち”を表しているとして、この歌からは、「そんな魚になりきれない(おそらく)男女が、都会の隅っこでつつましく生きている様子」を読み取りました。そんな”都会”という、どこか冷たくて無機質な響き、そして、そこで生きている男女の抱える不安な気持ちなどを、ちょっと物寂しげなクージーの鍵盤の音がうまく表現していると思います。素晴らしい1曲です。

 


■上記の『99ep』曲以外の収録曲について、紹介していきます。

 

まず、シングル曲では、22th『メモリーズ』、24th『夢追い虫』、28th『スターゲイザー』が収録されています。

 

シングルの発売時期がバラバラになっている理由は、まぁ【スターゲイザー】は新曲ですが、【メモリーズ】と【夢追い虫】は、それぞれ直近のアルバムの『ハヤブサ』と『三日月ロック』には合わないと見送られた曲だったため、『色色衣』に初収録されました。

 


カップリング曲で収録されている曲は以下の通り。

 

【ムーンライト】(c/w 21stシングル『ホタル』)
【春夏ロケット】(c/w 21thシングル『ホタル』)
【船乗り】(c/w 23rdシングル『遥か』)
【大宮サンセット】(c/w 24thシングル『夢追い虫』)
【稲穂】(c/w 25thシングル『さわって・変わって』)
【SUGINAMI MELODY】(c/w 26thシングル『ハネモノ』)
孫悟空】(c/w 27thシングル『水色の街』)

 

何ていうか、改めてこう見ると、A面が静かな曲ならカップリングはロック寄り、逆に、A面がロックな曲ならカップリングは静かな曲になりがちなんですかね。前者だと「ホタル / 春夏ロケット(ムーンライト)」「遥か / 船乗り」「水色の街 / 孫悟空」、後者だと「夢追い虫 / 大宮サンセット」「ハネモノ / SUGINAMI MELODY」辺りですかね。

 


それから、最後に収録されている【僕はジェット】という曲は、1989年に発表されたカセットテープ『ハッピー・デイ』に収録されている(おそらく曲が誕生したのは、もっと前)とても歴史の古い曲です。

 

今回は、未発表曲はこの1曲のみですので、アルバム『花鳥風月』より、カップリング集の様相が強いです。

 


■『色色衣』に収録されている曲は、2000年~2004年にレコーディング・発表された曲たちで(中には、それ以前にもうすでにレコーディングされた曲もありますが)、実に4年に渡っています。

 

しかも、その頃のスピッツといえば、自分たちに合うエンジニアを探したり、その結果アメリカに渡り、レコーディングやミックスを試して自分たちの音を探し、その最中にマイアミショックが起こってしまいましたが、それもきっかけとして、ロックバンドとして新たに目覚めたりと、スピッツが変わっていった時期でした。

 

そういう、色んな意味で濃厚な時期にあったスピッツの、それも一番おいしいところが詰まっている作品が、実はこの『色色衣』だったりするのです。”座談会”の中でも、

 


田村さん:…今回は1曲1曲スピッツの中で実験したり冒険したりした色が強い。全曲、アルバムを作り終えて「次に何をしようか」というタイミングの曲たち。一番だしの濃いところが詰まってる。

 

と、このように田村さんは語っています。どこかのインタビューで、スピッツメンバーが、「カップリングは色々と試すことができる場所」という風に語っていましたが、まさに『色色衣』は、普段のシングル曲やオリジナルアルバムなどでは聴くことができない、スピッツの”面白い曲”が楽しめるアルバムになっています。

 


■ちなみに、アルバムタイトルの”色色衣”という言葉についてですが、「つぎはぎの服」という意味であるそうです。

 

「色衣(しきえ)」という、これ単独だと、高位のお坊さんが着る衣装の意味になるそうですが、かっこいい意味だけじゃないほうがいいということで、「色色」という言葉が、様々な、などの意味があるので、まぁそれらを組み合わせるという意味でも、「色色衣(いろいろごろも)」と名付けられたようです。

 

”座談会”の中で草野さんは、”ごった煮”という表現をなさっていましたが、まさに「色色」という言葉が、そういう”ごった煮”のごとく、ごちゃごちゃではあるけれど、しっかりと煮込んだスピッツの一番おいしいところが詰まっている、というアルバムの意味を表しているようですね。

 

youtu.be

 

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222時限目:ハチの針

【ハチの針】

 

ハチの針

ハチの針

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の8曲目に収録されている曲です。

 

アルバムの中だったら、個人的には【ハチの針】と【コメット】が一番好きです。【コメット】は、発売前から割と聴けたので(ドラマの主題歌だったので)知っていたんですけど、【ハチの針】はアルバムが初聴で、最初に一通り聴いて、すぐに好きになった曲でした。

 

尖っていて、エッジの効いたロックな曲ではあるんですが、タイトルや歌詞などからは、かわいらしいイメージを受け取ります。ラップ調のCメロも特徴的です。

 


■この曲のLIVE映像は、映像作品『SPITZ JAMBOREE TOUR 2016 “醒 め な い”』で見ることができるのですが、”ブートレグ映像”という変わった形態のLIVE映像が収録されています。

 

ブートレグ / bootleg”とは、本来は”海賊版”という意味ですが、いわゆる、著作権などを無視して、製造・流通された作品という、まぁ良くないものですよね。しかし、このLIVE映像に限っては、”それ風”に映像と音質を加工してあります。何ていうか、LIVEの様子が盗撮されたような粗悪な画質・音質の映像が、わざと収録されているのです。面白いんですが…うーん、普通のも見たかった!

 

ちなみに、映像作品『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"』に付属のCDには、【ハチの針】のライヴ”音源”が収録されています。どうか、普通のライヴ映像も見せていただきたいです!僕が参加した、広島(1日目)の”3050LIVE”では、残念ながら【ハチの針】はしなかったんですよね。

 


■さて、この曲の解釈について、書いてみます。

 

この曲は…個人的には、最初に聴いた時から、思っていた解釈がありました。ずばり言うとこの歌は、”歓楽街に迷い込み、夜のお店に誘われて、初入店!”という解釈です!つまり、「もにゃもにゃ、大人になる!の巻」ですね笑。

 


まず、出だしのAメロから。

 


耳塞ぐ手を離して聞いた 魔女の予言
怖がるほどの地獄ではなく
分かれ道 松明もってより暗い方へ
子供の顔で鈴の音を待つ

 

どうでしょうか、”魔女”とか”地獄”とか”松明”とか、何となくRPGの冒険のようなものを思わせますが、何か現実のものを比喩していると考えるとすると…

 

”魔女”といえば、そのまま魔性の女ということで、夜の店で働く女性(あるいは勧誘係)、「何か怖いなぁ…”地獄”にでも連れてかれるんじゃないか?(多分、初めてなのでビビっている?)」とか思いながらも魔女にしたがって、ちょっと暗い路地、そして店内へ足を踏み込んでいく…という流れでしょうか。

 

”子供の顔で鈴の音を待つ”も、そういう店に来たのが初めてなのか、それとも緊張しているのか、そういうところだと思います。ドキドキしながら、自分が呼ばれるのを待ってるんでしょうね。

 


2番のAメロも、歌詞が変わってますが、おんなじようなことを思います。

 


賢そうな物腰で 話しかける亡霊
バカにもわかるように導かれる
でもすでに気づいちゃったんだ 甘い声の向こうで
ウラハラな汚れてる LOL

 

”話かける亡霊”は、歓楽街で誘ってくる兄ちゃん(姉ちゃん)で、それに誘われて導かれていくって、先程と同じ感じですね。

 

最後の”LOL”(laughing out loudの略)は、海外の人が笑い声を表す時に使う、ネット用語です。日本では、(笑)とかwwwとかを使いますが、それの英語圏バージョンですかね。”甘い声の向こう~汚れてるLOL”ということで、”甘い声”は女性の声で、”汚れてるLOL”は男性の声でしょうか。それか、”甘い声”でお金を搾取して、儲けて笑いが止まらない的な、そういう店側の人の笑い声かもしれません。

 


■そして、サビは、そういう店のサービス中というところでしょうか。

 


凄いよ 泳げるの?ハニー 滅びてなかったゲンゴロウ
バラバラがまとまる 反抗の風

 

二行目は不明ですが、一行目…それはもう、すっごいプレイだったんでしょうか?笑 ”ゲンゴロウ”って、あの丸っこい水生の昆虫ですよね(画像を見るのもちょっと苦手なんですが、あれにちょっと似ていて)。水の中を泳ぐ姿を、そのまま女性に当てはめてみると、何やらイヤーンな感じが…。 

 


あとは、”ハチの針”という言葉が出てくる部分として、

 


そんなのもうバレバレ キザに 狂った今を生きていこう
ハチの針だけ隠し持って イキがれ

 

こういう感じになっています。とすると、”ハチの針”は、男性器だったり、そうでなくても、男性が心に抱いている悶々とした気持ち・性欲などを比喩した言葉だと考えられるかもしれません。最後が、”イキ”がれってなってるところとかも、何だか、い・み・し・ん。

 


■という感じで、個人的には、スピッツお得意の大人な歌という解釈でしたね。

 

これと【ガラクタ】あたりが(あと【SJ】も解釈によっては)、アルバムの中では”イヤーンソング”担当という感じでしょうか、笑

 

でも、僕が変な解釈をしてるだけで、素直に聴いてみてください。何度も言うように、本当にかっこいい曲なんですよ!

 

雑誌MUSICAのインタビュー記事を少し紹介させていただくと、このように語っておられました。

 


インタビュアー「一番最後に録ったものって、ロックバンド然としたものが多いですよね。”ハチの針”は、ブリッドポップとかKula Shakerとか…」
草野さん「うん、これはKula Shakerですよ(笑)。こういう曲、今までもなくはないんですけど、確かに3曲ともロックな感じですね」

(ちなみに、ここでいう3曲は、アルバムの中で最後に録られた、【醒めない】と【ナサケモノ】と【ハチの針】を指しています。)

 

Kula Shakerクーラ・シェイカー)は、イギリスのロックバンドなんですが、個人的にはクーラ・シェイカーは聴いてなくて、同じボーカリスト(超イケメン!)のThe Jeevasザ・ジーヴァズ)の方をよく聴いていました。少ししか作品は持っていませんでしたが、【Once Upon a Time in America】という曲は、狂ったように好きでした。

221時限目:SJ

【SJ】

 

SJ

SJ

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の7曲目に収録されている曲です。

 

明るい曲が多く収録されているアルバムの中でも、暗いわけではないですが、どっしりとした重い曲です。

 


■何よりもまず気になるのが、この謎のタイトル”SJ”の意味ですよね。

 

ネットなどで情報を探してみたところ、ある時ラジオで草野さんが、この”SJ”という言葉について、「仮タイトルだったんですけど、意味は教えたくない、がっかりされると思うんで…」という風に語ったそうです。

 

その言葉通り、”SJ”という言葉の意味を、草野さんが語ったことは、どうやらなさそうです、笑。なので、探しても、ビタッとこれだという意味を見つけることはできませんでした。

 

ということで、想像してみるしかなさそうですが、とりあえず最後に置いておくとして、ヒントを探すべく、歌詞を読んでいきたいと思います。

 


■まず、出だしの歌詞(サビ)がこんな感じです。

 


夢のかけらは もう拾わない 君と見よう ザラついた未来
正しいと信じた 歩みが全て 罪なこと 汚れたことだとしても

 

”夢のかけらは もう拾わない”、その代わりに、”君と見よう ザラついた未来”という表現。ここでは、”夢のかけら”と”ザラついた未来”が対比されています。つまり、”夢のかけら”を諦めることと引き換えに、”ザラついた未来”を得るという流れになっています。

 


”夢のかけら”からは、明るくて前向きなイメージを受け取ります。”夢”という言葉は、本来前向きなものだと思うので、前向きに、何か目標を持って生きているという生活が思い浮かびます。

 

そういう、ある種の健全な生活を捨て去って、その代わりに、”ザラついた未来”へと進もうとしているということになると思います。

 


■ところで、草野さんが書く詞には、時々”ザラつく”とか”ザラザラ”とかっていう表現が出てきます。思いつく限り、紹介してみます…というより、あんまり無かったですかね!?

 

(プチクイズ!何の歌詞か分かるでしょうか?)

 


ハニー 君をジャマしたい
ごめんなさい 遅かれ早かれ
すべて解るはず 正直な ざらざらの世界へ

 


心をひとつにし ザラつく星に触れ
果ての果てを目ざせ

 


隠し事のすべてに声を与えたら
ざらついた優しさに気づくはずだよ

 

何か歌詞の中に、この類の言葉はいつも浮いていて、印象に残ってるんです。どういう意味で使ってるんでしょうか。

 


個人的には、2つの意味を受けとりました。

 

①まっさらな、素直な、という意味
これは、一つ目、三つ目の歌詞に、それぞれ当てはまりそうです。一つ目には”正直な”、三つ目には”隠し事~声を与えたら”という形容がくっついていて、そこからの表現になっているところから推測しました。

 

②予想できない、ちょっと道を外れたという意味
これは、二つ目の歌詞、そして、今回の【SJ】にも当てはまるのではないかと思います。つまり、今までの生活を捨てる→道を外れて予想もつかない生活へ、という流れになりますかね。 

 

(おまけとして、ひょっとしたら、③Gスポット、つまり女性器の比喩もあるか?Gスポットは、ザラザラと表現されることがあって…)

 


■他にも、

 


当たり前に近く さわれた法則も
迷わずに帰るための 小さな道標も
今宵の暖炉にくべて

 

というCメロのフレーズからも、同じような意味を受けとりました。”小さな道標も 今宵の暖炉にくべて”=退路を断ち、今までの生活を離れて、そこにはもう帰らない(帰れない)ことに対する、決意みたいなものを受け取ります。良い意味ではないかもしれないけれど、ここの歌詞は独特でかっこよくて好きです。

 


それから、

 


蔑みの表通りで 笑顔のコツを覚えたよ
フワフワに癒される リアルな妄想に囚われて

 

この辺りは、性的な意味を感じます。”フワフワに癒される リアルな妄想”というところで、”フワフワ”が、何となく女性の体を連想させますので、そういう性的でイヤーンな妄想に囚われている、と考えられます。

 


■ということで、歌詞の解釈をまとめてみると、おそらく主人公は男だと思われますが、男は今までの自分の生活を捨て去って、予想だに出来ない、今までとは違う未来へと向かおうとしている、ということだと思います。

 

そして、そういう未来には、”君”がセットになっており、他に、”罪なこと”や”汚れたこと”などという表現もくっついているので、必然的に、”君との逃避行(かけおち)”的な物語を想像しました。

 

この男には、今まで守ってきた生活があったのでしょう。人並みに夢を持ち、それを目標に生きている、ひょっとしたら結婚をしており、家庭を持っていたのかもしれません。だとすると、”君”との逃避行とは、不倫の果てに、家庭をも捨て去って離れていく結果だと考えられるかもしれません。

 


もしくは、最初から全部”男の妄想”だったとしたら…とも考えてみました。先程紹介した歌詞の中にも、”リアルな妄想に囚われて”という表現もありましたが、この歌の物語が、全部一人で完結していたら、と考えてみます。

 

そうなると、この歌詞に出てくる君は全て妄想であり、つまりはもう男の側には居ないと…ただ恋人関係を解消して別れただけなのか、あるいは、死別してしまったのか、など。それでも、いつまでも男は君の妄想に囚われていて、その妄想とともに生きる(あるいは死ぬ)決意をしたと、そういうことになりますかね。

 


まぁ、いずれにしても、あんまり良いイメージには解釈できそうにありませんね。何となく、前者の解釈の方が、個人的にはしっくりきました。

 


■さて。じゃあ、”SJ”という言葉の意味ですよ。

 

先述の通り、草野さんが語った経緯がどこにもないので、これは聴き手があれこれ想像するしかなさそうです。

 

僕が思ったのは、英単語を2つ並べて、”SJ”と略しているのではないか、ということでした。つまり、Sで始まる英単語と、Jで始まる英単語が続いている、2文節の英語ということになります。それで、ひょっとしたら、歌詞のどこかに英語に訳すとそういう部分があるのではないか、と思ったんです。しかし、見つけることはできませんでした…。

 

やはり、この歌に合うように、歌詞の言葉に囚われず、”SJ”を見つけるしかなさそうです。

 


ということで、僕も色々と考えてみました。

 

この歌の主題が何だったのかというと、個人的には、”男女の駆け落ち”、”不倫の末の逃避行”などを当てはめました。ということで、例えば”J”には、旅行、旅を意味する”Journey”という単語を当てはめてみました。

 

あとは、”S”ですが、どうしても”Sentimental”をくっつけて、”Sentimental Journey”(センチメンタルジャーニー)としたくなります、笑。ちなみに、意味は、傷心旅行、つまり、失恋によって負った心の傷みを癒す旅、という感じですかね。先程紹介した後者の解釈には、当てはまりそうですね。

 

他には、逃避行の果てに”死”が待っているのだとしたら、”Suicide Journey”で自殺(心中)に至る旅、エロの方に解釈を持っていこうとすると、”Sexual Journy”とか…。

 

ちなみに、”SJ”で、処女という意味もあるらしいですね。草野さんが、「がっかりされる…」と発言したのには、これも合いそうな気がしますがどうでしょうか。

 

…多分、全部違うんでしょうね、笑。まぁ、妄想するのが楽しいですから、あなたなりの”SJ”を当てはめて聴いてみてください。

アルバム講義:10th Album『三日月ロック』

三日月ロック

10th Album『三日月ロック』
発売日:2002年9月11日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. 夜を駆ける
→ 195時限目:夜を駆ける - スピッツ大学

 

02. 水色の街
→ 179時限目:水色の街 - スピッツ大学

 

03. さわって・変わって
→ 60時限目:さわって・変わって - スピッツ大学

 

04. ミカンズのテーマ
→ 178時限目:ミカンズのテーマ - スピッツ大学

 

05. ババロア
→ 143時限目:ババロア - スピッツ大学

 

06. ローテク・ロマンティカ
→ 204時限目:ローテク・ロマンティカ - スピッツ大学

 

07. ハネモノ
→ 136時限目:ハネモノ - スピッツ大学

 

08. 海を見に行こう
→ 22時限目:海を見に行こう - スピッツ大学

 

09. エスカルゴ
→ 25時限目:エスカルゴ - スピッツ大学

 

10. 遥か(album mix)
→ 139時限目:遥か - スピッツ大学

 

11. ガーベラ
→ 37時限目:ガーベラ - スピッツ大学

 

12. 旅の途中
→ 86時限目:旅の途中 - スピッツ大学

 

13. けもの道
→ 47時限目:けもの道 - スピッツ大学

 


■ここでも何度も語ってきましたが、”マイアミ・ショック”により、スピッツは一度”死”を迎え、そこからもう一度、純粋な”ロックバンド”として”再生”を果たしました。

 

個人的な分け方になりますが、マイアミ・ショックを境にして、スピッツの活動時期は、第三期に入ったと考えています。個人的に、第二期を「スピッツ黄金期」という風に紹介しましたが、第三期は「スピッツの死と再生」という感じでしょうか。

 

そして、今回紹介するアルバムは、記念すべき10枚目のオリジナルアルバム『三日月ロック』です。第三期を迎えてからだと、まだ間もない、第二作目の作品ということになります。

 


■前作の『ハヤブサ』のプロデューサーは、石田ショーキチさんという方が務めました。同世代のプロデューサーにお願いしたい、ということで、スピッツメンバーと年齢が近い石田さんに白羽の矢が立ったんだそうです。

 

石田さんとメンバーの年齢が近かったことや、共通している音楽がヘビィロックやメタルだということも、『ハヤブサ』がロックでパワフルな作品に仕上がったということに関係したのかもしれません。

 


そして、続く今作の『三日月ロック』のプロデューサーには、新しい人とやってみたいということで、亀田誠治さんが起用されます。

 

亀田誠治さんと言えば、もう言わずもがなですが、日本を代表する音楽プロデューサーの方ですよね。少し調べただけでも、本当にたくさんの錚々たるアーティストのプロデュースを手掛けてきたことが分かります。スピッツはもちろん、自分が好きなアーティストも、あれもこれも…という風に、たくさん見つけることができます。

 

元々、亀田さんはベーシストの方なんですよね。ライヴサポートのメンバーとしても活動されているようですし(今はそんなにないのかな?)、椎名林檎が中心となって結成された東京事変というバンドでは、がっつりとレギュラーメンバーとして活動されていました。Bank Bandとかにも参加しているんですね。

 

ちなみに、亀田さん主催の「亀の恩返し」というライヴイベントがあるのですが、それにはスピッツも参加していました。それが、たまたまWOWOWでやっていたので、録画したのを今でも時々見ています。

 


■亀田さんが、一番最初に手がけたスピッツ作品が、シングル『さわって・変わって』の、【さわって・かわって】とカップリングの【ガーベラ】の2曲だったようです。まぁ、その流れから、アルバムのプロデュースということになったのだと思います。

 

亀田さんとのお話も、書籍「旅の途中」にたくさん載っていますので、詳しくはそちらを参照してみてください。

 

ちょっと紹介してみると、亀田さんは草野さんに対して、一つだけ要望をしたんだそうです。その要望とは、「リハーサルまでに歌詞を出来るだけ書き切ってくる」ということでした。これまで、歌入れの時まで歌詞が出来ていないということもしばしばあったようなのですが、それからは歌詞を書き切ってくるようになったようです。

 


■さて。

 

アルバム『三日月ロック』の発売日は、2002年9月11日となっていますが、これは奇しくも、「アメリ同時多発テロ」のちょうど一年後になります。意図的にそうなったわけではないようですが、草野さん自身、アルバムは911テロの影響を受けたと語っているところから、何か因縁のようなものを感じます。

 

この辺りのことも、書籍「旅の途中」の方に、たくさん書かれています。

 


911テロが起こった翌日、スピッツは『ハヤブサ』のツアーでライヴをしたんだそうです。そこで、草野さんの心の中に、「自分が歌う意味」に対しての疑問が渦巻いていたようです。

 


 いままでずっと、自分にとってそうであったように、誰にとっても音楽は必要不可欠なものなんだろうと漠然と思ってきた。
 でも、同時多発テロや戦争のような圧倒的な暴力の前では、音楽はあまりにも無力だ。しょせん、音楽は余剰なもの、贅沢品ではないのか。自分にとっても、ほかの誰かにとっても、生きていく上で本当に必要なものではないのではないか?

 

書籍の中で、こんな風に草野さんは語っています。アルバム『ハチミツ』の時も、阪神淡路大震災地下鉄サリン事件などに影響を受けたようですし、これはまた後に語ることになりますが、東日本大震災の時もそうですよね。

 

特に、草野さんという人は、感受性の強い音楽家なのだと思います。こういう大きな出来事に際する度に、どこか過剰に反応してしまって、苦しんだり悩んだりしてきたのでしょう。

 


■そんな中、草野さんがもう一度音楽への気持ちを取り戻したのが、シングル曲の【ハネモノ】だったようです。【ハネモノ】は、カルピスのCMソングとして依頼がきたものでした。CMで流れていたのを、微かにですが覚えています。

 


 ”9・11”の衝撃がようやく自分の中で消化されようとしていた。
 音楽は贅沢な楽しみかもしれない。それでも、心の中にある不安をなくすことはできなくても、和らげることができるんじゃないだろうか。
 俺は、俺の気持ちだけじゃなくて、世の中にある何かザワザワした不安を和らげるような、少しでも鎮めることができるような曲を作っていきたい。

 

書籍の中でこんな風に語っています。こういう流れから、アルバム『三日月ロック』へと進んでいくことになるわけです。

 

こういう話を聞けば、シングル『ハネモノ』やアルバム『三日月ロック』に対する想いが、がらりと変わってきますよね。草野さんが、人々の心の不安を少しでも和らげようとする気持ちが込められていると…何か感慨深いですよね。

 


■これも何度も語っていることですが、(個人的分類による)第三期に入って、スピッツの音楽は、ロック色の強いものへと変わっていきました。それは僕自身、最初は違和感を感じるほどでしたが、すぐに大好きになりました。

 

アルバム『ハヤブサ』とアルバム『三日月ロック』については、どちらもロックな作品であるとは思うのですが、雰囲気としては全然違うことを感じます。

 


もうすでに語ったことですが、『ハヤブサ』は、どちらかというと、スピッツのパーソナルなアルバムだという印象を持っています。マイアミ・ショックなどにより溜め込んだ、鬱憤ややり切れない思いを晴らすような、まさに”魂の叫び”という形容が近いのではないかと思います。

 

一方で、『三日月ロック』の印象は、先程紹介した草野さんの言葉を踏まえてっていう部分もありますが、激しいロックの中に、”優しさ”のようなものを感じます。

 

もちろん『ハヤブサ』にも、優しい曲はありますが、初めて聴いた時には、やっぱり”激しいアルバム”という印象が強かったです。ただ、『三日月ロック』は、そんな風には思いませんでしたね。まぁ『ハヤブサ』で耐性がついたってのもありますが、割と最初からすんなり入ってきたんです。

 


■アルバム『三日月ロック』には、表題曲がありません。つまり、アルバムのタイトルになっている”三日月ロック”という曲が入っていないんです。これは、オリジナルアルバムで言うと、アルバム『空の飛び方』以来のことなんだそうです。

 

表題曲がある作品は、もちろんその表題曲がアルバムの軸になり得ます。例えば、前作の『ハヤブサ』とかは、もうあきらかですよね。あのロック全開の疾走感あふれる【8823】という曲が、まさにアルバムを物語っているという感じです。

 

一方で、アルバム『三日月ロック』には表題曲がない分、ロックな方向に向いても聴けるし、優しい方向に向いても聴けるような、何ていうか、こういうアルバムだと限定させることなく、その時その時の状況に合わせて聴けると思うんです。盛り上がることもできるし、静かな気持ちで聴くこともできるしって感じです。

 

言い方を変えるならば、全曲が表題曲になり得るって感じですかね。このアルバムの中の曲で、どの曲を中心に据えて聴くかで、印象が変わってくるのではないでしょうか。

 


■印象に残っている曲をいくつか紹介させてもらいますと、まずは【ハネモノ】。

 

先述した通り、これは草野さんが音楽への気持ちを取り戻したきっかけの曲でもあります。何ていうか、応援歌とも鎮魂歌とも取れるような不思議な曲だと思うんですけど、先述のエピソードもあり、このアルバムを象徴している曲だと思っています。

 


ささやいて ときめいて
街を渡る 羽のような
思い通りの生き物に変わる

 

これがサビの歌詞ですが、僕はここを読むと、街のアスファルトの上に落ちている一本の白い鳥の羽が、風を受けて空に舞い上がっていくような、そんな光景を思い浮かべています。それは、魂が成仏して空に舞い上がっていくような、あるいは、生き物が生まれ変わっていくような、そういうイメージを想起させる光景だと思います。

 


それから、【旅の途中】も印象に残っています。

 

僕は、この曲が本当に大好きなんです。こういう、ロックとフォークソングの真ん中のような曲は、スピッツにとってはすごく重要ですよね。まさしく、優しいロックの代名詞のような曲だと思います。本当にきれいな曲だと思います。

 

タイトルにもなっています、”旅の途中”という言葉は、スピッツにとって大切な概念になっています。つまりは、いつだって自分たちが居る場所は、”旅の途中”なんだということを表しています。

 


■それから、何と言っても、【けもの道】という曲ですよ。

 

僕は、この【けもの道】という曲が、スピッツの全曲の中で一番好きなんです。この曲には、何度も何度も励まされてきて、それはこれからも変わらないです。アルバムの最後が、【旅の途中】→【けもの道】で締めくくりになるのですが、もう流れが最高ですよね

 

先程の、表題曲云々の話をしましたが、個人的に、この曲をアルバムの表題曲と位置づけて聴いています。

 

このアルバムに、草野さんが込めた想いとして、「人々の不安な気持ちを和らげる」というのがありましたが、全曲がそういう曲になっているわけではないとは思いますが、人を応援する気持ち・励ます気持ちを、このアルバムに込めているのだと思っています。

 

そこで、この【けもの道】は、まさにって感じです。

 


あきらめないで それは未来へ
かすかに残るけもの道
すべての意味を 作り始める
あまりに青い空の下
もう二度と君を離さない

 

サビのこの部分の歌詞。”あきらめないで”っていう言葉も、それまでの草野さんからすれば、こういう真っ直ぐで、あからさまな言葉は、ちょっと控えるような言葉なんですよね。シングル曲の【裸のままで】でも、”君を愛してる”という言葉を使うことにも抵抗を感じていたほどでした。

 

何ていうか、こう言うと失礼かもしれませんが、草野さん自身が、どこかフワッと生きているような感じがするのです。それは、一重に彼の人柄から来るものが強いと思いますが、実際に書籍「スピッツ」の中で、すごい初期の頃のインタビューの中で、”「元気に生きていこう!」より「フワッと死んでいこう!」がいい”と語っていました。

 

そこからも、草野さんという人が、”あきらめないで”という強い言葉を使ったことには、何かすごく大きな意味を感じてしまうのです。これは、スピッツを長く聴いてきた自分からすれば(もとい『三日月ロック』を初めて聴いたのは高校生の時でしたが、それでも)、半ば違和感に近い言葉だったほどです。

 

それでも、それだけそういう言葉を使わなければ表せない、強い想いがあったのだろうと想像しています。”俺は、俺の気持ちだけじゃなくて、世の中にある何かザワザワした不安を和らげるような、少しでも鎮めることができるような曲を作っていきたい。”という、先程紹介した言葉を物語る、紛れもない強くて優しい草野さんの応援歌なのです。

 

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アルバム講義:9th Album『ハヤブサ』

ハヤブサ

9th Album『ハヤブサ
発売日:2000年7月26日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01. 今
→ 15時限目:今 - スピッツ大学

 

02. 放浪カモメはどこまでも album mix
→ 157時限目:放浪カモメはどこまでも - スピッツ大学

 

03. いろは
→ 16時限目:いろは - スピッツ大学

 

04. さらばユニヴァース
→ 59時限目:さらばユニヴァース - スピッツ大学

 

05. 甘い手
→ 8時限目:甘い手 - スピッツ大学

 

06. Holiday
→ 162時限目:Holiday - スピッツ大学

 

07. 8823
→ 138時限目:8823 - スピッツ大学

 

08. 宇宙虫
→ 209時限目:宇宙虫 - スピッツ大学

 

09. ハートが帰らない
→ 128時限目:ハートが帰らない - スピッツ大学

 

10. ホタル
→ 159時限目:ホタル - スピッツ大学

 

11. メモリーズ・カスタム
→ 185時限目:メモリーズ - スピッツ大学

 

12. 俺の赤い星
→ 34時限目:俺の赤い星 - スピッツ大学

 

13. ジュテーム?
→ 71時限目:ジュテーム? - スピッツ大学

 

14. アカネ
→ 5時限目:アカネ - スピッツ大学

 


スピッツ史に残る、特に重要な作品、9枚目のアルバム『ハヤブサ』です。

 

個人的に、オリジナルアルバムでスピッツの活動時期をいくつかに分けているのですが、5th『空の飛び方』~8th『フェイクファー』を、スピッツの活動時期として、第二期に位置付けています。

 

ということで、9th『ハヤブサ』からは、スピッツは新しく第三期へと突入したと思っています。この間で、ガラッとスピッツの音楽が変わったことを、アルバム『ハヤブサ』を聴いてみると感じるのではないでしょうか。

 


スピッツの第二期は、まさに”スピッツ黄金期”というべき時代でした。

 

100万枚を大きく越える売上を果たした、シングル『空も飛べるはず』『ロビンソン』『チェリー』をはじめ、出す作品出す作品がもれなくヒットを果たし、スピッツの名前が、どんどん日本全国に広まっていった時期を、第二期に位置付けています。”スピッツバブル”とも言われたりしますね。

 


しかし、そんな黄金期の陰で、スピッツは自分たちの音作りに長いこと悩んでいたという様子が、書籍「旅の途中」などから読みとることができます。特に、アルバム『インディゴ地平線』を経て、アルバム『フェイクファー』で顕著になっていったようです。

 

具体的には、ライブでの自分たちの演奏のような、ダイナミックな音作りをしたかったのだと、書籍の中で語っておられます。特に、ミックスダウン(楽器やボーカルの音を調整して、一つの音源にまとめること)にうまくいかずに、音が暗く、沈んだ感じになってしまったと感じたようです。

 

個人的にも、アルバム『インディゴ地平線』とアルバム『フェイクファー』は、少し音がくぐもって聴こえる気がするのですが、どうでしょうか。

 


■ということで、スピッツは、音作りについて試行錯誤するようになります。特に、ミックスダウンについて、大きな課題を感じていたようで、色んな人にミックスダウンを頼んだりしてみたようです。

 

日本での試行錯誤の結果(この辺りのことも、書籍「旅の途中」には詳しく書かれていますので、興味がありましたら読んでみてください)、海外の音楽・エンジニアまで興味が広がっていきます。その結果、全員一致の意見で、アメリカのエンジニアである、トム・ロード=アルジという人に白羽の矢が立ちます。

 

そういうわけで、日本でミックスダウンした曲と、アメリカでミックスダウンする用の曲を用意して、スピッツは渡米します。自分たち(日本チーム)で行ったミックスダウンと、海外で行ったミックスダウンに、どんな違いが出るのか、試そうとしたんですね。

 

アメリカでレコーディングやミックスダウンされた曲としては、シングル曲【メモリーズ】を含め、【船乗り】や【ムーンライト】や【春夏ロケット】などが挙げられます。

 


アメリカでの音作りの旅は、一定の成果を見せ始め、順調に活動を続けているように思えたスピッツでしたが、ここで思わぬ大きな出来事が起こってしまいます。それが、”マイアミ・ショック”と呼ばれている出来事です。

 

マイアミ・ショックを簡単に説明すると、レコード会社が、スピッツのいないところで、スピッツのベストアルバムを発売させることを強行的に決定、そして実際に発売させてしまう、という出来事です。

 

スピッツが、ベストアルバム発売の話を、アメリカのマイアミ滞在中に聞いたということから、この出来事を”マイアミ・ショック”と呼んでいます。

 


スペシャルアルバム『花鳥風月』を紹介した時にも書きましたが、スピッツは”アンチベストアルバム”を貫いていました。それは、「ベストアルバムは解散するときに出す」と語るほど強い考え方でした。

 

そもそも、カップリング曲や、インディーズ曲・未発表曲を収録したアルバム『花鳥風月』こそ、ベストアルバムブームに抵抗して作られた作品だったのです。

 


そういうわけで、この出来事に、スピッツメンバーは憤りと悲しみを感じます。

 


 スピッツはレコード会社といい関係が作れていると思っていたから、アーティストの意向を無視してベスト盤を出されるような騒動とは無縁だと考えてきた。なによりも、俺たちがベスト盤を出すことを、快く思わないことがわかっているはずなのに、どうしてそんな企画が出てきたんだ…俺は、正直、カチンと来た。

 

書籍の中で、田村さんはこのように語っています。

 


この出来事で発売されたアルバムが、『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』ですね(1999年12月15日発売)。シングル曲として、7th【君が思い出になる前に】~19th【楓】の13曲を収録したベストアルバムになりました。

 

このアルバムのタイトル”RECYCLE”という言葉は、せめて自分たちでつけたいという意向の下、スピッツで決めた名前だそうです。意味は、”使い回し”ということで、皮肉も込めてつけられた名前だったのでしょう。

 

ちなみに、後にシングルコレクション『CYCLE HIT Spitz Complete Single Collection』を発売させ(こっちは、”シングルコレクション”だからOK!)、2006年に『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』の方は製造中止になりました。

 


僕はと言うと、このベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』を、発売直後に買いました。中学生の時ですね、唯一のスピッツ仲間と一緒に街まで買いに行きました。その当時は、上述のような、スピッツの苦しみがあったことは知らなかったこともありましたが、スピッツの名曲がこれでもかと入っており、とても好きな作品でした。

 

ちなみに、大学の時に、このアルバムを友達に貸したのですが、そのまま返してもらうことなく、大学卒業を迎え、離ればなれになってしまいました。まぁ、この頃にはもう、マイアミショックのことを知っていたので、まぁいっか…という感じですね。でも、どうだろうな、廃盤になるんだったら、初回限定盤だったし、手元に置いておきたかったかな…。

 


スピッツの、長い間の苦悩としてもう一つ、世間が抱くスピッツ像と、自分たちの抱くスピッツ像に差異を感じていた、というものもありました。

 

僕自身の想像も含めますが、世間のスピッツ像は、どうしても『空も飛べるはず』『ロビンソン』『チェリー』を含めた、何ていうのか、世間受けするような、ポップで明るいスピッツだったと思います。

 

スピッツはかつて、インディーズ時代ではパンクロックバンドとして活動をしていたこともありましたが、バンドの方向性を変えたとしても、根底にあったのは、いつだって”ロック”だったのでしょう。あくまで、自分たちはロックバンドなのだという思いが、強くあったのだと思います。

 


マイアミショックで、スピッツは一度”死”を迎えました…というのは大げさかもしれませんが、書籍の中でも”死と再生”という表現があります。

 

マイアミショックの反動もあり、(おそらく)アメリカで本場のロックに触れたことも影響して、スピッツはこれを機に、もう一度ロックバンドとしてのスピッツに立ち返ることを決意します。これが”再生”の意味するところですかね。

 


■ということで、長くなりましたが…

 

今まで感じていた世間と自分たちのギャップへの違和感が、マイアミショックによって弾けて、アメリカでの音作りの経験が合わさって、純粋なロックへと気持ちが立ち返ります。

 

その結果、アルバム『ハヤブサ』という、非常にロックで攻撃的なアルバムが出来上がったのです。

 

僕は、このアルバムも、リアルタイムで高校生の時に購入して聴いたのですが、いやぁ、驚きましたね。当時の僕でも、スピッツは割と長く聴いてきていて、第二期のスピッツにどっぷり慣れ親しんでいたので、アルバム『ハヤブサ』を聴いた時に、これが今まで聴いてきたスピッツなのか!?と驚くほど、ロックで激しいアルバムでした。

 

それは、最初は違和感を感じる程でしたが、ちょうど僕自身も少しずつ邦楽ロックを好んで聴くようになった頃だったので、程なくしっくりきて、これもお気に入りの作品になりました。

 


■まず、何と言っても、印象的な最初の3曲です。

 

【今】→【放浪カモメはどこまでも】→【いろは】というこの流れ…本当に大好きな3曲です。何ていうか、スピッツがずっとため込んだ”鬱憤(うっぷん)”を、いきなり爆発させているように聴こえてなりません。「うぉお、お前ら!スピッツはこれからこんな風にやっていくからなー!あいさつ代わりで、メロメロにしてやる!」的な、とても強い気持ちを感じます。

 

 

その中でも、やっぱり【放浪カモメはどこまでも】がお気に入りです。アルバムの名前であり、表題曲にもなっている”ハヤブサ(8823)”という言葉もそうですけど、”カモメ”という鳥の名前が使われていて、スピッツの特別な気持ちがこもっていると思わざるを得ません。



悲しいジョークでついに5万年
オチは涙のにわか雨

 

でも放浪カモメはどこまでも
恥ずかしい日々 腰に巻きつけて 風に逆らうのさ

 

出だしの歌詞を書いてみました。

 

この曲をスピッツは、マイアミショックの直後、日本に帰ってきてから、レコード会社との予定が白紙の時期に、4人でスタジオ入りした時に原型を完成させたそうなのですが(仮タイトル「ギターポップNo.1」)、そんなエピソードを聞くと、ピンチの状態でも、スピッツの4人の絆だけは少しも揺らがなかったんだなと、とても嬉しく思い、感動してしまいます。そういう時期に作った曲なので、やっぱり自分たちのことを書いた曲なんですかね。

 


■そして、何と言っても、アルバムの表題曲である【8823】ですよ。

 

これはもう紛れもなく、スピッツの魂…と言うより、”魂の叫び”が聴こえてくるような曲ですね。ライヴでのマスト曲の一つであり、とても盛り上がる曲です

 

先程も紹介しましたが、スピッツの”鳥ソング”ですからね、これにもやはり特別な想いをこめていることは間違いないと思うのですが、何となく、スピッツのデビュー曲である【ヒバリのこころ】と比べてしまいます。

 


ところで、これは皆さんにも聞いてみたい話なんですけど、多分僕がアルバム『ハヤブサ』を購入した頃だと思うんですけど、その時に、

 

「小さかったヒバリは 大きなハヤブサに進化したのだ」

 

というフレーズをどこかで見かけたんです。微かに、購入したCDショップに飾られていたポップに書いてあったんだっけ…と思ってるんですが、かなり記憶があいまいです。

 

何かの雑誌に書いてあったかもしれないし、そのポップにしたって、何かに書かれてあった言葉を取ってきたのかもしれないし、ひょっとしたらショップ店員が個人的に作った言葉かもしれないし(だとしたら、良いセンスですね!)、よく分からんのです。

 

しかし、これだけ強烈に覚えているのに、こんなインターネットが発達したこの時代でも、情報を見つけ出すことができないのです!だから、ポップを書いた人の自作説か、僕が白昼夢でも見ていた説が濃厚なのですが…もし、見かけたことのある方がおられましたら、情報ください。

 

まぁ、こういうことがあったから余計に、”ヒバリ”と”ハヤブサ”を比較してしまうんですけどね。

 


この歌も、やはり出だしの歌詞が印象に残っています。

 


さよならできるか 隣り近所の心
思い出ひとかけ 内ポケットに入れて

 

あの塀の向こう側 何もないと聞かされ
それでも感じる 赤い炎の誘惑

 

さよならを言おうとしているのは”スピッツ”で、塀は”今までのスピッツを縛り付けていたもの”、例えば、レコード会社や世間が思うスピッツ像などを表していると考えると、ここはそのまま、そういう今までの自分たちに別れを告げて、新しく生まれ変わることへの決意を表明しているように聴こえてきます。

 

最初はちょっと静かに始まって、サビで爆発するところとか、助走をつけて、鳥が飛び立っていくような、そんな力強さを感じます。

 


■あとは、個人的に一番アルバムの収録曲で好きなのが、【アカネ】ですかね。初めて聴いた時から、アルバムの中で一番好きな曲だったんですけど、20年以上経った今でも、それは変わりませんね。アルバムの最後に入っていて、ロックな曲ではないんですけど、とても綺麗な曲だと思います。

 

その他、公認(?)のストーカーソングである【Holiday】、これも衝撃を受けました【メモリーズ・カスタム】、ロックなアルバムだからこそ逆に引き立って異質に思う【ジュテーム?】など、本当に個性的な曲が溢れています。

 

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220時限目:グリーン

【グリーン】

 

グリーン

グリーン

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■アルバム『醒めない』の6曲目に収録されている曲です。

 

前回紹介した【ナサケモノ】や、同アルバム曲ですと【子グマ!子グマ!】などと同じような、ノリノリなアッパーチューンになっています。雑誌やラジオなどで、”明るいアルバム”という風にこのアルバムを語っていましたが、まさにこの曲はその形容通りの曲ですよね。

 


■さて、もう何度も語っていますが、MUSICAのインタビューなどによると、アルバム『醒めない』に草野さんが込めた想いは、「死と再生」というものでした。そして、コンセプトアルバムとして、『醒めない』というアルバム一枚で、一貫した物語を作ろうと試みました。

 


草野「(前略)そういう一貫したストーリーがあるアルバムをつくったら面白いんじゃないかってなんとなく思って。……結果的にそこまでにはなっていないんですけど、再生の物語みたいなものを匂わせるコンセプトで作ってもいいかもって思ったところがありましたね」

 


そういうことも踏まえて聴いてみたときに、ここまで(5曲目の【ナサケモノ】まで)のアルバム『醒めない』の収録曲には、別れの歌が多かったというイメージを抱きます。

 

【醒めない】は、まぁ本の表表紙というか、ストーリーとは少し切り離して、スピッツの想いを歌っているような曲なのですが、続く【みなと】、【子グマ!子グマ!】、【コメット】、【ナサケモノ】は、曲調は明るいものもありますが、居なくなった人のことを想っているような歌だったり、大切な人の旅立ちに際して、寂しい気持ちはあるけれど、その人を応援するような曲になっています。

 

そこへきて、この【グリーン】にたどり着くわけですが、この曲でまた、アルバムの雰囲気がガラッと変わります。

 


■個人的に、この歌を聴いた時に、まず思い描いたのは、”震災からの復興”というものでした。アルバム『小さな生き物』を経て、アルバム『醒めない』にも、形は変わっていても、震災に対する想いが込められているようです。

 

草野さんがアルバムに込めた想いは、先述の通り「死と再生」というものでした。”死”とは、まぁ人によって”死”に対する記憶は様々あるかと思いますが、この場合は、震災によって亡くなった方々はもちろん、残された人の悲しみや、崩壊した街の姿などを表してると考えられます。

 

そして、それに対する”再生”ということで、震災により傷ついた街の再建や、悲しみを負った人々がもう一度立ち上がっていくことなどに繋がっていくと思います。

 



どん底から見上げた 青い空とか
砂漠で味わった 甘い水とか

 


今芽吹いたばっかの種 はじめて見たグリーンだ
憧れに届きそうなんだ 情念が
あふれているよ あふれているよ

 

それぞれ、出だしの歌詞と、サビの歌詞を取り上げました。

 

前者には、”どん底”や”砂漠”といった、辛く苦しかった体験を表わしているような言葉が出てきています。それに対して、”どん底”には”青い空”という言葉が、”砂漠”には”甘い水”という言葉が、それぞれにかかっていますが、そんな辛く苦しい状況の中でも、少しずつ希望を見出していったことを読み取ることができます。

 

後者にも、”今芽吹いたばっかの種”という言葉が出てきますが、これも少しずつ芽生えはじめた希望を表していると読み取れます。

 


そして、それらを象徴して、タイトルにもなっている”グリーン”という言葉が使われているという感じですね。”グリーン / green”とは、いわずもがな、色としての緑色という意味があり、そこから、草が茂っている様子や、人を形容する言葉として、若々しい、未熟な、などという意味もあります。

 

総じて”グリーン”という言葉には、若々しくてフレッシュなイメージを受けます。歌詞にも”芽吹いた”という言葉が出てきていますが、そのまま”希望の芽生え”とでも訳すことができるのではないでしょうか。荒廃した大地で、瓦礫の隙間から、小さな芽が出て、精一杯光を浴びて生きようとしている姿が思い浮かびます。

 


■他にも、印象に残った歌詞が出てきます。

 


コピペで作られた 流行りの愛の歌
お約束の上だけで 楽しめる遊戯
唾吐いて みんなが大好きだったもの 好きになれなかった
可哀想かい?

 

2番のAメロの歌詞ですが、こんなにあからさまな表現は珍しいような気がしますが、どうでしょうか。

 

流行はするものの、量産されるだけで、みな同じように聴こえる愛の歌。本来は自由であるはずが、色んなものに縛られ、何だかヤラセのように見える今時の遊戯。そういうものに対する皮肉とも、警鐘とも読み取れます。

 

この部分は、僕らの想いに当てはめてもよさそうですが、他でもない、作者である草野さん・スピッツの想いであると考えられます。

 


僕が言うのもなんですが、震災があって、草野さんは、自分が音楽をする意味を見失ってしまいました。あくまで想像ですが、そういうときには、ちまたに溢れている流行の歌が、どこか嘘っぽく聴こえたかもしれません。

 

また、そうでなくても、ひねくれ者(?)の草野さんです、流行ものを歌に取り入れることを、カッコ悪いこと・恥ずかしいことと捉えていた節があります。

 

例えば、ベストアルバムブームへのアンチテーゼとしてスペシャルアルバムを作ったり、古くは【裸のままで】で”愛してる”という言葉を歌詞に使うことにも抵抗があったようですし、歌詞に英語を使うことも”踏み絵”と言っていたほど抵抗を示していました、笑。

 


そういうことを踏まえ、続く歌詞を読んでみると、こんな感じです。

 


でも悩みの時代を経て 久しぶりの自由だ
ときめきに溺れそうなんだ 最速で
どこでも行くよ

 

何ていうか、そういうモヤモヤした気分が晴れて、ふっ切れた感じですかね。時代が変わったっていうより、考え方が変わったっていう感じですね。スピッツスピッツなんだと、自分たちは自分たちなんだと、結局はそういう答えに行き着いたということでしょうか。

 


■あとは、これまでの解釈とは別に、スピッツお得意の、恋愛の芽生えを描いた歌詞と読み取ることができます。先程も紹介しましたが、

 


今芽吹いたばっかの種 はじめて見たグリーンだ
憧れに届きそうなんだ 情念が 脳内の 火焔土器
あふれているよ あふれているよ

 

最後の歌詞を載せてみました。”情念”は、抑えることができない感情のゆらぎを表す言葉であるそうです。喜怒哀楽や、愛欲などの強い気持ちを表しているようですが、これをそのまま”君への恋心”と訳してみるとどうでしょうか。

 

なぜ”火焔土器”であるかは不明としても(燃えるような熱い想いを比喩しているのか?)、君と出会ったことで、自分の中に恋が芽生え、その想いがどんどん膨れ上がっていって、溢れているという意味にも捉えることができます。

 

このような解釈にすると、”グリーン”という言葉には、”恋心の芽生え”の象徴という意味を当てはめることができそうです。”はじめて見た”という言葉がくっついているので、もしかしたら”初恋”を表わしているかもしれませんね。