スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

(予告)スピッツ大学ランキング企画 最終結果発表:2018年7月17日(予定)

スピッツ大学ランキング企画は、2018年7月7日でもって、投票期間を終了となりました。

 

(※何のこっちゃ?と思われる方も多いかと思われますので、下の方にルールだけでも載せておきます。終わった企画ですので、投票はしないでください、もう反映はしません!)

 

つきましては、今から集計をして(エクセルなので、もうすでに終わっているのですが)、「スピッツで好きな曲ランキング 最終結果」(スピッツ大学調べ)を、動画(多分…)とブログ記事(絶対!)で作っていくつもりです。

 

一応、保管庫(part1~part5)として、投票していただいた方のランキングを見れるように残しておきますので、ご自由にご覧になっていただいて構いません。

 


重ね重ね、投票していただいた方、ありがとうございました。およそ750人くらいの投票がありました。もちろん、投票しなかった方も、スピッツ大学を訪れてくださってありがとうございます。ランキングは、別に投票しなかった方々も見ることができますので、良かったらまた見に来てください。

 

ランキング最終結果発表:2018年7月17日(予定)

 


 

スピッツ大学ランキング企画>(こんなルールで実施していました)

 

■趣旨
「このブログを読んでくださったスピッツファンの方々で(僕も含めて)、スピッツで好きな曲ランキングを勝手に作ること」

 


■ルール

 

①この記事のコメント欄に、あなたが選ぶ「スピッツで好きな曲ランキングベスト3」を書き込んでください。必ず、1位・2位・3位を1曲ずつ決めた上で、それが分かるように明記してください。

 

投票例(筆者的ベスト3)
1位 けもの道
2位 漣
3位 僕はきっと旅に出る

 


②選べる曲については、インディーズ曲とカバー曲を除いて、デビュー~アルバム『小さな生き物』(シングル曲【雪風】は含める)までの全ての発表曲とします。

 


③皆様に選んでいただいた、①②に該当する各々のベスト3について、1位の曲:3ポイント、2位の曲:2ポイント、3位の曲:1ポイントをそれぞれ与えます。そして、そのポイントを全て加えていって、ランキングを作っていきます。

 

 

ランキング途中結果 part2
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2017/05/05/154337

 

ランキング途中結果 part1
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2016/07/25/233059

 

 

保管庫 part5
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_3

 

保管庫 part4
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_2

 

保管庫 part3
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_1

 

保管庫 part2
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000

 

保管庫 part1
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2015/08/01/003522

218時限目:コメット

【コメット】

 

コメット

コメット

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の4曲目に収録されている曲です。

 

このアルバムの収録曲だったら、僕は【コメット】が一番好きなんです。そして、後述しますが、この【コメット】こそ、アルバムのコンセプトである「死と再生」の象徴である(ような歌詞がたくさん出てくる)物語だと思っているのですが、どうでしょうか。

 


■まず、この曲は、ドラマ「HOPE ~期待ゼロの新入社員~」の主題歌に起用され、アルバム発売前にいち早く聴くことが出来ました。

 

僕も、ドラマの初回を見て、エンディングで流れたこの曲を聴きました。初めて聴いた時に、何てきれいな曲なんだと、すでに名曲の予感をプンプン感じました。

 

綺麗なピアノの旋律からイントロが始まり、そのままピアノの音がバックで鳴っていて、メンバーの演奏や曲の雰囲気もあり、いつもより優しく聴こえる草野さんのボーカルを引き立てています。流れるようなミドルテンポがとても気持ち良く、歌詞とも相まって、何ていうかちょっと切なくもなります。

 


ドラマの方は、Hey!Say!JUMPの中島裕翔が初主演を務めた、商社(営業課)で働きはじめた新入社員の奮闘を描いた物語でした。僕は、最初に【コメット】を聴く目的で第1話を見ましたが、これも縁だと、それから最終話まで毎回見ることになりました。

 

というより、いわゆるサラリーマンっていうんでしょうか、営業とか人事とか、そういう仕事を自分自身がこれまでしたことがないので、ドラマの内容も新鮮に見ることができ、個人的には面白かったんです。

 

もちろん、毎回【コメット】が聴けたので、それもずっと嬉しかったですけどね。ちなみに、ドラマの物語に、【コメット】の歌詞が沿っているということは決してないようでした。

 


■さて、タイトルの”コメット”という言葉についてです。

 

僕は最初、”コメット”という言葉を聞いて、彗星という意味を思い浮かべました。実際、コメット / cometで、彗星やほうき星という意味があるのは知っていました。(完全に、ファイナルファンタジーの知識ですけどね…同じ名前の魔法があるので、笑)

 

しかし、これはこの曲を聴いて、色々調べてみて初めて知ったことですが、”コメット”という”金魚”の品種があるそうなんです。もっとも、この金魚の”コメット”自体、金魚のフォルムを見て、元の言葉の意味である”彗星”から名付けられたものであり、あながち前者の意味を思い浮かべたことも間違いではないのですが、何より、この【コメット】の歌詞のAメロに、

 


黄色い金魚のままでいられたけど
恋するついでに人になった

 

という部分があるので、”コメット”という言葉には”金魚”を当てはめた方がよさそうです。

 


■そうなってくると、じゃあ、なんで”金魚”という生き物を曲のタイトルにしたのか?金魚にこだわるその意図は?と考えたくなります。

 

というところで思い出すのが、前アルバム『小さな生き物』や、そのアルバムに収録されている【りありてぃ】という曲です。まぁ、【りありてぃ】に関しては、僕自身がもうすでに書いたので、個人的な想像によるところが大きいですが、これらと【コメット】のつながりを、色々と想像しています。

 


まず、アルバム『小さな生き物』とアルバム『醒めない』の関係性については、MUSICAのインタビューにおいて、

 


草野「…まぁ、『小さな生き物』が旅に出る前の不安と期待が入り混じったアルバムだとすると、”雪風”は再生を匂わすものになっていたと思うんで、そういう意味では、アルバムのスタートにはなってると思いますね。」

 

という風に草野さんも語っており、精神的に『小さな生き物』から『醒めない』へと続いており、前に進もうとしている、という感じに読み取れます。

 


そして、その収録曲である【りありてぃ】についてですが、その歌詞にも、サビに”金魚”という言葉が出てくるのです。

 


変わった奴だと言われてる 普通の金魚が2匹
水槽の外に出たいな 求め続けてるのさ
僕のりありてぃ りありてぃ

 

という感じです。僕はこの【りありてぃ】の解釈として、自分の世界に閉じこもっている”僕”(と”君”)のことを、”金魚”という比喩表現で表しており、そんな”僕”が、”君”と出会ったことで、”水槽の外に出たい”と、つまり自分の世界から出たいと思うようになり、勇気を振り絞っている、という物語を当てはめたのでした。

 

ちなみに、アルバム『小さな生き物』の歌詞カードの表紙には、赤い金魚が4匹プリントされており、”金魚”が”小さな生き物”のひとつの象徴として用いられていることが分かります。(4匹なのは、メンバーを表しているか?)

 


ということで、これらを踏まえて、これは勝手な想像…というより、そうだったら面白い展開だな、という願望もあるのですが、【コメット】は【りありてぃ】と繋がっており、同じ主人公だったら胸熱の展開だなって思うのです。まぁ、あんまりそこにこだわった解釈にはなっていないですが、少なくとも、”金魚”という言葉に込められた意味は、同じじゃないかなって思うんです。

 

まず、【りありてぃ】では、閉じこもっていた世界から抜け出そうとして、ドアノブに手をかけたものの、その”冷たさにびびった”とあるように、外へ出ることへのためらいを読み取ることができます。先程の、草野さんのインタビューの言葉を借りるのならば、”旅に出る前の不安”を感じます。

 

そして【コメット】は、歌詞に”街角”や”ホーム”という、部屋の外の場所を表す言葉が出てきており、ここからも、一歩進んだ状況だということが読み取れます。

 


■では、【コメット】の歌詞を読んでみます。

 


誰でもいいよと生き餌を探して
迷路の街角で君に会った
黄色い金魚のままでいられたけど
恋するついでに人になった

 

出だしの歌詞です。この辺りは、まさに【りありてぃ】に通じるところがありますよね。ここにもまた、”金魚のままでいられた”という風に、自分が閉じた世界に居たことを示している部分がありますが、”君”に恋をして”人になった”ということで(”恋するついで”という言い方も面白いですよね)、”君”との出会いが、”僕”が閉じた世界から抜け出すきっかけになったと読むことができます。

 



「ありがとう」って言うから 心が砕けて
新しい言葉探してる
見えなくなるまで 手を振り続けて
また会うための生き物に

 

サビの歌詞です。でも、不思議ですよね。出だしの歌詞は、”僕と君との出会い”を描いているように読めますが、ここの歌詞は、どちらかというと”別れ”を描いているように読めます。

 

だから【コメット】は、出会いと別れ、その両方を描いていると考えるしかないです。何ていうか、最初の部分は、君に恋をして出会った時を描いていて、そこから実は時間が経過していて、Bメロの”夕暮れ ホーム”の場面へと飛び、件のサビへと続いていくわけです。

 


そこへきて、サビの歌詞ですよ。もう、震えますよね、本当に美しい歌詞です。

 

個人的な想像では、ここは”君”の方が旅立つシーンで、”僕”が見送りに来たという状況をイメージしました。2番のBメロに、”優しいものから離れてく”というフレーズがあるので、自分が離れるというよりは、相手が離れていくという状況が合うかなと思いました。

 

そこで、”君”が”僕”に「ありがとう」と言うわけですよね。ひょっとしたら、”僕”は、「ありがとう」を言われ慣れてなかったのかもしれません。”心が砕けて”という表現も印象的ですが、「ありがとう」という言葉をかけられ、嬉しさと、別れに対する寂しさが入り混じり、心が張り裂けそうな気持ちになったのでしょう。ひょっとしたら、涙を流したかもしれません。

 


そして、この歌詞。

 


見えなくなるまで 手を振り続けて
また会うための生き物に

 

僕は、ここの歌詞が本当に好きなんです。すごい歌詞だなって思うし、このアルバム『醒めない』のコンセプトである「死と再生」を象徴する歌詞だなって思うんです。

 

情景が浮かびますよね。”ホーム”でのシーンなので、”君”は電車や新幹線に乗って旅立つところですかね。やがて、扉が閉まり、”君”を乗せた電車が出発します。ホームに”僕”を残し、電車は走り出します。ドラマで考えると、別れを惜しむ”僕”が手を振りながら、電車に並走するシーンでしょうか。

 

やがて電車は…”君”は見えなくなり、”僕”は独りホームに取り残されます。それでも、立ちつくして、見えない”君”の後ろ姿に、いつまでも手を振り続けるのです。

 


■別れた瞬間からもう会いたくなって、また会える日を願いながら、それが何日後か、何か月後か、何年後か…いつになるのか分かりませんが、その日だけを目指して、僕は君の居ない日々を生きていくのでしょう。

 

この辺りが、まさにアルバム『醒めない』に込めたかった、「死と再生」…言い換えるならば、「出会いと別れ」の物語だったのではないでしょうか。

217時限目:子グマ!子グマ!

【子グマ!子グマ!】

 

子グマ!子グマ!

子グマ!子グマ!

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の3曲目に収録されている曲です。

 

【醒めない】でテンションが上がって、【みなと】でちょっと感傷的になって、いよいよこのアルバムのストーリーへ!ってなってからの、【子グマ!子グマ!】ですからね。こ…子グマ!?ってなっちゃいますよね、笑。

 

そんな、不思議でかわいらしいタイトルにも表れていますが、草野節満載で、スピッツお得意(?)の、”かわいい”と”かっこいい”が、なぜかこんなにも共存するロックナンバーになっています。

 


■草野ボーカルとともに、終始聴こえてくる女性ボーカルは、Czecho No Republicチェコ・ノー・リパブリック)というバンドのタカハシマイさんが担当しているそうです。その辺りのことは、MUSICAのインタビューにおいて、少し触れられています。

 


田村「…”子グマ!子グマ!”でCzecho(No Republic)のタカハシさん(タカハシマイ)が歌ってくれたんだけど…凄い緊張してるのはわかったんだけど、一発目が完璧だったの。たぶん結構練習してきたんだろうし、いろんなことを想定してやってくれたんだろうなって思ったら、聴いてる時にすげぇ感動しちゃって」

 

三輪「泣いてたもんね」

 

草野「鼻水出てた」

 

田村「そこは別にいいんだけど(笑)。…」

 

こんなやり取りが、インタビューの中でされています。もう、ほんとにいいおじさんたちですよね、笑。田村さんが感動で涙を流すほどの、素晴らしいバックボーカルを聴くことができます。

 


あとは、皆で”子グマ”に応援のエールを送っているようなCメロには、スピッツメンバーに加えて、亀田誠治さんもコーラスとして参加してるそうです。

 


■では、【子グマ!子グマ!】が、どんなことを歌っているのか、考えてみます。

 

まず、これも同じくMUSICAのインタビューにおいて、正確には、アルバム『醒めない』全体に対して、草野さんが語っていることなんですけど、特に【子グマ!子グマ!】に繋がっていることのように感じますので、紹介しておきます。

 


草野「『シートン動物記 くまの子ジャッキー』ってアニメを知ってます?あのストーリーが自分の心に残ってて。もしかしたら違うかもしれないけど、俺が覚えてるストーリーだと、親熊を殺された小熊を、ネイティブアメリカンの子供が育てることになるんですよ。でも紆余曲折あって、サーカスに売られちゃったりして、離れ離れになっちゃうんですけど、最後は再会して抱き合うっていう。その時は小熊はもうデカい熊になってるんだけど、でも熊もその子のことを覚えてて……」

 

「くまの子ジャッキー」とは、また古いものを、笑。古いアニメなので(1977年にテレビ放送されたアニメ)、リアルタイムではさすがに僕も見たことありませんが、幼い頃にどこかで少しだけ見た記憶が、微かに残っています。ただし、アニメの物語は詳しくは知らないですね。


しかし、草野さんがそう言うならば、曲のタイトルが【子グマ!子グマ!】なので、否応なく、アニメの物語と曲の関連を繋げて考えてみました。

 


それで、今回は調べてみても、詳しい物語(あらすじ)を得ることが出来なかったのですが、wikiには各話のサブタイトルは一覧として載っていましたので、そこから多少の物語は想像できそうです、笑。

 

「くまの子ジャッキー」の物語は、まず、母熊を殺された(これは人命救助のために、やむなく主人公の父親が撃ったそうです)子熊のジャッキーとジルを、息子のラン(熊を撃ったのが父親)が引き取って、子熊を育て始めるところから始まります。

 

そこから、ランとジャッキーが友情を深めていく物語が進んでいき、草野さんの言う通り、物語のどこかでランとジャッキーの別れ(おそらく、望まれない形の別れ)があるようなのです。そして、物語の終盤で、ランと大きくなったジャッキーが再会を果たし、おそらくそのまま、ジャッキーを自然に返し大団円という流れになっていくと思います。

 


■なので、アニメでいうところの、”熊と主人公の別れ”のシーンをイメージして、草野さんはこの【子グマ!子グマ!】を作ったのだと、勝手に想像しています。

 

まぁ、アニメは”熊と人との出会い・別れ”を描いていますが、アルバムの方は、普通に考えると”人と人との出会い・別れ”を描いたものになっているとは思います。だから、そのままアニメの物語を追っていってもいいし、”子グマ”となっていますが、自分にとっての愛しい人の比喩になってるとも思います。

 


ということで、歌詞を少し読んでみます。まずは、出だしの歌詞から。

 


はぐれたら 二度と会えない覚悟は
つらいけど 頭の片隅にいた
半分こにした 白い熱い中華まん 頬張る顔が好き

 

”はぐれたら 二度と会えない覚悟は”という言葉があるように、二人に別れの瞬間が近付いている、という描写に読めます。そして、別れたら、もう”二度と会えない”かもしれない、と”頭の片隅”でちょっと寂しく思っているわけですね。

 

”中華まん”の下りは、面白いですね。これは、過去の思い出を回想しているのでしょうか。はたまた、別れが近付いた時期に、そういう何てことないことも、余計に愛しく感じているのかもしれません。

 


ところで、今まさに別れの瞬間を迎えようとしている二人の関係性はどういうものなのでしょうか。

 

例えば、”子グマ”という言葉や、先程の「くまの子ジャッキー」のストーリーを考えると、親子という関係を当てはめることができるかもしれません。まさに、”巣立つ子を想う親心”というものでしょうか。

 

進学のため、就職のため、あるいは、結婚のため…色んな状況を想像できますが、育ててきた愛しい我が子が、自分の元を巣立っていく瞬間をイメージすることができます。僕のイメージとしては、この方が強いですかね。

 

あとは、”頬張る顔が好き”という言葉は、何ていうか、恋愛感情にも捉えることができそうです。実際に付き合っていた恋人同士だったり、片思いをしていた、ずっと近くに居た友達など、そういう関係も当てはめることができそうです。

 


■そんな二人に、つらいけれど、必然的に別れが訪れます。

 


喜びの温度は まだ心にあるから
君が駆け出す時 笑っていられそう

 


幸せになってな ただ幸せになってな
あの日の涙が ネタになるくらいに

 

それぞれ、サビに出てくるフレーズですが、別れに際して、”君”をこんな風に送り出しています。

 

個人的に、”喜びの温度”という言葉が好きなんです。これは、先程の”熱い中華まん”にもかかっていると思っています。”中華まん”は、二人で分け合ってきた、楽しかった嬉しかった思い出の比喩でもあり、そういう思い出が残っているから、別れる時は笑って君を送り出そうという、優しさを感じることができます。

 



子グマ!子グマ!荒野の子グマ
おいでおいでするやつ 構わず走れ
子グマ!子グマ!逃げろよ子グマ
暗闇抜けて もう少しだ

 

ここが、メンバーと亀田さんがシンガロングしているCメロの部分です。ここは、完全に「くまの子ジャッキー」を意識していますよね。全員で、必死に”子グマ”を応援しているように歌っているのを聴くと、こっちまで「頑張れ!子グマ!」って応援したくなってきます、笑。

 

そのまま「くまの子ジャッキー」の物語に当てはめても良いですし、大切な人との別れを当てはめても良いと思います。

 

いずれにせよ、先程紹介したサビの部分とも繋げて考えて、大切な人と別れるのはつらいけれど、そのつらい気持ちをぐっとこらえて、笑って送り出し、そして、頑張れ!とエールを送っているのです。

 


■毎回この話はするかもしれませんが、笑。

 

アルバム『醒めない』の一つのテーマとしては、「死と再生」というものがあるようですが、それはそのまま「別れと出会い」に置き換えることができるかもしれません。アルバム『醒めない』には、そんな物語がたくさん詰まっています(あるいは、アルバム全体でひとつの物語)。【子グマ!子グマ!】も、その物語の一つと言えるかと思います。

 

それにしても、【子グマ!子グマ!】という、ゆるーいタイトルでこんな曲になるとはねぇ…。

216時限目:醒めない

【醒めない】

 

醒めない

醒めない

  • provided courtesy of iTunes

  

■15枚目のアルバム『醒めない』の1曲目を飾る、ご覧の通り、アルバムの表題曲になっています。

 

2017年(厳密には7月17日)に、結成30周年を迎えたスピッツですが、そんな30周年イヤー目前の2016年に発売されたアルバム『醒めない』、その表題曲というんだから、スピッツの30年分の気持ちが詰め込まれていると言っても過言ではない、記念すべき楽曲です。

 

僕が、生まれて初めて行くことになった、2017年に行われたスピッツ結成30周年のライヴツアー、通称”3050ツアー”においても、1曲目に演奏されたのが、この【醒めない】でした。すでに、新スピッツテーマソングとして、すっかり定着した曲になっています。

 

そういえば、いつだったか、当時のMステのスペシャルにおいても、スピッツが出演して、この【醒めない】を演奏しました。スピッツが、こういう時にアルバム曲を歌うのって、珍しいですよね(と言うより、初めて?)

 


■さて。

 

当時、アルバム『醒めない』の発売に先立って、表題曲【醒めない】のMVがいち早く解禁になったんでしたよね。僕は最初、朝の仕事場でそれに気づいて、思わずトイレの個室に駆け込んで、少しだけMVを見たんです。【1987→】の時も、確かそうでした、笑。

 


先に、MVを貼っておきます。

 

youtu.be

 

何ていうか、僕は昔のことを知らない(生で見たことがない)けれど、スピッツがその昔、ライヴハウスで演奏していた頃のライヴシーンを、そのまま映したような映像になっています。

 

あぁ、4人だけの演奏をしっかり堪能できる、僕が好きな感じのシンプルなMVだなぁ…とか思っていたら、1番の途中から、スピーカーの後ろから、アニメーションのキャラクターにデフォルメされた小さなスピッツメンバーが飛び出してきて、そのままスピーカーの上で演奏をし始めるという、意外な展開に、笑。

 

しかも、そのキャラメンバーが、ラーメンズ片桐仁スタイルの三輪さん、ハンチング帽子スタイルの田村さん、ランボースタイルの崎山さんという、これは意図的に昔のメンバーのスタイルを模したものにデフォルメされており、どこか懐かしく、クスッとくる感じになっています。

 

そして、草野さんに関しても同様に、短髪でジーンズスタイルという、これはブルーハーツ甲本ヒロトスタイルでしょうか。ギターも握らず、歌いながらピョンピョン飛び跳ねる様は、まさにリンダリンダジャンプを彷彿させますね、笑。

 


この辺りのことは、【醒めない】の歌詞にも表れています。

 


カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々
でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

 

結成して、アマチュアで活躍していた頃のスピッツは、元々パンクロックバンドでした(を目指していました)。まさに、このMVにおけるキャラメンバーは、その頃のメンバーを具現化したものだと言えますね。

 

このMVの最後において、全員が黒い革ジャン姿のスピッツが演奏するシーンが映りますが、もしもスピッツがパンクロックバンド路線のまま、活動を続けていたとしたら、今でもこんな姿のスピッツが見られたんでしょうか。

 


■ところで。

 

2018年の年始より、草野さんがパーソナリティーを務めるレギュラーラジオ番組が始まりました。

 

毎週、草野さんが選曲した、少々マニアックなロックナンバーをまとめて聴くことができ、毎回欠かさず聞いているという方も多いのではないでしょうか。僕も、録音+生で聴くことを、今はほぼ毎回欠かさず続けています(録音は続けていくか微妙です…)。

 


そして、そのラジオ番組の名前が「Spitz草野マサムネのロック大陸漫遊記」というのですが、まさにこの”ロック大陸”という言葉も、楽曲【醒めない】の歌詞から取られたものなのです。

 


まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり

 

こんな風に、サビの歌詞に、”ロック大陸”という言葉が出てきています。ラジオの中でも、たくさんのロックナンバーを紹介することを、草野さんは、「ロック大陸を冒険していく中で知った、イカしたロックナンバーを紹介」みたいな感じ(設定?)で語っています。

 

事あるごとに、この番組の中のテーマソング的に【醒めない】が流れていますが、こういうところも、【醒めない】が、スピッツにとって記念すべき曲であることを示していますよね。

 


■それから、MUSICAのインタビュー記事を少し紹介してみます。

 

この【醒めない】という曲は、どうやらアルバム収録曲の中でも、一番最後のセッションで生まれたそうで、その辺りの話が少し載っています。

 


草野「タイトル『醒めない』でいこうってことになったので、そのテーマ曲を作りたくなって。あんまりタイトルから作ることってないんですけど……っていうか初めてかもしれない、タイトルありきで曲作ったのは」

 


崎山「リズム録る時にはもう、”醒めない”が1曲目って決まってたから、その気持ちで演奏しましたね…」
三輪「そういうこともあんまりないからね。『これが1曲目になるよ』って言ってレコーディングしたのは初めてじゃない?」

 

タイトルを予め決めた状態で曲を作ったことがないとか、曲順を決めた上でレコーディングしたことないとか、意外な感じもしますが、そういうものなんですかね。

 


いつかまた、アルバム紹介の時にでも、詳しく書いてみたいと思っているんですけど、アルバム『醒めない』は、「死と再生」という一貫した物語を設定して作ろうとしたアルバムだったのですが、【醒めない】は、スピッツのパーソナルな部分を歌っている曲で、この曲は、一貫した物語から少し外れたところにあると思っていました。

 

だから、何ていうか、本の表表紙みたいな感じの曲でしょうか。記事の中で草野さんが、「この時はもうコンセプト関係ねぇってなっちゃってたから」って言っていたので、何か腑に落ちました、笑。

 


■とにかく、何と言っても、この曲を一番象徴しているのは、この曲のタイトルにもなっています”醒めない”という言葉でしょう。”冷めない”ではなく、”醒めない”になっているだけでも、何か全然印象が違いますよね。

 

色んなところで、色んな言葉に置き換えられ語られてはいますが、この言葉に込められた想いは、要するに「ロックバンドとしてスピッツが結成され、30年も長きにわたって活動し続けてきたスピッツが(草野さんが)、未だにロックを追及していく気持ちを”醒めない”で持ち続けている」ということです。

 


先程も紹介しましたが、サビにおいて、こんな風に歌われています。

 


まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり

 


任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい
もっと膜の外へ なんか未知の色探して
さらに解き明かすつもり

 

”最初ガーンとなったあのメモリー”とか、”なんか未知の色探して”とか、面白い表現ですよね。30年も経つのに(メンバーがロックに出会ってからだと、さらに長い月日が流れていますが)、初めてロックに出会った衝撃を今でも忘れずに、そして、今もまだ新しいロックを追い求めていく、スピッツの(草野さんの)姿を高らかに歌っています。

 


■あとは、これも先ほど紹介した、

 


カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々
でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

 

なんかも面白いですよね。たいていの場合、何事も始まりは、誰かへの憧れだったり、そこからの物真似なわけで、そこから少しずつ、自分なりにオリジナリティを加えていくわけですよね。その始まりの日々というのは、人によっては、忘れてしまいたくなるほど、恥ずかしいものなのかもしれません。

 

しかし、30周年を前にして、スピッツは(草野さんは)あえてここで、”復活しようぜ 恥じらい燃やしてく”と、つまり、原点に帰ろうと歌っているのです。それは、この曲やMVにも表れていますし、後に発表される【1987→】なんかもそうですよね。

 



見知らぬ人が大切な人になり
相性悪い占いも余計に盛り上がる秘密の実
運命を突き破り もぎ取れ

 

この部分も好きなんですけどね、笑。”見知らぬ人が大切な人になり”とか、時間経過とともに、恋愛っぽくも読めますが、”秘密の実”とか”もぎ取れ”とか、そういうちょっとエッチな感じを入れてくところも、しっかり忘れてませんね、笑。

 


■ということで。

 

結成30周年イヤー突入に向けて、スピッツが”原点”に返りつつも、紛れもなく”今のスピッツ”を歌った新曲【醒めない】です。

 

あなたには、長く醒めずに追い続けている夢や目標などがありますかね?この曲は紛れもなく、30年も醒めずにロックを追い続け、今もなおそれが”通過点だ!”と言って、ロックのけもの道を走り続ける、男たちの魂の歌です!


最後にもう一度、MVを載せておきます。

youtu.be

215時限目:ガラクタ

【ガラクタ】

 

ガラクタ

ガラクタ

  • provided courtesy of iTunes

 

■シングル『みなと』のカップリング曲であり、アルバム『醒めない』にも収録されています。

 

すでに紹介した通り、A面曲の【みなと】がしんみりとした、壮大な曲になっていますが、【ガラクタ】はまさにそれとは正反対の、明るく遊んでいるような曲になっています。

 

色んな音が聴こえてきて、やけにがちゃがちゃしていて、すごく賑やかです。CDクレジットを見た範囲で紹介すると、toy piano / トイピアノ、soprano recoder / ソプラノリコーダー、flexatone / フレクサトーン、samba whistle / サンバホイッスルなど、ちょっと聞きなれない楽器もありますが、色んな楽器が使われているようです。

 

しかし、それでいてメンバーの演奏などはしっかりとロックで、何ていうかそれらが妙にマッチしていて、聴いていて楽しい曲になっています。

 


■歌詞についても、結構遊んでいる感じなので、基本的には、あまり意味にとらわれることなく、言葉の持つリズム感や、ところどころで踏まれている韻を楽しんで聴くのが、結局は一番良いと思います。

 


あいつは何だ でっかい方のマンタ
しばらく会わないうちに 素敵になってジェラシー
風来坊のメッセージ 不思議な縁で
化けの皮全て脱いで 見つめ合った春の日

 

まず、こんなAメロで曲は始まります。”マンタ”(大きなエイのこと?)など、意味がよく分からない部分もありますが、そのまま言葉を拾っていって繋いで物語を妄想してみました。

 

(おそらく男性目線で)久しぶりに会った女性が、”しばらく会わないうちに”とてもきれいになっていて驚いた、という場面ですよね。ここからは、かつて自分が所属していたクラスや部活・サークルなどの旧友たちと久しぶりに会う、同窓会や飲み会みたいなものをイメージしました。

 

あとは、”素敵になってジェラシー”という言葉について、どういう場合にジェラシー(嫉妬)を感じるか考えてみた時に、例えば、再会すると綺麗になっていた女性が、かつて付き合っていた女性だった、とかだったら、あの時別れるんじゃなかったなぁとか思うかもしれません。

 

”ジェラシー”という言葉をもっと考えたら、その女性には付き合っている人が居たり、何なら、再会したらもうすでに結婚していた、とかだったら、余計に”ジェラシー”を感じるかもしれませんね。

 


■さらに続きを読んでいくと、2番のAメロではこうなります。

 


粟 稗 コーリャン 対象外のオーラ
出会っちゃいけない二人 燃え上がってランナウェイ

 

”粟 稗 コーリャン”の意味は、またしてもよく分からないですね…”粟”(あわ)はイネ科の植物、”稗”(ひえ)もイネ科の植物、”コーリャン”は中国語でいうところのモロコシを表すので、ひょっとしたら、ちょっと卑猥?男性器の比喩か?

 

そして結局、後半の”出会っちゃいけない二人 燃え上がってランナウェイ”に行き着きます。久々に出会った二人でしたが、燃え上がっちゃったんですね、笑。ということは、女性に再会して”綺麗になったな”と思った男性側だけでなく、女性の方もまんざらではなかったということですかね。

 

”出会っちゃいけない二人”という表現があるように、やっぱり、女性が結婚していた(あるいは、男性側も結婚していた)という状況のイメージが、余計に浮かび上がってきました。

 


ということで、物語をまとめてみます。例えば、こんな感じ…

 

付き合っていた過去がある男女が、時が経って、同窓会などで再会しました。女性の方がすっかり綺麗になっていて、男性の方は驚きます。しかしながら、女性の指には指輪が…女性は、もうすでに誰かの物になっていたのです。ああ、こんなにきれいになるんだったら、手放さなきゃよかったなと、男性の方は後悔、女性の心を射止めた男に嫉妬します。

 

しかし他方、女性の方も、まんざらではないようで、男性に再会して、心が揺れ動きます。

 

ということで、再会した2人は燃え上がり、もう”粟 稗 コーリャン”状態でランナウェイ状態ですよ(?)。恋人として付き合っていた時を思い出して、しかも、不倫などというふしだらな関係だったとしたら、余計に燃え上がるでしょうね。

 


■ということで、最後にサビを見てみます。

 


祝い風に舞う 黄色い花びら
もう恋なんてしない とか言ってたのに
ゴミ箱キラキラ ちょい新しいな
ゲスな指先 甘辛い ガラクタ ラブストーリー

 

ここも、これだけ見ると、何かキラキラしていて、恋のはじまりの喜びを歌っているようにも読めますが、やっぱり全体で読んだ感じがあるので、一筋縄で読むことができません、苦笑。

 

タイトルにもなっている”ガラクタ”という言葉が出てきていますが、どういう意味合いで使ったんですかね、”ガラクタ ラブストーリー”ってつながりも妙ですけどね。

 

何ていうか、そういうもの(先述のような不倫など)への皮肉っていうんですか、そういう気持ちを、草野さんが忍ばせたんでしょうか。

 


”ゲスな指先”という言葉とかね…ゲスな指先…ゲスな…ゲス?ゲス!?

 

はい、ということで、この歌は、あの”ゲス不倫”を皮肉っているのではないか?という解釈も、巷では少し広まっています…いや、時々見かける程度ですかね。

 

まぁ、先述のような歌のテーマと、この歌が”ゲス不倫”があった当時に作られた歌だということ、そして、ここにズバリ”ゲス”という言葉が出てきていること…これらを繋げて、そういう解釈が生まれたということだと思います。僕は、あんまり繋げて考えることはしませんでしたが…果たして。

アルバム講義:6th Album『ハチミツ』

ハチミツ

6th Album『ハチミツ』
発売日:1995年9月20日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.ハチミツ
→ 131時限目:ハチミツ - スピッツ大学

 

02.涙がキラリ☆
→ 120時限目:涙がキラリ☆ - スピッツ大学

 

03.歩き出せ、クローバー
→ 11時限目:歩き出せ、クローバー - スピッツ大学

 

04.ルナルナ
→ 202時限目:ルナルナ - スピッツ大学

 

05.愛のことば
→ 2時限目:愛のことば - スピッツ大学

 

06.トンガリ'95
→ 106時限目:トンガリ'95 - スピッツ大学

 

07.あじさい通り
→ 6時限目:あじさい通り - スピッツ大学

 

08.ロビンソン
→ 203時限目:ロビンソン - スピッツ大学

 

09.Y
→ 206時限目:Y - スピッツ大学

 

10.グラスホッパー
→ 45時限目:グラスホッパー - スピッツ大学

 

11.君と暮らせたら
→ 41時限目:君と暮らせたら - スピッツ大学

 


■前作『空の飛び方』からちょうど1年後に、六枚目のアルバム『ハチミツ』は発売されました。このアルバムで、ますますスピッツは、栄華を極めます。

 

まず、このアルバム『ハチミツ』で以って、アルバムにおいては、初のオリコンチャート1位を獲得しました。結果、数あるスピッツのオリジナルアルバムの中で、このアルバム『ハチミツ』こそ、一番売上枚数の多いアルバムになりました(どの時点での数字か、169万枚という数字を見つけました。)

 

収録曲には、シングルで一番の売上枚数を記録した【ロビンソン】、惜しくも100万枚には及びませんでしたが、これもスピッツの人気曲である【涙がキラリ☆】、シングル候補曲でもあった【愛のことば】、スピッツスピッツファンにとっては重要な楽曲【トンガリ'95】など、まさにスピッツの代名詞とでも呼ぶべき曲が、これでもかと揃っています。

 


売り上げが波に乗っていたのは明らかですが、書籍やネットの情報などで、”この頃の自分たち(スピッツ)はノリに乗っていた”であるとか、”(ハチミツは)満足のいく出来”などの言葉もよく見かけることができます。

 

そして、どうやらこれ以後、アルバム『ハチミツ』の出来映えが、良い意味で(悪い意味でも?)ひとつの壁、ひとつの基準として機能するようになっていたようです。例えば、アルバム『色色衣』に同封されている「色色衣座談会」において、

 


草野「それまでは『ハチミツ』っていう壁があって。『ハチミツ』の音がいいって思うのは、単にその時俺らがいちばん輝いていたからなのか、とかそういうネガティブな(笑)。」

 

草野「…俺らだけとかじゃなくって、笹路さんや宮ちゃんも乗りに乗っている時にたまたま当たったのかな、とか。その後ミックスがだんだん満足行かなくなってきたのは、俺の声が変わってきて、ミックスしにくくなっているのかな、と自分の声のせいにするようになってもいたので。」

(※笹路さん=アルバムのプロデューサーの笹路正徳さん、宮ちゃん=エンジニアの宮島哲博さん)

 

と語っています。自分たちが手掛けた作品が良い評価をされたことで、気持ちも乗ることは、当然のことでしょうね。しかも、このメンバー(笹路さん、宮島さん)は、前作『空の飛び方』も手掛けているので、チームで得た名誉ということで、なおのことだったでしょう。

 


■僕が『ハチミツ』に出会ったのは、前作『空の飛び方』同様、僕がスピッツを好きになった初期のことです。僕が小学生の時に、この『ハチミツ』は発売になったようですが、多分中学生の時に初めて聴いたと記憶しています。前作の『空の飛び方』同様、子どもの頃の記憶がよみがえる作品の一つです。

 

子ども心に、まずこのアルバムに対して抱いた印象は、”かわいらしいアルバム”というものでした。

 

タイトルがまず、かわいらしいですよね。アルバムタイトルの”ハチミツ”はもちろん、”ルナルナ”とか”トンガリ'95”とか”涙がキラリ☆”の☆マークとかもそうですけど、そういう部分にも引っ張られて、”かわいらしい”アルバムという印象を得たのかもしれません。

 

歌詞はともかく、メロディーや楽器の演奏が優しい曲が多い印象なんです。荒々しいロックな曲と言えば、【トンガリ'95】と【グラスホッパー】くらいじゃないですかね。

 


■しかし、思い返してみると、このアルバムが発売になった1995年は、地下鉄サリン事件、そして、阪神淡路大震災という、2つの凄惨な人災と天災があって、日本中が悲しみに包まれた年でした。僕も、子ども心にですが、とんでもないことが起こっているんだ、ということは理解していました。

 

そういう悲しい出来事に包まれた日本や人々に寄り添って、元気づけるために作られたような曲が、このアルバム『ハチミツ』に入っています。

 

例えば、映画「フォレスト・ガンプ」を見て日本を思い、”幸せ”や”生きること”をテーマに歌った【歩き出せ、クローバー】、巷では”反戦歌”という解釈が広まっていますが、これも人の生き死にを歌ったような節がある【愛のことば】、個人的には【Y】なんかも、大きくこちらのテーマが含まれているような気がします。

 

そして、歴史的名曲【ロビンソン】に関しても、歌の内容については全然違うことを歌っている印象ですが、当曲のレコーディングが、まさに阪神淡路大震災が起こった日に行われたという秘話があり、そういうことだったんだと改めて【ロビンソン】を聴くと、色々と感じることが変わってきます。

 



だんだん解ってきたのさ
見えない場所で作られた波に
削りとられていく命が

【歩き出せ、クローバー】より

 


雲間からこぼれ落ちてく 神様達が見える
心の糸が切れるほど 強く抱きしめたなら

【愛のことば】より

 


やがて君は鳥になる ボロボロの約束 胸に抱いて
悲しいこともある だけど夢は続く 目をふせないで
舞い降りる 夜明けまで

【Y】より

 

何かこういうドキっとするような、胸に刺さるような歌詞が、ところどころに出てきて、現実の世界にふっと引き戻されるんです。

 


■これまでのスピッツのアルバムは、書籍などを見ても、草野さんの思想に基づいた、ファンタジーや妄想による歌が多かったように思えます。前作『空の飛び方』にしろ、さらにさかのぼって『Crispy!』や、『惑星のかけら』なんてのはいかにもって感じがしますよね。

 

もちろん、『ハチミツ』にも相変わらずそういう曲は多いと思いますが(ちょっとエッチな曲が多いか?笑)、気持ちとしては、これまでの閉じた世界ではなく、外へ向かって開いている、という印象も受けます。

 

これは僕の想像もあるけれど、先述の通り、日本で色んなことがあった時代に、少しでも寄り添おうとした結果でもあったのではないだろうか。あるいは、スピッツという名前が日本に広まっていった中で、自分たち(スピッツや、引いては、スピッツチーム)が見てる世界が大きくなっていって、そこへ向けて歌うようになったということもあるかもしれない。

 

だから、『ハチミツ』という作品は、今までの作品と比べ、より現実に近い(ところを歌っている)作品だとも言えるかもしれない。



草野「『わかる奴にだけわかればいいよ』っていうのから、『結局わかんない人はいないんだ』っていうとこにもっと近くなってきたんじゃないかな。今は聴き手の顔も何となく見えるし。そう考えると『ハチミツ』っていうのは、空を飛ぶということから一歩こう歩み出た形かなぁ。…」

 

(【歩き出せ、クローバー】についてのインタビューにて)
草野「『フォレスト・ガンプ』にしても、アメリカっていう物に恵まれた社会で生活してきた人が、戦場でいきなり生きるか死ぬかの場面に立たされたわけで。僕らにいつそういうことがいつ起こってもおかしくないっていう風に思ったし、俺は大ケガしたことも手術したこともないから、なんか弾丸の痛みって耐えられるのかなって。…」

 

書籍「旅の途中」で、このように草野さんが語っていますが、特に後者の話なんかは、先程の阪神淡路大震災サリン事件に通じる想いを感じますが、現実に起こったことに対して影響を受けた部分も大きかったんだろうかと想像します。

 


子ども心に感じたかわいらしさは未だに感じつつも、大人になるにつれて、何ていうか、その裏に隠された現実や悲しみ、そして、その悲しみに寄り添おうとした草野さんの想い…そういうものを(少しは)想像することができたから、今はそういう”二面性を感じる”アルバムという感想に落ち着きました。

 


■ちなみに。

 

1995年に発売になった当アルバム『ハチミツ』の発売20周年を記念して、『ハチミツ』に収録されている曲に【俺のすべて】を加えた12曲を、様々なアーティストがトリビュートした、トリビュートアルバム『JUST LIKE HONEY ~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~』が発売になりました。

 


曲とカバーアーテイストだけ紹介しておきますと、

 

01. ハチミツ / 赤い公園
02. 涙がキラリ☆ / 10-FEET
03. 歩き出せ、クローバー / NICO Touches the Walls
04. ルナルナ / 鬼龍院翔ゴールデンボンバー
05. 愛のことば / indigo la End
06. トンガリ'95 / LAMP IN TERREN
07. あじさい通り / クリープハイプ
08. ロビンソン / 9mm Parabellum Bullet
09. Y / GOOD ON THE REEL
10. グラスホッパー / ASIAN KUNG-FU GENERATION
11. 君と暮らせたら / 初恋の嵐 feat. 曽我部恵一
Bonus track. 俺のすべて / Scott Murphy

 

となっています。どの曲をどのアーテイストがカバーするか、その組み合わせを全て当てるという企画があったりして、それなりに盛り上がったりしました。

 

このアルバムに関しては、このブログで以前取り上げたことがありますので、良かったらそちらも参考にしてください。

→ 特講:「JUST LIKE HONEY ~『ハチミツ』20th Anniversary Tribute~」を聴いて - スピッツ大学

 

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アルバム講義:5th Album『空の飛び方』

空の飛び方

5th Album『空の飛び方』
発売日:1994年9月21日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.たまご
→ 89時限目:たまご - スピッツ大学

 

02.スパイダー
→ 77時限目:スパイダー - スピッツ大学

 

03.空も飛べるはず(Album Version)
→ 82時限目:空も飛べるはず - スピッツ大学

 

04.迷子の兵隊
→ 166時限目:迷子の兵隊 - スピッツ大学

 

05.恋は夕暮れ
→ 51時限目:恋は夕暮れ - スピッツ大学

 

06.不死身のビーナス
→ 151時限目:不死身のビーナス - スピッツ大学

 

07.ラズベリー
→ 197時限目:ラズベリー - スピッツ大学

 

08.ヘチマの花
→ 154時限目:ヘチマの花 - スピッツ大学

 

09.ベビーフェイス(Album Version)
→ 155時限目:ベビーフェイス - スピッツ大学

 

10.青い車(Album Version)
→ 4時限目:青い車 - スピッツ大学

 

11.サンシャイン
→ 61時限目:サンシャイン - スピッツ大学

 


■僕は個人的に、スピッツの活動時期をアルバム単位でいくつかに分けているのですが、例えば、第1期というと、1st『スピッツ』~4th『Crispy!』を位置付けています。

 

そして、この5th『空の飛び方』からは、スピッツの活動は、第2期へと差し掛かったと感じます。

 

何と言いますか、第1期を「スピッツの誕生と不遇の時代」とでも名付けるとしましょうか。すると、第2期はまさに「スピッツの黄金期」とでも言えますかね、”全盛期”と言うと嫌がられそうですが、売上などの数字を見ても、そう言えるのではないでしょうか。

 


まず、前作『Crispy!』の売上枚数が、10万枚に満たなかったのに対して(いつの時代の数字か分かりませんが、9.6万枚という情報を得ました)、今作『空の飛び方』はおよそ90万枚…売上枚数は、驚きの約10倍にまで跳ね上がりました。そして、オリコンチャートインしなかった『Crispy!』に対して、『空の飛び方』は14位にチャートインしました。

 

それから、これはアルバムが発売になって時間が経ってからですが、収録曲の【空も飛べるはず】が、シングルとして爆発的なヒットを記録します。売上枚数は150万枚くらいでしょうか、とにかく100万枚は大きく上回りました。これは、スピッツシングルの中では、第3位の売上枚数となっています。

 

アルバムに入っているシングル曲は、【空も飛べるはず】の他、【スパイダー】と【青い車】がありますが、シングル『君が思い出になる前に』以降のシングルが、”マイアミショック”の曰く付きベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』に入ったんですよね。だから、ベスト盤で聴くことが出来る、この辺りのシングル曲から、劇的に認知度が上がったんじゃないでしょうか。

 


かくいう僕自身も、シングル『チェリー』でスピッツにハマったのですが、その辺りを起点として、新しいアルバムを聴き進めていきながら、逆に、作品をさかのぼっていきました。

 

それで、最初に僕がさかのぼったのが、ひとまずこのアルバム『空の飛び方』まででした。それ以前にさかのぼるまでは、ここで一旦時間が空くのです。なので、僕のスピッツの初期の記憶は、アルバムでいうと『Crispy!』と『空の飛び方』の間に一線引かれて区切られています。

 

僕は、中学生の時に『空の飛び方』を聴いていたので、かれこれ20年以上の付き合いですよ。これ聴きながら、高校受験の勉強をしてましたからね。そんな時に、”ただ君のヌードを ちゃんと見るまでは僕は死ねない”なんて陽気に歌ってくるんですから、「ヌード…ヌード…」ってそりゃ悶々としてきて、ペンを握るんじゃなくて…って何を言ってるんだ。

 


■アルバム『空の飛び方』のプロデューサーは、引き続き笹路正徳さんです。この頃にはもうすでに、スピッツと笹路さんがかなり打ち解けていることを、書籍「旅の途中」を読んでいても感じ取ることができます。”笹路学校”なんて言葉もあり、何ていうか、先生(笹路さん)と生徒(スピッツメンバー)の関係に近かったのかなって、読んでいて思いました、何となく微笑ましいですね、笑。

 

書籍「旅の途中」には、たくさんのエピソードが書いてあるのですが、読んでいて印象に残ったエピソードを、一つ載せておきます。

 


アルバム『空の飛び方』のレコーディングの際、アメリカからエンジニアをお願いしてみよう、ということになり、ポールという人に、アルバムのミックスダウンをしてもらったそうなのです。

 

ところが、このポールのミックスダウンについては、メンバーが納得いく音では無かったようです。しかし、アメリカからわざわざ呼んでもらったエンジニアに対して申し訳ないと、メンバーは何も言えずに口を閉ざしてしまいます。その様子に、笹路さんも気づいたようで、「バンドとして言わなきゃダメだ」とメンバーに進言したそうです。

 

結局、スピッツメンバーはちゃんとポールに意見を述べて、つまりミックスを断って、レコーディングにも携わっていた宮島哲博さんのミックスの方を採用したのだそうです。
(※宮島哲博さん…調べてみましたが、自分の好きな・ある程度は知っているアーティストだと、GRAPEVINEGOING UNDER GROUNDCoccoTHE HIGH-LOWSなどを手掛けているようです!)

 



 いま思えば、このときがスピッツの分岐点の一つだった気がする。バンドとして、意思を持って決断していく覚悟のようなものができた最初の出来事だった。

 

リーダーは、書籍の中でこのように語っています。”笹路学校”の中で、スピッツメンバーが、音楽的にだけではなく、プロのミュージシャンとしての考え方などを、この時期に急激に学んで吸収していって(吸収しようとしていって)、大いに変化・成長していったことを読み取ることができます。

 


■さて、そんな『空の飛び方』はどんなアルバムなのか、考えていきます。

 

まず、4th『Crispy!』は、前回書いた通りですが、「売れる!」という目標を立てて、ポップな作品を目指して作られました。それは、スピッツメンバーや笹路さんのねらいとするところではあったのですが、”よりポップに!”と多少無理をし過ぎたせいで、スピッツ本来のギターを中心としたバンドサウンドからは離れていきました。

 

一方で、今回の5th『空の飛び方』は、スピッツ本来の、ギターを中心としたバンドサウンドに戻すことを方針として作られたそうです。

 


個人的な感想を言わせていただくと、色んな意味で”ちょうどよくなってきた”のがこの頃なんじゃないかなって思っています。

 

本来のサウンドに戻るといっても、今までの作品に比べると、『空の飛び方』も十分ポップなんですよね。ただし、そこには『Crispy!』の時に感じた、無理してる感というものは感じなくて、板についてきたと言いますか、そのポップさを自然に感じることができるのです。何ていうか、一言で言うと”聴きやすい”んです。

 

書籍にもそういう表現がありましたが、余計な音が入っていなくて、1曲1曲が軽く感じるんです。ホーンやストリングスの音がたくさん鳴っていて、派手な曲も、それはそれで聴いていて楽しいんですけど、ギター・ベース・ドラムというシンプルな演奏が、草野さんのボーカルを引き立たせるという、本来のスピッツのサウンドに戻り、でもちゃんとポップなスピッツも継承されて、それらがちょうどよくミックスされていったのが、ちょうどこの頃なのかなという感じです。

 


これぞギターロックといえば、例えば、【スパイダー】や【不死身のビーナス】や【青い車】辺りでしょうか。疾走感があって、ギターの音が前面に押し出されていますよね。最近のライヴでやっても、すごく盛り上がる曲ばかりだと思います。

 

一方で、ゆっくりと聴かせる曲も入っていて、例えば、名曲【空も飛べるはず】、大人になってより好きになってきた【サンシャイン】、個人的に好きな【たまご】や【ラズベリー】など(どうかな、これら2曲は割とロックな部類に入るのかな)があって、ロックナンバーとのバランスを取っています。

 


■では、アルバムの精神的な部分(込められた想いなど)はどうでしょうか。

 

何と言っても、タイトルの”空の飛び方”ですよ。スピッツが(草野さんが)作る歌詞の中で、”飛ぶ”という言葉は、よく出てくる表現の一つであり、重要な意味を持っている言葉だと思うのですが、それらのことは、書籍「スピッツ」においても草野さんが語っておられます。

 


草野「(アルバムタイトルを)初めは『飛び方』にしようとか言ってたんだけど、字面がイマイチっつうのがあって『空の飛び方』にしたんですけど。まぁ、昔から”飛ぶ”っていうのをテーマにしている部分が多いし」

 


それから、”飛ぶ”という言葉の、草野さん自身の概念について、

 


草野「これはもう幽体離脱ですよ(笑)。まあ瞑想でも夢でも宗教でもなんでもいいんですけど、もっと荘厳なイメージというか」

 

という風にも語っています。

 


僕個人的には、スピッツの歌詞の中に出てくる”飛ぶ”(類義語として”浮かぶ”とか”越える”とか”渡る”とか)という言葉については、物理的に飛ぶのではなくて、いわゆる”精神的にトブ”ということを表していると考えています。

 

さらに具体的に、大きく分けて2つの意味合いとして使っているのではないかなって考えています。

 


■一つ目
「魂や精神が(あの世へ)トブということで、”成仏”…もっと簡単にいうと、”死”を表している」

 

例えば、『空の飛び方』の楽曲だったら、すっかり心中の解釈が定着してしまっている【青い車】などがありますかね。”そして輪廻の果てに飛び下りよう”という表現が出てきますが、この場合は”飛び下りる”なので、(心中の解釈に基づくとすると)”車で海に飛び下りる”などにもかかっていると思いますが、”輪廻の果て”という言葉が引っ付いていて、いかにも、この世のしがらみを越えて、”あの世へトブ”という表現になっていると考えることができます。

 

アルバム外の曲だったら、個人的にこっち側の解釈をしたのは、例えば、【ローランダ―、空へ】【ワタリ】【漣】【タンポポ】などをすぐに思い出しました。直接”飛ぶ”という言葉が出てきていなかったり、違う言葉に置き換わったりしていますが…もっとたくさんあると思います。

 


■二つ目
「喜びのあまり、気持ちが天にもトブような気持ちになる…として、しばしば、性的に”快楽”に溺れることや、”絶頂”に達することを表している」

 

個人的に、【空も飛べるはず】はこっち側に位置付けているのですが、どうですかね。”君と出会った奇跡”によって、”空も飛べるはず”という心地になったということで、何ていうか、全てが君と出会ったことによって救われた気持ちになり、そういう喜びのあまりに、心が浮ついて天にも昇ってしまいそうだ、という解釈を当てはめました。

 

我々人間は(とりわけ日本人?)は不思議なもので、何か素晴らしい・喜ばしい出来事に直面したときに、”ああ、天にも昇る気持ちだ!”、”もう死んでも構わない!”なんて言ったり、思ったりしますよね。何か、そういう感覚に”飛ぶ”という言葉を当てはめたのかなって考えたりします。

 


■という風に考えていくと、”精神的にトブ”という意味では、一つ目の考え方も、二つ目の考え方も、根本的には同じなんじゃないかと思えてきます。2つは表裏一体であり、つまりは、草野さんの詩のテーマである、”死とセックス”を表しているのだということですね。

 

色んな”飛び方”があるということで、そういう意味を含めて、インタビュアーはこのアルバムを、「飛び方の11の方法」という風に表現なさっていました。

 

それを受けて、草野さんは”再現フィルム”という、これまた絶妙な言い方をなさっていました。車で海に飛び込んだりする【青い車】、女の子をさらって逃げたりする【スパイダー】、挙句の果てには、”君のヌードをちゃんと見るまでは僕は死ねない”なんて言っちゃったりする【ラズベリー】など、ぶっ飛んだ”再現フィルム”もありますが…。

 

まぁとにかく、頭の中の妄想では自由に、どこでも行けるし、何だってできるし、何にだってなれる…ということで最終的には、この作品は、”空を飛ぶ夢”を見ている感じに近いのかなって思ったりします。

 

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214時限目:みなと

【みなと】

 

みなと

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  • provided courtesy of iTunes

 

■41作目のシングル曲です。アルバム『醒めない』にも収録されています。

 

シングル『みなと』は、前作『雪風』が配信限定シングルとして発売されてから、およそ1年後に発売されました。

 

もう1作さかのぼってみると、シングル『さらさら / 僕はきっと旅に出る』からは、実におよそ3年の月日が流れたことになりますが、『雪風』が配信シングルだったので余計に、(いわゆる従来の媒体での)久々のシングルだなって思ったことを覚えています。

 


■まず、この曲は、NTT東日本のCMソングとして使われました。

 

僕が初めて知ったのは、SNS上の仲間がつぶやいていたのを見たのがきっかけでした。どうやら、テレビCMでスピッツの新曲が流れているようだ、と。

 

情報を調べてみると、確かにスピッツの新曲が、NTT東日本のCMソングとして起用されており、テレビCMで流れているようでした。しかし、僕が西日本に住んでいるからなのか(?)、まだそのCMを一度も見たことがありませんでした。

 

そこで、僕はいち早くその曲を聴くために、NTTのサイトを訪れて、CMの動画を見たのでした。確か、イチローが起用されていたCMでしたよね。そして、バックには、仲間が言った通り、件のスピッツの新曲が流れていました。

 

短いCMでしたが、それだけでも、僕には名曲の予感がしました。何となく【ビギナー】(こちらも、ゆうちょ銀行のCMソングに起用されました)を思わせる、重厚で壮大なバラードのように感じたのを覚えています。

 


ただし、CMが発表された当初は、確かにスピッツの新曲ではあったのですが、その時は曲名までは発表されておらず、謎の新曲として話題に挙がっていました。

 

そこから程なくして、その新曲の名前が”みなと”で、シングルとして発売になるという情報や、MVが解禁になりました。

 


■それから、シングルが発売になった頃、珍しくミュージックステーションスピッツが出演しました。調べてみたところ、実に3年ぶりの出演だったそうです。

 

僕も、この時のMステはリアルタイムで見たんですが、この出演がまた、今でも語り継がれる出来事となったんです…。

 


まず、とにかく久々のMステ出演ということで、草野さんとタモリさんの共演自体すごく新鮮に感じました。久々のトークにて、「好きな港」というマニアックなテーマに、タモリさんと草野さんが花を咲かせた後、いよいよスピッツの演奏が始まります。曲目はもちろん【みなと】です。

 

琴線に触れる、綺麗なイントロで曲が始まります。そして、程なくして、草野さんが歌いはじめます。ちょっと緊張していたのか、その声は少し震えて聴こえたような気がしました。

 

…しかし、何かがおかしい。草野さんがそわそわして、歌うのを止めて、三輪さんの方を見ます。

 

何と、草野さん、歌い出しを間違えちゃってたんです!【みなと】のイントロは、4拍子が8回繰り返された後(表現の仕方あってますかね?)草野さんのボーカルが入るのですが、4拍子が4回繰り返された後、歌い始めてしまったんです。

 

三輪さんと顔を見合わせて、照れ笑いする草野さん。よく聞けば、「間違えちゃった…」という言葉も聞こえました、笑。その後は、草野さんも気を取り直し、最後まで順調に歌いましたが、そこからは、文句なしに素晴らしかったです。

 


という、何とまぁ…ほっこりとした、草野さんらしい(のかな?)出来事でした、笑。

 


■ちなみに、そのMステ出演においては、僕としては、スカートの澤部さんが出たのも印象に残りました。

 

【みなと】の間奏には、これも印象的な口笛の演奏が入っているのですが、その口笛を担当しているのが(CDのクレジットで確認できます)、スカートというバンド(正確にはソロプロジェクト)のボーカルの澤部渡という人なんです。

 

演奏の時にちらちら映る、タンバリンを叩く太っちょの男性…誰なんだ!?と、これも話題になりましたが、それがまさに、澤部渡その人だったのです。スカートというバンドは知っていましたし(数曲知っている程度ですが…)、澤部さんが口笛を担当していることも知っていましたが、Mステ出演には驚きましたね。

 


■さて、【みなと】の紹介・考察をしないといけませんね、苦笑。

 

まず、タイトルの”みなと”については、言わずもがな漢字で書くと、”港”のことですよね。歌詞の中にも、”港”という言葉は何度も出てきます。

 


船に乗るわけじゃなく だけど僕は港にいる
知らない人だらけの隙間で 立ち止まる

 


君ともう一度会うために作った歌さ
今日も歌う 錆びた港で

 

それぞれ、出だしの歌詞と、サビの歌詞です。

 

”船”という言葉が使われているので、当たり前ですが、いわゆる一般的な船の発着地点としての港を思い浮かべるわけですが、何ていうか、精神的な意味も含めているような気がします。

 


■もう少し、歌詞を抜き出してみます。

 


遠くに旅立った君に 届けたい言葉集めて
縫い合わせてできた歌ひとつ 携えて

 


消えそうな綿雲の意味を考える
遠くに旅立った君の 証拠も徐々にぼやけ始めて

 


すれ違う微笑たち 己もああなれると信じてた

 

この辺りを読んでいくと、何となくこの歌が歌っていることが分かってくるよな気がします。

 


”君”は”僕”の元を離れて、何処か遠くへと旅立っており、そんな”君”にもう一度会えるように、”君”のために作った歌を携えて、”僕”は港でずっと独りで待っているというわけですね。

 

”遠くに旅立った君の 証拠も徐々ぼやけ始めて”というフレーズや、”錆びた港”という言葉は、時間経過も表していると感じます。”僕”が”君”を待って、長い時間が経過していると。

 

”港から旅立つ”ということで、例えば、自分の夢のためにだとか、就職や進学のためなど、理由は様々考えられると思いますが、とにかく”君”は船に乗って、”僕”と過ごした場所を離れて旅立った、と考えることが普通かもしれません。それでも、この物語は成立するように思えます。

 


■ただ、やっぱり色んなことを想えば、”君”は亡くなっており、もう二度と会うことはできないと分かった上で、”僕”は”君”を待っているという解釈へとつながっていきます。

 

つまり”君”はすでに亡くなって、”あの世”へと旅立ったと…そういうことになります。だからこの場合の”僕”は、待っている、という言葉よりは、”その場所に(精神的に)縛り付けられていて、どこへも行くことができない状態”という方が、悲しいけどしっくりきます。

 

そして、そういう解釈の根底にあるのが、まぁネット上でも多くの人が解釈している通り、この歌と東日本大震災との関連ですよね。

 

ここスピッツ大学でも、前作『小さな生き物』については、東日本大震災との関連を指摘しつつ紹介してきたのですが、アルバム『醒めない』についても、未だ震災との関連は、形を変えつつも残っていそうです。

 


これから、ここスピッツ大学でも本格的に、アルバム『醒めない』の紹介に入っていくわけですが、この頃の草野さんは、作品のテーマとして、「死と再生」を挙げています。

 


草野「まぁ、『小さな生き物』が旅に出る前の不安と期待が入り混じったアルバムだとすると、”雪風”は再生を匂わすものになっていたと思うんで、そういう意味ではアルバムのスタートにはなっていると思いますね。」

 


草野さん「前のアルバムを客観的に聴いた時に、不安感の強いアルバムなのかなっていうのは思って。(中略)……結果的にそこまでにはなっていないんですけど、再生の物語みたいなものを匂わせるコンセプトで作ってもいいかもって思ったところはありましたね。」

 

これらは、アルバム『醒めない』発売直後のMUSICA(珍しく購入した、笑)において、草野さんが語ったことですが、この考え方は、そのまま【みなと】にもつながっていると考えることができそうです。

 


■港という場所は、本来は”旅立ちの場所”や”帰ってくる場所”ですが、”船に乗るわけじゃなく”と冒頭から歌われていることからも、大切な人を亡くし、残された当人は旅立つことができずに、合わせて、いくら待っても亡くなった人も帰ってくるわけではないので、待っているということは、健気なようで、実は何も救いがないんですよね。

 

それでも、【みなと】がアルバムの2曲目であることは、何か考えさせられます。1曲目の表題曲【醒めない】は、アルバムの表表紙的な曲だと思っているので、物語の始まりとしては、実質はこの【みなと】であると考えています。

 

あまりそういうものにはなっていない、としつつも、草野さんはアルバムで一貫した再生の物語を描こうとしました。とすると、この曲の役割は、”再生の入り口”といったところでしょうか。ここから、再生の物語が始まるわけですね。

 

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スピッツ大学 節目に思うことと、今後の展望

■平素より大変お世話になっております、キャラを忘れた頃に、どうもスピッツ大学の学長itukamitanijiでございます。

 

最近、めっきり暑くなってきましたね。今年もまた、暑くて長い夏がやってきますよ。学生の諸君も(きっと、私も含めて、そう若くないおじさんおばさんも多いでしょうし…苦笑)、どうぞお体に気を付けて、乗り切っていただきたいと思っております。

 

 

■さて早速、本時の話題に入らせていただきます。

 

ここスピッツ大学についてですが、2015年7月25日が初めて講義をした日(初めて記事をアップした日)なので、早いものでもうすぐ3年という月日が流れることになるわけです。

 

そして、そのスピッツ大学での核となる講義として、”スピッツ全曲研究セミナー”があります。これは、その講義名の通りになりますが、スピッツの楽曲全てを、1曲1曲紹介・考察していくというものです。当初から、何とも長期に渡る講義を始めてしまったな、と思ったものです。

 

楽曲を五十音順に紹介していき、ワ行の曲まで紹介しつくして、インスト曲の紹介も終えて、現在リアルタイムでは、ボーナストラック的な曲の紹介として、「213時限目:あかさたな」まで紹介しつくつしたところでございます。

 


講義を始めた2015年7月時点(以下、単に”当時”と書きます)でのスピッツの作品リリース状況は、最新アルバムは『小さな生き物』であり、最新作として配信限定シングル『雪風』が発売されたところでした。

 

当然、後に発売される、シングル『みなと』、アルバム『醒めない』、シングルコレクション、その他映像作品などは、発売はおろか、当時はそのリリース情報すらまだ世に出ていない状況だったので、このスピッツ大学で講義をしていく中で、続々と情報が解禁され、そして随時発売されていきました。

 

その時その時、新曲が出る度に、その曲を紹介していってもよかったのですが、ここスピッツ大学の全曲研究セミナーについては、当時の最新作である、シングル『雪風』までの曲に絞って、そこまでの全曲をまず紹介しようとあらかじめ決めていたので、そのようにしました。(ちなみに例外として、【1987→】は、30周年記念記事として紹介済みです。)

 

 

■これらのことを踏まえると、先述した全曲研究セミナーの最新講義、「213時限目:あかさたな」で以って、一応は”当時取り決めた全曲”を紹介し切ったことになるわけなのです。つまり、全曲研究を、ここで一旦は達成したことになるわけです!

 

これに関しては、自分勝手ながら、とても満足しています。きっと、前のように、どこか途中で飽きちゃうんだろうな、とか思いつつやってきたので、一応はこんな自分でも、ひとつのゴールにたどり着けたという気がして、感慨深く感じているわけです。

 


飽きないでここまで続けられた、一番の大きな理由は、他でもありません、スピッツ大学を訪れてくださった、皆様が居たからでございます。


私自身は、ただ”スピッツ”と”文章を書くこと”が好きなだけで、このブログは無償で書き続けているので、別にたくさんの人が読んでくださっても、何か利益を得るわけではないのですが、やはり、読んでくださっている人がいることは嬉しいことなのです。そして、それが続ける励みにもなるのです。

 

別にスピッツファンではなくても、色んな境遇でここに辿り着いた方も居られるかと思いますが、そんなことはどうだっていいのです。

 


私はつまり、”今そこに居るあなた”にお礼が言いたいのです。本当にありがとうございます。

 

 

■しかし、まぁ何が言いたいか、きっとお分かりですね…達成できたことに関しては、大きな節目と考えて間違いないのですが、これらは全て”当時”のお話なのです。

 

”全曲”は常に更新され続けています。それは、スピッツが活動し続ける限りです。スピッツが、草野さんが、もう曲は作らないよ!活動しないよ!と言わない限り、ずっと続いていくのです。私達は、それが出来るだけ長く続いていくことを、願うばかりですが…。

 

大きな節目は大きな節目として嬉しいのですが、スピッツ風に言いますと、まだまだここは”旅の途中”に過ぎないんですね。

 


というわけで…


スピッツ大学、まだ続きます!勝手ですが、まだ書いていきたいことがたくさんありますので、今後ともよろしくお願い致します。

 

 


■では最後に、少し具体的に、これからの予定などを載せておきます。予定は予定ですので、変更・追加はあるかもしれませんので、あらかじめご了承ください。

 


スピッツ全曲研究セミナー

 

先述の通り、シングル『雪風』までの楽曲は、全て紹介したことになりますので、これ以降の楽曲を紹介していきます。

 

それで、ここからは楽曲紹介の順番を、”五十音順”から、”楽曲が発表された順”に変更いたします。そして、アルバム内の曲に関しては、収録順に沿って紹介していきます。

 


スピッツ全アルバム研究セミナー

 

現時点では、4thアルバム『Crispy!』まで紹介済みです。当然、アルバム順に、残り全作品を紹介していきます。


スペシャルアルバム(今のところは、3作品ですかね)は紹介しますが、シングルコレクションについてはどうしましょうか、あまり乗り気ではないですが、ちょっと考えてみます。多分、やらないかな…苦笑。

 


スピッツ大学ランキング企画

 

スピッツ大学ランキング企画においては、目標票数を1000人(6000pt)と設定しておりましたが、実際、まだそれには及びません。しかし、先述の通り、当時の全曲研究セミナーが終わったということで、ランキング企画で選べる全曲も、全曲研究セミナーと同じく【雪風】までで対応していたので、こちらのランキング企画もそろそろ潮時かな、と考えております。


つきましては、近いうちに締切を設けて、最終結果発表をしようかと考えております。また追って報告いたします。

 


以上、①~③は、確実にやり切ることです。

 

 

■以下、その他としては、



④映像作品の紹介

 

これはちょっとで微妙ですね、苦笑。渋っている要因は、ただ単に、私自身が映像作品の紹介が一番苦手だということなんですよ。曲の解説は好きなんですけどね、LIVE映像の紹介は、ちょっとねぇ…って感じです。これまでも、何作品かは紹介させていただきましたが、それはそれで良いとして、改めてコーナー化して全作品紹介する…ということは、正直気が進みません、苦笑。

 

ただし、後述するものと比べると、こちらは一応スピッツ作品に該当するものなので、優先順位としては高く、何ていうか、紹介しないといけないんじゃないか、という感じには今思っているところですが…うーん、考え中です。

 


⑤トリビュートアルバムの紹介

 

スピッツのトリビュートアルバムとしては、現時点では2作品、『一期一会 Sweets for my SPITZ』と『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』があります。

 

アルバム『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』については、すでに紹介済みですので、過去の記事をご覧ください。


そして、アルバム『一期一会 Sweets for my SPITZ』に関しても、いつか必ず書きます。ただし、こちらに関しては、収録曲を一曲ずつ紹介するのではなく、アルバム一枚単位で、まとめて書きたいと思っています。

 


⑥メンバーが個人で参加した楽曲の紹介

 

一番多いのが、草野さんですかね。最近ですと、椎名林檎トリビュートアルバムに参加しましたよね。あとは…何があるでしょうか、松本隆トリビュートアルバムの【水中メガネ】とか、そんなことを言い出したら、KREVAとコラボした【くればいいのに】とか、平井堅と歌った【わかれうた】はどうなるんだとか…もっと言うと、作詞や作曲で参加した作品はどうするんだ、とかなってしまいますが…苦笑。

 

他のメンバーだと何がありますかね…リーダーが参加しているMOTORWORKSとか、スピッツが演奏を担当しているYUKIの【愛に生きて】とか(これ知ってましたか?なかなか面白いですよ)、色々ありますね。

 

本当にやろうとしたら、それらの作品を全て集めないといけないことになりますね…大変です!まぁ、個人的に好きな曲くらいは(例えば、【水中メガネ】と【愛に生きて】は本当に大好きなんですが)、時々さくっと紹介しても良いかもしれませんね。ただ、大々的にシリーズ物としてやろうとは思ってませんので、そのつもりでよろしくお願いします。

 

(※基本的に、ここスピッツ大学では、当然ながら、”スピッツ楽曲の紹介”に重きを置いています。つまり、前提として、”草野正宗が作詞作曲した作品”ですね。なので、”スピッツの楽曲を他のアーティストがカバーした”は、まだ紹介したいと思うのですが、これが逆に、”スピッツが他のアーティストの曲をカバーした”や”スピッツメンバーが他のアーティストの作品に参加した”などになると、途端に紹介する気がなくなっちゃうんです…。だから、アルバム『おるたな』収録のカバー曲は、ギリギリセーフという感じですね、苦笑)

 


⑦その他のその他

 

まぁ後は、その時その時に、随時考え付いたテーマに沿って記事を書くくらいですかね。最新情報なども、気が向いたら載せたりしても良いんですが…。


あと、何かこんなことを書いてみてはどうですか?などありましたら、コメント頂きたいです。

 


ということで、優先順位としては、④→⑤→⑥→⑦ですが…今のところ、確定なのは⑤ですかね。後のものは、特に絶対やると、ここでは決めません。まぁ、④はともかくとして、どこまでを”スピッツ”とするかですよね。

 

 


■はい、ということで、長々と書かせていただきましたが、何かようやく”今のスピッツ”に、このスピッツ大学も少しずつ追いついてきたな、っていうイメージです。

 

これから紹介する曲は、最近の曲も多くなっていくと思います。次回は、スピッツが久々にMステに出たはいいが、草野さんが歌い出しを間違えてしまった、"あの曲"がいよいよ登場です、笑。

 

スピッツ大学学長 itukamitaniji記

213時限目:あかさたな

【あかさたな】

 

■アルバム『小さな生き物』のデラックスエディション盤にのみ付属された、ライヴDVD/Blu-ray”撮りおろしスペシャルライヴ at 横浜BLITZ”に、ライヴ映像として収録されている曲です。CD音源での発表は今のところなく、現時点ではこのライヴ映像でのみ聴くことができるレアな曲です。

 

このブログでも何度も取り上げていますアルバム『小さな生き物』ですが、改めて紹介しておくと、同アルバムは「デラックスエディション 完全数量限定生産盤」「期間限定盤」「通常盤」の3形態で発売されました。こういう試みは、スピッツにとって初めてのことでした。

 

そして、アルバムの形態により、少しずつ収録内容が違っているんですが、デラックスエディション盤が一番豪華な内容になっています(それだけに値段も少し張りますが…)。件の【あかさたな】や、前講義(212時限目)で紹介しました【エスぺランサ】についてもそうですが、このデラックスエディション盤でしか聴くことが出来ないので、よりたくさんの新曲を聴きたい方は、こちらを購入することをおすすめします。

 


■さて、【あかさたな】という曲。

 

まず、一聴するだけで感じますが、「これぞスピッツ!」っていう感じですよね。個人的に、この歌は”ラブソング”に大別されるかと思っているんですが、明るくてかわいらしくて、それでいて、かっこいいという、まさにスピッツ流のラブソングだと思います。

 

アルバム『小さな生き物』の中だと、【オパビニア】や【エンドロールには早すぎる】や【潮騒ちゃん】などの曲が入っていますが、それらと何の遜色もない、何なら、どれかと収録内容が入れ替わっていたとしても、全然違和感が無かっただろうなって感じです。

 

というより、今回の【オパビニア】【エンドロールには早すぎる】【潮騒ちゃん】そして【あかさたな】は、ラブソングだという解釈に基づき、どこか世界観がつながっているような感じがするんですよね。まぁ同じ時期に作られた曲なので、そういうところはあるかもしれません。

 


例えば、歌われている物語の舞台として、どの曲にも”海”の風景が見えてくるんですが、どうでしょうか。

 


あかさたな 浜辺から 陸に上がってからは
怖がりですり傷だらけさ

【あかさたな】の出だしの歌詞

 


二人浜辺を 歩いてく
夕陽の赤さに 溶けながら

【エンドロールには早すぎる】のサビの歌詞

 

ご覧の通りですが、どちらにも、”浜辺”という言葉が出てきます。

 

それから、【潮騒ちゃん】は、もうタイトルが一番海っぽいんですけど、この歌詞にも”沖”という言葉が出てきますし、【オパビニア】も、これは太古の海に生息していた生物の名前が曲のタイトルになっています。

 


■その中で、【あかさたな】という歌は、個人的には、今まで恋愛に消極的で居た主人公が恋に落ちて、その相手に自分の気持ちを伝えようとしているようなシーンが浮かんできます。

 


あかさたな 浜辺から 陸に上がってからは
怖がりですり傷だらけさ
プライドのかけらなど よせ集めて得意気
笑われる事にも慣れてった

 


ほら全然ライブな手が 届きそうな距離で
今生のうちに会えた ハニー 気づいてる?

 

それぞれ、先程紹介した出だしの歌詞と、サビの歌詞の一部分です。

 

前半の4行は、恋愛に臆病だった、消極的だった主人公が、閉じこもっていたところから這い出てくる、まさにその時の描写のように読めます。ここでいう”浜辺”とは、まぁ”浜辺”というと”海”がセットだと考えると、”海”は主人公が閉じこもっていた場所の比喩表現として、そこから這い出た場所を”浜辺”と表現しているのだと読むことができます。

 

あるいは、”陸に上がってからは”という表現から、何ていうか生物的な進化と、人間的に新しい一歩を踏み出したことをかけているとも読めますかね。その辺りは、先ほど紹介した【オパビニア】にも通ずるものを感じます。

 


別に、前半4行ならば、恋愛に限らず、とにかく自分が閉じこもっていた場所から踏み出そうとしている描写になりますが、ここから、後半2行のような表現を読むと、それが恋愛の力によるものだったと考えることができそうです。

 


さあさあ行きましょう あそこが 消えちゃうより前に
人間になれたベムのフィーリング わかるかな?
残念知らないままで 通り過ぎるとかイヤでしょ
ずっとそばにいるからベイビー もう泣かないで

 

この辺とかも、面白い歌詞ですよね、”人間になれたベムのフィーリング”とかね、笑。恋に落ちたことをきっかけに、閉じこもっていた人間が変わろうと頑張るというのは、スピッツの歌によく出てくる描写だと思いますが、この歌はその王道って感じです。この部分は、【りありてぃ】にも通じる部分を感じます。

 

(※ちなみに、”ベム”とは、”妖怪人間ベム”のことですよね。昔やっていたアニメのタイトルであり、そのアニメの主人公の名前でもあります。あまりにも、昔のアニメなので、おじさんである僕も知らないんですけどね、苦笑。)