スピッツ大学

ステイホームしながら通える大学です!

219時限目:ナサケモノ

【ナサケモノ】

 

ナサケモノ

ナサケモノ

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の5曲目に収録されている曲です。

 

曲調は、スピッツロックの一つの王道と言える、カッコかわいい(カッコいい+かわいらしい)ロックチューンになっています。ミドルテンポで聴きやすく、ギターやドラムの音も軽いので、さくっと聴いて楽しくなれる曲だと思います。

 

そして、草野さんのボーカルやメンバーの演奏に合わせて…何の音と形容すればいいのか分かりませんが、曲の後ろで子どもがおもちゃで遊んでいるような音が随所で鳴っています。一番分かりやすいのがイントロの部分ですね、時計の針が動くような音、電話の受話器から聴こえるような音、おもちゃのゼンマイを巻いているような音などが、曲の終わりまで随所でガチャガチャなっていて、騒がしいですが、何だか楽しくなります。

 

ちなみに、wikiの情報によると、「曲中に聴こえるねじを巻いた音は、田村の家にあったムーミンキッチンタイマーの音」だそうです。

 

こういう曲は、スピッツにとっては珍しいんじゃないでしょうか…というより、これまでにこういう曲はありましたっけ?
(全然関係ないですが、僕はこの曲で、カミナリグモというバンドを思い浮かべました。残念ながら現在は活動休止中ですが、ボーカルの上野啓示さんのソロプロジェクトのかけらフィルムもおすすめです!)

 


■さて。

 

あんまり曲の情報が見つかりませんでしたので、早速自分の考えを語っていきたいと思います。

 


まず、このタイトルですよ、”ナサケモノ”って一体何だ?という感じですよね。最初は、”ナマケモノ”と空目した程です、笑。

 

”ナサケモノ”とは、この歌詞の中に、”情けない獣”というフレーズが出てくるのですが、それを縮めた言葉だと思われます。つまり、”ナサ”けない”ケモノ”で、”ナサケモノ”ということですね。

 

ただ、やはり言葉自体の意味は分かりません。”ナサケモノ”=”情けない獣”としたところで、じゃあ”情けない獣”って何だよって話です。その辺りは、歌詞を読んでいくしかなさそうです。

 


■ということで、少しずつになりますが、読んでいってみます。

 


憧れたり コケにしたり 愛おしい二文字
君の名前 つけた人は すごくセンスがいい

 

まず、出だしの歌詞ですが、いきなり草野節ですよねぇ。

 

ここの部分は、”君の名前”について触れられている部分ですね。”愛おしい二文字”とは、”君の名前”を指しているのでしょう。つまり、”君の名前”が二文字なんでしょうね。しかも、その名前を”つけた人は すごくセンスがいい”と、”君の名前”が素敵なことに加え、その名前をつけた人物まで含めて褒めています。

 

この歌には、”君”は出てきても、”一人称 / 僕、私、俺など”がひとつも出てこないですが、紛れもなく一人称側の目線でこの歌詞は描かれていると思われます。つまりは、”君の名前”が素敵だと、名前をつけた人のセンスが良いと褒めている”主人公”が居ること、合わせて、その”主人公”は、”君”のことを大切に思っていると、出だしの2行から読み取れると思います。

 


じゃあ、”主人公”と”君”の関係はどういうものなのでしょうか。両者の関係性が分かりそうな部分は、この辺りでしょうか。

 


本能でさらに強く 伝えたい気持ちがある
これを恋というのなら 情けない獣さ

 


足にもなる メシもつくる 涙はいただく
ギリリとゼンマイ 巻き上げたら すぐに元気だし
夢中で生きていられた ありがとう

 

キーワードは、まず”恋”という言葉。”これを恋というのなら”と、言葉を濁らせていますが、”伝えたい”と思っている以上、もう恋に落ちていると解釈しても差し支えは無いのだと思います。

 

後半3行も、面白いですよね、笑。要は、”主人公”が”君”に尽くしているということなんでしょうね。”夢中で生きていられた”とあるように、そういう日々に、”主人公”は喜びを感じていたことも読み取れます。

 


あとは、この両者の関係がどんな方向に向かっていったのかという様子が描かれいるような部分として、最後のサビにこんなフレーズが出てきます。

 


寂しさ消してやる そんな約束したのにさ
ついに叶えられず 逝けてない屍さ

 

つまり、何かの形で、両者の関係が終わってしまったことを読み取ることができそうです。

 


■ということで、少しまとめてみます。

 

まず、一番単純に読めば、「”君”に恋をした”主人公”が、”君”のために一生懸命尽くしたんだけど、”君”とずっと過ごすことが、何らかの形で叶わなくなってしまった」という物語を想像しました。

 

”主人公”は、”君”への恋心を自覚しつつも、恐らくそれを伝えることができず(それか、伝えたが、”君”にいい様にあしらわれているか)、それでもずっと”君”に尽くし続けたのでしょう。

 

”君”がどこへ行く時でも送り迎えをし(足にもなる)、”君”のためにご飯まで作ってあげ(メシも作る)、”君”が悲しんでいる時はなぐさめ元気づけてあげる(涙はいただく)、もう全てが”君”を想ってのことですかね。

 

しかしながら、最後の方で、”約束したのにさ ついに叶えられず”という表現があるように、”主人公”の願いが叶うこともなく、”主人公”と”君”の生活は終わりを迎えてしまいます。

 

終わった原因は何だったのでしょうか。”主人公”は、具体的に”君”に気持ちを伝えてなかったかもしれないので、甲斐甲斐しい努力がただの徒労に終わった、ということなのかもしれませんね。要は、友達関係の範疇を越えることが出来なかったということですかね。

 

ということで、一応は”君”の”寂しさ消してやる”と約束をしていたようなので(両者で誓い合ったか?それとも、”主人公”の一方通行か?)、それを叶えることが出来なくなって、自分は情けないなぁ…と思い、そんな自分自身を”情けない獣”と揶揄し、そのままタイトルの”ナサケモノ”にもつながるのでしょう。

 


■あとは、ちょっとひねくれて読んで、何ていうか、ペット(動物)と飼い主の関係を歌っているのかなって考えたりもしました。

 

そうなると、どうなるんですかね…”主人公”の方がペットで、”君”の方が飼い主になるんですかね。

 

”情けない獣”の”獣”は、そのまま自分が何らかの動物(獣)であることを表しているだとか(イメージは、猫や犬などのかわいらしい動物)、”涙はいただく”や”寂しさ消してやる”などは、飼い主を癒すという自分自身のペットとしての役割を表しているだとか、色々考えました。

 

ただ、結局はうまくつなげることができませんでした。例えば、”足にもなる”とか”メシも作る”とか、ここはむしろ逆だろうってね、ここだけ”主人公”ではなく”君”目線なのか?とか、色々考えてみたんですけど…どうですかね?

アルバム講義:Special Album『花鳥風月』

 

花鳥風月

Special Album『花鳥風月』
発売日:1999年3月25日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.流れ星
→ 112時限目:流れ星 - スピッツ大学

 

02.愛のしるし
→ 3時限目:愛のしるし - スピッツ大学

 

03.スピカ
→ 78時限目:スピカ - スピッツ大学

 

04.旅人
→ 87時限目:旅人 - スピッツ大学

 

05.俺のすべて
→ 35時限目:俺のすべて - スピッツ大学

 

06.猫になりたい
→ 126時限目:猫になりたい - スピッツ大学

 

07.心の底から
→ 52時限目:心の底から - スピッツ大学

 

08.マーメイド
→ 176時限目:マーメイド - スピッツ大学

 

09.コスモス
→ 53時限目:コスモス - スピッツ大学

 

10.野生のチューリップ
→ 188時限目:野生のチューリップ - スピッツ大学

 

11.鳥になって
→ 105時限目:鳥になって - スピッツ大学

 

12.おっぱい
→ 32時限目:おっぱい - スピッツ大学

 

13.トゲトゲの木
→ 102時限目:トゲトゲの木 - スピッツ大学

 


■アルバム『フェイクファー』発売から、ちょうど1年後に発売になったアルバムです。詳しくは後述しますが、”スペシャルアルバム”という、ちょっと特殊な形態で、(当時の)スピッツのこれまでの楽曲を振り返るようなアルバムになっています。
(ちなみ、『フェイクファー』と『花鳥風月』の間、1999年1月1日に、『99ep』という3曲入りのEPが発売になりました。アルバム『色色衣』を紹介する時に、ちょっと詳しく話します)

 

当時、世の中は、ベストアルバムブームでした。しかしながら、ひねくれ者のスピッツメンバーたち、ベストアルバムに良い印象を抱いてはいませんでした。それどころか当時、「自分たちがベストアルバムを出す時は、解散する時だ!」と公言するほど、アンチベストアルバム派だったようです。

 


ちなみに、2017年に僕が参戦した、『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"』の広島公演にて、リーダーがベストアルバムというものについて語っていました。

 

まず、2017年当時に発売になった『CYCLE HIT』については、”ベストアルバム”なのではなく、あくまでも、過去のシングルを収録した”シングルコレクション”なのだと強調をしておられました。

 

合わせて、アーティスト側から出される、自薦の”ベストアルバム”についての違和感を指摘しつつ、「ベストアルバムは他薦で作られるべきだ!」と主張。そして、「”ベストアルバム”と言うならば、いつだって自分たちの一番新しいアルバムが”ベストアルバム”だ!」と言っておられました。しびれましたね!

 


■そういうわけで、アンチベストアルバム派のスピッツが、ベストアルバム(のブーム)に対抗するように発表した、アンチベストアルバム的な作品こそ、スペシャルアルバム『花鳥風月』だったのです。

 

最初は、この作品を”カップリング曲集”として制作を進めようとしたそうです。実際、このアルバムには、たくさんのカップリング曲が入っています。
(ちなみに皆さん、どの曲がどのシングルのカップリングだったか、正確に覚えていらっしゃるんですかね?僕は…曖昧です!)

 

【鳥になって】(c/w 3rdシングル『魔女旅に出る』)
【マーメイド】(c/w 4thシングル『惑星のかけら』)
【コスモス】(c/w 5thシングル『日なたの窓に憧れて』)
【心の底から】(c/w 6thシングル『裸のままで』)
【猫になりたい】(c/w 9thシングル『猫になりたい』)
【俺のすべて】(c/w 11thシングル『ロビンソン』)
【旅人】(c/w 14thシングル『渚』)
【スピカ】(両A面シングル『楓 / スピカ』より)

 

つまり、これまでのアルバムに未収録になっている、カップリング曲(+両A面の片割れの曲1曲)を網羅したということですね。このアルバムに入っていないカップリング曲も、それまでのアルバムで聴くことはできるようになっています。

 


■ただし、単純な”カップリング曲集”にするにはちょっと地味であるとして、未発表曲やインディーズ曲も収録し、”特別感”を演出したようです。カップリング曲以外の収録曲も、少し紹介しておきます。

 


【流れ星】
これは、インディーズ時代からあった古い曲で、元々はレゲェバージョンの曲であったそうです(どこかの動画サイトで聴けましたが…)。元々は、辺見えみりさんに提供された曲ですが、長い時を経て、ついに自分たちの曲として発表したのでした。この後、シングルカットもされました。

 

愛のしるし
元々は、PUFFYに提供した曲です。ちなみに、シングル『流れ星』のカップリングには、【愛のしるし (LIVE '98 version)】が収録されています。

 

【野生のチューリップ】
元々は、遊佐未森さんに提供された曲で、【流れ星】と同様、とても古くからあった曲であったそうです。

 

【おっぱい】【トゲトゲの木】
インディーズ時代のミニアルバム『ヒバリのこころ』に収録されていた、インディーズ楽曲です。

 


■ちなみに、このアルバムは、”スペシャルアルバム / Special Album”と名付けられています(と呼びましょう!)。他のアーティストでは、”スペシャルアルバム”なんていうのは、あんまり聞かないですよね、スピッツならではの呼び方なのでしょうか。

 

収録曲が、カップリング曲や未発表曲・インディーズ曲で構成されているので、他のオリジナルアルバムと差別化を図る意味で、特別なアルバムと名付けられたということなのでしょう。

 

また、草野さんが、”sp”とアルファベットが続く単語が好きだという、ちょっと変わった趣向をお持ちなので(これは、spitz / スピッツというバンド名の由来にもなっているようですが)、それとも関係して、”Special Album”という名前をつけたのかもしれません。

 


■またまた同じ話をしますが、個人的に、アルバム『インディゴ地平線』『フェイクファー』『花鳥風月』は、小中学生の時に、カセットテープに吹き込んで何度も聴き込んだ作品であり、僕がスピッツへの愛を深めていった、一番古い記憶として残っています。

 

当時、僕はスピッツの作品として、シングルを買ったりレンタルしたりする習慣がなかったんです。その時代の8cm盤のスピッツのシングルは、数える位しか持っておらず、スピッツの曲は、主にアルバムを聴いて楽しんでいました。

 

なので、シングルのカップリング曲を聴く機会がそんなになかったので、『花鳥風月』でカップリング曲がたくさん聴けるのは嬉しかったです。スピッツのカップリング曲にも名曲が多いなと、その時思いました。

 

ただし、カップリング曲も含めて、初めて聴く曲ばかりで、僕にとってはもうほとんど、新作のオリジナルアルバムを聴いている感覚でした。印象に残っている曲がたくさんあるので、ちょっと紹介してみます。

 


【流れ星】
まず、僕はこの曲がとても好きなんです。こういう静かな曲から、アルバムが始まるっていうのは良いですよね、【エトランゼ】とか【夜を駆ける】とかもそういう感じですけどね。

 

個人的に、この曲に対しての解釈として、”眠る前の想像タイム”を当てはめています。眠る前って、やけに壮大な想像をしたりすることありませんか?人は死ぬとどうなるんだろうとか、宇宙はどうなっているんだろうとか…子どもの頃は、そういう想像をしてしまって、眠れなくなったこともありました。

 

何かそういう、壮大な死生観みたいなものを、いつも考えさせられる曲だと思います。個人的に、とても大切な曲のひとつです。

 


【スピカ】
スピッツファンにとって、とても人気のある曲のひとつです。ここスピッツ大学にて、(2018年7月現在)つい最近まで行っていた、ブログを訪れてくださったスピッツファンの方々で、スピッツ人気曲ランキングを作る、”スピッツ大学ランキング企画”にて、なんと【スピカ】が第1位に選ばれました!!!

 

これは、意外でしたね。【スピカ】は人気曲であり、上位に入ることは予想していましたが、1位になる結末は予想してませんでした。結構、ぶっちぎってましたからね、笑。

 


個人的には、”受験頑張れソング”です。

 


この坂道も そろそろピークで
バカらしい嘘も消え去りそうです
やがて来る 大好きな季節を想い描いてたら

 

この辺りのフレーズに励まされ、当時は高校受験ですかね、頑張って乗り越えることができました。

 


【猫になりたい】
もう最初に聴いたときから、印象に残りっぱなしです。スピッツファンは、きっとここは一度は通る道だと思います、みんな大好きな曲ですよね。

 

大学生の時、この曲をアルバイトの女の先輩が、カラオケで突然歌ったんです。僕が、【猫になりたい】が好きであることはおろか、スピッツファンであることも知らせてなかったのに、突然歌い始めたので、僕は興奮して、そのまま恋に落ちていたのです、笑。

 


【おっぱい】
知らない人には、「こんなタイトルあり?」って思うでしょうね、笑。僕も最初はそうでした。スピッツファンは、みんな一度は通る道…というか、越える壁と言うべきでしょうか。この曲を越えれば、コアなスピッツファンの仲間入りです、笑。

 

もうタイトルから出落ち感が半端ないですが、聴いてみると、とんでもない美メロで、至って真面目な名曲なんです。

 


君のおっぱいは世界一 君のおっぱいは世界一
もうこれ以上の 生きることの喜びなんか要らない

 

とても切実な歌詞ですね、笑。この曲を聴いた初めこそ、何言ってんだって思いましたが、これだけ切実でストレートだと、逆に清々しさを感じるほどです。草野さんは、歌詞のテーマとして「死とセックス」を掲げていますが、まさしくそれを体現している重要な曲です。

 


■ということで、書いてきた通り、収録曲の作られた時代がバラバラな分(10年以上にわたって作られている)、良い意味で一貫性がなく、1曲1曲が特徴的で際立っているアルバムです。

 

オリジナルアルバムだと、僕はそのアルバム1枚で世界観をイメージして聴くのが好きなのですが、『花鳥風月』はそれとは少し違います。オリジナルアルバムが、ひとつの長編小説だとしたら、『花鳥風月』は、たくさんのお話が入っている短編集みたいな感じです。

 


古くは、アマチュア・インディーズ時代の楽曲から、スピッツの不遇の時代の楽曲を経て、スピッツバブル黄金期の楽曲、そして(当時の)最新のスピッツの楽曲まで、スピッツの10年以上の活動を、このアルバム一枚で網羅することができるので、名前の通り、特別な1枚です。

 

しかも『花鳥風月』は、収録曲が発表された時期が新しい方から古い方へと向かうように収録されているので、スピッツの活動をさかのぼっていく形で、作品を聴くことになります。何ていうか、タイムマシンで過去にタイムトラベルしていくような感覚です。

 


■ちなみに、アルバムのタイトル”花鳥風月”についても考えてみました。

 

”花鳥風月”という言葉は、日本人が大切にする(べき)、日本の美しい自然の風景や風流を指すという意味と、もう一つ、詩や歌や絵画などを楽しむという意味もあるそうです。アルバムタイトルの意味として当てはめるとしたら、後者ですかね。

 

あと、”花鳥風月”とは、人間が歳をとっていくにつれて、趣を感じるようになるものの順番であるそうです。若い頃には、花や鳥を愛でて、歳をとっていくと、風の流れや月の満ち欠けにさえ趣を感じるようになると、どこかで聞いた記憶があるのです。(ちなみに、こちらの意味は、調べてみてもそういう情報が得られなかったので、話してくれた方の持論だったのかもしれません。)

 


まぁ、草野さんが書く歌詞や歌のタイトルには、花の名前や鳥の名前、そして天体の名前などがよく出てきますので、そもそも初めから、草野さん自身が一番、”花鳥風月”を大切にしていたんですよね。

 

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アルバム講義:8th Album『フェイクファー』

フェイクファー

8th Album『フェイクファー』
発売日:1998年3月25日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.エトランゼ
→ 26時限目:エトランゼ - スピッツ大学

 

02.センチメンタル
→ 81時限目:センチメンタル - スピッツ大学

 

03.冷たい頬
→ 96時限目:冷たい頬 - スピッツ大学

 

04.運命の人 (Album Version)
→ 24時限目:運命の人 - スピッツ大学

 

05.仲良し
→ 111時限目:仲良し - スピッツ大学

 

06.楓
→ 36時限目:楓 - スピッツ大学

 

07.スーパーノヴァ
→ 72時限目:スーパーノヴァ - スピッツ大学

 

08.ただ春を待つ
→ 85時限目:ただ春を待つ - スピッツ大学

 

09.謝々!
→ 62時限目:謝々! - スピッツ大学

 

10.ウィリー
→ 18時限目:ウィリー - スピッツ大学

 

11.スカーレット (Album Version)
→ 73時限目:スカーレット - スピッツ大学

 

12.フェイクファー
→ 149時限目:フェイクファー - スピッツ大学

 


■僕は個人的に、スピッツのオリジナルアルバムで、活動時期を勝手にいくつか分けているのですが、その中の第2期「スピッツ黄金期」(要は、スピッツの名前が全国に広がって、作品の売り上げも絶頂を迎えた時期)として、5th『空の飛び方』~8th『フェイクファー』を位置付けています。つまり、第2期が、この『フェイクファー』で終わったことになります。

 

アルバムに入っているシングル曲は、【スカーレット】【運命の人】【冷たい頬】【謝々!】【楓】の5曲と盛りだくさんです。どの曲も、スピッツのシングル曲として、非常に知名度の高い曲ですね。

 

余談ですが、シングルにおいて【謝々!】は、カップリング曲ではなく、【冷たい頬】とともに両A面の曲だったんですよね。【冷たい頬】の方が、目立って知名度が高いので、影に隠れがちですが、個人的には【謝々!】の方が大好きです。

 


■さて、このアルバム『フェイクファー』において、スピッツは、ひとつの大きな転機を迎えることになります。

 

スピッツのこれまでのアルバム…4th『Crispy!』~7th『インディゴ地平線』は、笹路正徳という方が、長いことプロデュースを務めてきました。期間にして、およそ4年くらいになりますか。酸いも甘いも、スピッツとともに経験してきて、お互いの信頼関係は相当なものであったのだろうと察します。まさに、スピッツを世に送り出したプロデューサーと言っても過言ではないでしょう。

 


そして、転機というのは、まさにその笹路さんのプロデュースから、アルバム『フェイクファー』で離れることになるのです。書籍「旅の途中」にも、その話が載っていますが、少し紹介してみます。

 


 このアルバム(これは『インディゴ地平線』のこと)で笹路プロデュースによるスピッツのアルバムは四枚になった。そして、笹路さんが「そろそろかな」とそれとなく、いずれスピッツのプロデュースから離れる時期が来ることを口にするようになった。
「僕がプロデュースする若いバンドは途中で卒業していく。その後もしっかりやっていってもらえればそれが一番嬉しいよ」
 それが笹路さんの考えだと何度も聞いていた。

 

改めて、笹路正徳さんをネットで調べてみますと、プロデュースしたアーティストに、錚々たる名前が並んでいます。僕が好きなアーテイスト・ある程度は知っているアーティストだけでも、THE BLUE HEARTS、THE YELLOW MONKEYS、コブクロユニコーンなどの名前を見つけました。そして、その中に、しっかりとスピッツの名前もあります。ブルーハーツスピッツがつながっているのが、何か嬉しいですね、笑。

 

書籍「旅の途中」などを読んで思ったのが、笹路さんは、”たくさんのバンドの親”みたいな人だなってことでした。ちゃんと独り立ちするまで面倒を見て、大丈夫だなって思ったら離れる、これはまさに”親心”と言うべき感情に似ているかもしれません。

 


■そして、笹路さんから離れたスピッツは、アルバム『フェイクファー』のプロデューサーとして新たに、棚谷祐一という方を起用します。

 

書籍の中で、棚谷さんのプロデューススタイルとしては、”スピッツの五人目のメンバーのように、メンバーと同じ目線でアレンジ、レコーディングに参加してくれた”と紹介してありました。ただ、慣れ親しんだ笹路さんのプロデュースから離れたこともあって、当時のスピッツに余裕がなく、レコーディングを楽しむことが出来なかったと書いてありました。どこまでやればOKなのか、ジャッジを下す役割が居なくなり、混乱したとも書いてありました。

 


ちなみに、後に発売になるシングル『流れ星』において、カップリングに【エトランゼ (TANAYAMIX)】という曲が入っています。これはタイトル通り、アルバムに入っていた【エトランゼ】を、棚谷さんがリミックスしたものであり、実に8分以上の長い音源になっています。

 

僕は、【流れ星】が好きだったので、このシングルを持っているのですが(8cm時代の古い方を持っています!)、この曲が入っていて、すごく得した気分です。【エトランゼ (TANAYAMIX)】は、何ていうか、インスト?サウンドトラック?みたいな感じで、草野さんのボーカルなどはもはや目立ってないのですが、棚谷さんのミックスは、僕はこれはこれで好きなんです。

 

【エトランゼ(TANAYAMIX)】は、このシングルでしか聴けませんので、良かったら聴いてみてください。(今だったら、ダウンロードとかできるのかな?分からんけど)

 


■ということで、新たな体制でレコーディングされたアルバム『フェイクファー』ですが、前作『インディゴ地平線』と同様、またしてもミックスダウンが上手くいかなかったと記されています。音が暗い、ライヴのような迫力のある音が出ない、などと評価されていましたが、そういうこともあり、草野さんはこの作品を、”いまだに聴きたくないアルバム”と評しておられました。

 

しかし、それと同時に、”ファンの中には『フェイクファー』がいちばん好きだと言ってくれる人もいる”とも記されています。まさに僕自身も、第2期のアルバムの中では、『フェイクファー』が一番好きなんです。

 


いつも同じようなこと書きますが、『インディゴ地平線』『フェイクファー』『花鳥風月』は、小中学生の頃、カセットテープに吹き込んで何度も聴いた、自分の中で一番記憶の古いスピッツ作品なので、どれも思い入れが強いのですが、その中でも特に、アルバム『フェイクファー』がお気に入りでした。

 

うまく説明ができないんですけど、子ども心にも、アルバム『フェイクファー』って他の作品とはちょっと違う感じがしたんです。作品で言うと、例えば『空の飛び方』だったり『ハチミツ』の方が聴きやすいんですけどね、音も雰囲気も明るいですし。それでも、僕は『フェイクファー』が好きなんです。

 


■その理由として大きかったのが、やっぱり表題曲であり、アルバムの最後に入っている【フェイクファー】という曲だったと思います。とにかく、この曲のインパクトが強くて、その魅力に憑りつかれ、この曲だけをずっと繰り返し聴いたこともありました。

 

当時は、学校でちょうど英語を本格的に勉強し始めた頃だったんですけど、”フェイクファー / fake fur”という言葉は、単語としての意味は、”fake”は偽物、”fur”は毛皮という風に、すぐに理解できたんです。

 


fur / 毛皮というと、包まれると温かさを感じるもので、何ていうか、”温もりの象徴”みたいなものですよね。アルバムの中にも、そんな温もりを感じるような、何だかほっこりとする曲が入っています。

 

個人的にはプロポーズソングのように感じている【運命の人】


バスの揺れ方で人生の意味が 解かった日曜日
でもさ 君は運命の人だから 強く手を握るよ

 

幼い男の子の甘酸っぱい恋心を描いた【仲良し】

いつも仲良しいいよねって言われて
でもどこかブルーになってた あれは恋だった

 

個人的には出産を当てはめた(書籍には、笹路さんへの感謝・スピッツの旅立ちを表したとも?)、とにかく派手で明るい【謝々!】

いつでも優しい君に 謝々!!
大人も子供も無く
涙でごまかしたり 意味もなく抱き合う僕ら
今ここにいる

 

これも幸せな雰囲気が漂っている【スカーレット】

離さない このまま 時が流れても
ひとつだけ 小さな 赤い灯を
守り続けていくよ

 


こういう曲が続いていって、最後に【フェイクファー】という曲が入っているのです。

 

僕は、このアルバムの最後に【フェイクファー】が入っていることに、何とも言えない不思議な気持ちというか、”怖い”気持ちになったことを覚えています。

 

ファーはファーでも、フェイクですからね。アルバムを聴いてきて、温かくなるような楽しい曲も入っていて、それで行き着いた最後に、”偽物の温もり”と歌われているわけです。もちろん、一曲一曲で違うことを感じれば良いんですけど、表題曲であり最後に入っている【フェイクファー】を、どうしてもアルバム全体の主題のように聴いたのです。

 

これまで歌われていたことが、全部”偽物でした”と突き付けられたような、大げさに言ってしまえばそういう感じです。今までのアルバムの世界観が、この【フェイクファー】という1曲によって、ガラッと変わってしまうような感じがして、聴き終わって、何とも言えない余韻に浸るのが好きだったんです。

 


■”フェイク”というタイトル通り、歌詞の中には、”ウソ”や”偽り”、あとは他の部分では”分かち合う物は 何もないけど”などのフレーズが入っています。そんなに頑なに、嘘だの偽りだのって歌わなくても…とか思ったりするんですが、歌詞の続きを書いてみると、こんな感じになっているのです。

 


唇をすり抜ける くすぐったい言葉の
たとえ全てがウソであっても それでいいと

 


偽りの海に 身体委ねて
恋のよろこびに あふれてる

 

嘘や偽りでも、君に出会ったこと、恋に落ちたこと、身体を重ねたこと、それらに喜びを感じていると。要は、当事者にとっては、偽物だろうが幻だろうが、真剣に信じているから、立派な本物なんだよって、そういうことですよね。

 

触れられない、届かない、許されない…そんな願いや恋愛(の成就)を、妄想的に描くのは、草野さんの美学と言いますが、詩の世界観のひとつになっていると思います。

 


■何気にアルバム『フェイクファー』は、10年経ったスピッツが初めて出したアルバムなんですよね。厳密には、1987年が結成年ですから、11年経っていることになります。

 

書籍「スピッツ」では、”囚われないスピッツ元年”という言葉でスピッツを表現していましたが、先述の通り、笹路さんのプロデュースから離れたり、極端に作品が売れた”スピッツバブル”も一段落して、スピッツはまた新しい局面へと突入していきます。

 

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スピッツ大学ランキング企画 完結編(最終結果発表)

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www.nicovideo.jp

 

(動画は1時間を越えちゃいました。あしからず…ランキング最終結果は、この記事にも載せています。)

 

 

スピッツ大学ランキング企画>

 

■趣旨
「このブログを読んでくださったスピッツファンの方々で(僕も含めて)、スピッツで好きな曲ランキングを勝手に作ること」

 

 

■ルール

 

スピッツ大学を訪れてくださった読者の方々に、「スピッツで好きな曲ランキングベスト3」を書き込んで頂きました。

 

ちなみに、筆者的ベスト3は…
1位 けもの道
2位 漣
3位 僕はきっと旅に出る

 


②選べる曲については、インディーズ曲とカバー曲を除いて、デビュー~アルバム『小さな生き物』(シングル曲【雪風】は含める)までの、全ての発表曲としました。

 


③皆様に選んでいただいた、①②に該当する各々のベスト3について、1位の曲:3ポイント、2位の曲:2ポイント、3位の曲:1ポイントをそれぞれ与え、そのポイントを全て加えていって、ランキングを作りました。

 

 

 

■投票期間
  2015年8月1日 ~ 2018年7月7日

 

 

 

■投票情報
  総有効ポイント 4430ポイント
  総有効投票人数 およそ738人分
(※無効ポイントがあったため、実際は750人くらい?)

 

 


スピッツ大学ランキング 最終結

 

(順位 / 曲名 / ポイント数)

 

第1位   スピカ   195pt

 

第2位   夜を駆ける   175pt

 

第3位   ロビンソン   142pt

 

第4位   運命の人   139pt

 

第5位   8823   127pt

 

第6位   桃   119pt

 

第7位   渚   104pt

 

第8位   愛のことば   100pt

 

第9位   フェイクファー   97pt

 

第10位   冷たい頬   86pt

 

第11位   猫になりたい   85pt

 

第12位   正夢   81pt

 

第13位   プール   78pt

 

第14位   けもの道   77pt

 

第15位   恋する凡人   72pt

 

第16位   魔法のコトバ   67pt

 

第17位   魚
       夢追い虫   61pt

 

第19位   俺のすべて
       楓
       さらさら
       春の歌   60pt

 

第23位   三日月ロック その3   57pt

 

第24位   漣   56pt

 

第25位   バニーガール
       日なたの窓に憧れて   54pt

 

第27位   スカーレット   49pt

 

第28位   エスカルゴ   48pt

 

第29位   スパイダー   47pt

 

第30位   僕はきっと旅に出る   46pt

 

第31位   サンシャイン
       チェリー   43pt

 

第33位   青い車   38pt

 

第34位   不死身のビーナス
       ルキンフォー
       若葉    36pt

 

第37位   ホタル   34pt

 

第38位   夏の魔物   33pt

 

第39位   流れ星   32pt

 

第40位   不思議   31pt

 

第41位   仲良し
       放浪カモメはどこまでも
       魔女旅に出る       30pt

 

第44位   甘ったれクリーチャー
       砂漠の花
       ヒバリのこころ      29pt

 

第47位   みそか   28pt

 

第48位   空も飛べるはず   27pt

 

第49位   初恋クレイジー   26pt

 

第50位   えにし
       ラズベリー   25pt


第52位   シロクマ   24pt

 

第53位   涙がキラリ☆
       遥か        22pt

 

第55位   田舎の生活
       インディゴ地平線
       夏が終わる      21pt

 

第58位   ありふれた人生   20pt

 

第59位   HOLIDAY
       君と暮らせたら
       トビウオ
       ハヤテ      19pt


第63位   聞かせてよ
       さわって・変わって
       謝々!
       ビギナー
       メモリーズ・カスタム
       ルナルナ         18pt

 

第69位   君が思い出になる前に
       幻のドラゴン
       惑星のかけら      17pt

 

第72位   アカネ
       歩き出せ、クローバー
       群青
       名前をつけてやる
       僕のギター
       ミカンズのテーマ
       雪風          16pt

 

第79位   アパート
       オパビニア
       恋のうた
       ハネモノ
       水色の街
       未来コオロギ   15pt

 

第85位   稲穂
       恋は夕暮れ
       ハニーハニー   14pt

 

第88位   ウサギのバイク
       大宮サンセット
       スワン
       裸のままで
       ハチミツ      13pt

 

第93位   あわ
       エンドロールには早すぎる
       つぐみ
       ババロア
       ほのほ
       夕焼け           12pt

 

第99位   P
       君は太陽
       テイタム・オニール   11pt

 

第102位   Y
        愛のしるし
        甘い手
        テレビ     10pt

 

第106位   Na・De・Na・Deボーイ
        ガーベラ
        グラスホッパー
        潮騒ちゃん
        シャララ
        青春生き残りゲーム
        孫悟空
        小さな生き物
        花の写真         9pt

 

第115位   TRABANT
        ジュテーム?
        新月
        旅人       8pt

 

第119位   恋のはじまり
        センチメンタル
        たまご
        点と点
        トンガリ'95
        どんどどん
        日曜日
        ハートが帰らない
        船乗り
        ベビーフェイス     7pt

 

第129位   海とピンク
        死神の岬へ
        タイムトラベラー
        ナイフ
        虹を越えて
        僕の天使マリ
        夢じゃない
        ランプ        6pt

 

第137位   SUGINAMI MELODY
        あじさい通り
        今
        うめぼし
        鈴虫を飼う
        ただ春を待つ
        旅の途中
        ミーコとギター
        夕陽が笑う、君も笑う   5pt

 

第146位   会いに行くよ
        コスモス
        シュラフ
        探検隊
        タンポポ
        テクテク
        トンビ飛べなかった
        花泥棒
        僕はジェット
        マーメイド
        ムーンライト
        りありてぃ       4pt

 

第158位   海を見に行こう
        オケラ
        俺の赤い星
        クリスピー
        五千光年の夢
        スターゲイザー
        トゲトゲの木
        ドルフィン・ラヴ
        ナナへの気持ち
        ビー玉
        待ち合わせ
        胸に咲いた黄色い花
        リコリス
        ローランダー、空へ
        ワタリ          3pt

 

第173位   いろは
        おっぱい
        自転車
        白い炎
        ニノウデの世界
        ネズミの進化
        まもるさん
        優しくなりたいな
        野生のチューリップ
        野生のポルカ
        ローテク・ロマンティカ 2pt

 

第184位   scat
        宇宙虫
        海ねこ
        エトランゼ
        さらばユニヴァース   
        スーパーノヴァ
        月に帰る
        鳥になって
        涙
        ナンプラー日和
        ほうき星
        ラクガキ王国       1pt


第196位(以下、残念ながら、0pt…)
ウィリー
エスペランサ
オーバードライブ
君だけを
黒い翼
心の底から
多摩川
遠吠えシャッフル
波のり
ハイファイ・ローファイ
春夏ロケット
ヘチマの花
迷子の兵隊
マフラーマン
魔法
リコシェ

アルバム講義:7th Album『インディゴ地平線』

インディゴ地平線

7th Album『インディゴ地平線
発売日:1996年10月23日

 


■収録曲(→の先より、各曲の紹介へと飛べます)

 

01.花泥棒
→ 133時限目:花泥棒 - スピッツ大学

 

02.初恋クレイジー
→ 132時限目:初恋クレイジー - スピッツ大学

 

03.インディゴ地平線
→ 17時限目:インディゴ地平線 - スピッツ大学

 

04.渚
→ 113時限目:渚 - スピッツ大学

 

05.ハヤテ
→ 137時限目:ハヤテ - スピッツ大学

 

06.ナナへの気持ち
→ 117時限目:ナナへの気持ち - スピッツ大学

 

07.虹を越えて
→ 123時限目:虹を越えて - スピッツ大学

 

08.バニーガール
→ 142時限目:バニーガール - スピッツ大学

 

09.ほうき星
→ 156時限目:ほうき星 - スピッツ大学

 

10.マフラーマン
→ 170時限目:マフラーマン - スピッツ大学

 

11.夕陽が笑う、君も笑う
→ 190時限目:夕陽が笑う、君も笑う - スピッツ大学

 

12.チェリー
→ 93時限目:チェリー - スピッツ大学

 


■前アルバム『ハチミツ』に引き続き、スピッツ黄金期に発売になったアルバムです。

 

収録曲の中で、シングル曲は【チェリー】と【渚】の2曲ですが、どちらも爆発的なヒットを記録したシングル曲ですね。全シングルの中で、シングル『チェリー』は第2位(およそ160万枚)、シングル『渚』は第5位(およそ84万枚)の売上枚数を記録しています。

 

そんな、記録的なシングル曲を含めたアルバム『インディゴ地平線』は、前アルバム『ハチミツ』に引き続き、オリコンチャート1位を記録します。こちらも、オリジナルアルバムの売り上げ枚数では、『ハチミツ』に引き続き、第2位の作品になっています。

 


■このように、数字だけを見れば、スピッツの順風満帆な黄金期を想像することができますが、書籍やネットの情報などによると、この時期のスピッツは、色々と苦労・迷走をしていたことが読み取れます。

 

書籍「旅の途中」では、この時期のスピッツについて、”スピッツ・バブル”という言葉で表現されていました。自分たちの作品や活動が評価されることに、喜びを感じないはずはなかったと思いますが、続く”スピッツ・バブル”に対する”スピッツ・バブル疲れ”とでも言いますか、何かそういう状態になっていたんだろうと察します。

 


また、この時期のスピッツは、自分たちが目指すスピッツ像と、世間が求めるスピッツ像に、早くもズレを感じ始めていたことも読み取ることができます。

 


 しかも、スピッツが世間から求めれるイメージが、健全でさわやかな青春バンドだということがわかるにつれ、フラストレーションを感じるようにもなっていた。
 バンドとしてのスピッツはあいかわらずだったけど、周囲のスピッツへの目線が変わってきたような気がしていたんだ。

 

書籍「旅の途中」において、田村さんはこのように語っておられます。これらのことが、より表面化していって、後の”マイアミ・ショック”などへとつながっていくのですが、まぁそれはまた別のお話ということで…。

 


■そして、こういう状況の中で行われた、シングル『渚』やアルバム『インディゴ地平線』などのレコーディングだったわけですが、その最中に、ギターの三輪さんが突然、一時的にギターがうまく弾けなくなってしまうというピンチを迎えてしまいます。

 

この辺りのことは、書籍「スピッツ」に、三輪さんのインタビューとして載っていました。

 


「う~ん……ちょっとね、今までこんな経験はなかったんだけど、バッターもさ、フォームを忘れてスランプっていうのがあるでしょう? ああいうのになっちゃってギターが上手く弾けないんだよね。で、自分でも今ほんとどうしたらいいかわかんない状態」

 

「最近、笹路さんに行きも帰りも迎えに来てもらってさ、『どうしてこうなったんだろうねえ?』みたいな、二人ともいろいろ…だからとにかく今は初心に戻って練習しかない! いろいろ考えたってもうこういう状況になっちゃったんだから、ほんとに基本から練習する地味な作業をやるしかない」

 

スピッツのスケジュール的な忙しさがあって、そこから肉体的な疲れ、精神的な疲れなどが出て、それらが原因となったことだったのでしょうか。

 


■また、アルバム『インディゴ地平線』は、ミックスダウンに非常に苦労されたアルバムであるとも語られています。

 

ミックスダウンとは、予め別々にレコーディングされた楽器やボーカルの音を、ひとつにまとめる作業のことです。音量のバランス、高音や低音のバランス、音色のバランスなど、バラバラなものを整えて、ひとつの作品に仕上げるための、重要な作業になります。

 

アルバム『インディゴ地平線』では、チームの中でも、イメージしている音に”ズレ”があったそうで、ミックスダウンに、とても時間がかかったようです。しかしながら、それでも『インディゴ地平線』の音作りには、最後まで納得できなかったようです。

 


具体的には、ライヴの演奏のような、迫力のある音づくりを目指していたようですが、それが実現できなかったようです。これは実際に聴いてみてもわかると思うんですが、アルバム『インディゴ地平線』って、全体的に少し音がくぐもって聴こえませんか?まぁ、アルバム『フェイクファー』も同様なんですけどね。

 

音作りに対しては、スピッツはこの時期から、長いこと悩み続けることになるわけです。これもまた、後のアメリカでのレコーディングや、マイアミショックなどにもつながっていくのですが、また別のお話で、ということで…。

 


とにかく、本当に色んな苦労を強いられながら、レコーディングされたのであろう『インディゴ地平線』については、その苦労などを思い出してのことでしょうか、メンバーにとって、「一番思い出深いアルバム」として語られています。

 


■僕個人的にも(全然理由は違いますが)、『インディゴ地平線』は、とても思い入れのある作品です。

 

インディゴ地平線』『フェイクファー』『花鳥風月』は、カセットテープに吹き込んで、何度も何度も聴いた作品です。通称:カセット三部作と、僕だけが呼んでいますが、時期としては、僕が小学生~中学生の頃に出会った作品たちです。僕がスピッツに出会った頃の、最も古いスピッツの記憶であり、子ども心にスピッツの深い世界観に触れはじめ、少しずつスピッツへの愛を育んでいきました。

 

子どもの頃は、やっぱり明るい曲が好きだったので、【初恋クレイジー】や【バニーガール】や【夕陽が笑う、君も笑う】などがお気に入りでした。特に、【夕陽が笑う、君も笑う】なんて、どれだけ聴いても飽きなかったですね。

 


同じ時期に、カセットテープに吹き込んで聴いていたので、オリジナルアルバムとして『インディゴ地平線』と『フェイクファー』は、何となく2枚セット、双子のような感じです。

 

インディゴ地平線』が夏でイメージカラーは青、『フェイクファー』は秋・冬でイメージカラーは赤やオレンジって感じですかね。決して、どちらにも季節を感じるような曲はそこまでたくさん入っていないんですけど、そういう風に分類しています。

 

アルバム『フェイクファー』に関しては、また次回話すとして、アルバム『インディゴ地平線』については、個人的に「開放的になれるアルバム」だという印象を持っています。夏というイメージから想起されるところが大きいのかもしれません。

 


■内容としては、恋愛系の歌が多く入っている印象ですが、どうですかね。

 


恋する相手に気持ちを懸命に伝えようとしている【花泥棒】

どうせ一度なら 心が向かうまま 花泥棒 花泥棒
あの娘に似合いそうな花を見つけたぞ 花泥棒 花泥棒

 

初恋に浮かれる様子を描いた【初恋クレイジー】

見慣れたはずの街並も ド派手に映す愚か者
君のせいで大きくなった未来

 

ひと夏の恋愛を描いているような【渚】

柔らかい日々が波の音に染まる 幻よ 醒めないで
渚は二人の夢を混ぜ合わせる 揺れながら輝いて

 

一瞬にして恋に落ちた情景を表している【ハヤテ】

きまぐれ君はキュートなハヤテ
倒れそうな身体を駆け抜けた

 

ギャルを口説いている【ナナヘの気持ち】

街道沿いのロイホで 夜明けまで話し込み
何も出来ずホームで 見送られる時の
憎たらしい笑顔 よくわからぬ手ぶり
君と生きていくことを決めた

 


などなど、純粋に恋愛を感じる曲は、この辺りですかね。色んな恋愛の形が描かれています。やっぱり、こういう曲が多いから、全体的にも明るくて開放的な作品のように感じるんでしょうか。

 


■作品としては、書籍「スピッツ」によると、ここにも書いてきた色んな苦労や忙しさと裏腹に、遊び心や余裕を見せることを心がけたんだそうです。

 

例えば、草野さん以外が作曲を務めた曲、具体的には、三輪さん作曲の【花泥棒】と、田村さん作曲の【ほうき星】が収録されていることもそうですね。【花泥棒】なんかは、草野さん自身も、”自分では決して作れない曲”と評していましたが、1曲目から面白いですよね。

 

いかにマンネリ化しないように、色々と挑戦していたのでしょうか。しかし、作品が大ヒットしたことで、スピッツの名前が知れ渡りましたが、先述した通り、世間のスピッツのイメージと、スピッツ自身が目指すスピッツのイメージにズレが生じていました。

 

書籍には、スピッツというバンドに対して、”異端でいることにプライドを持っていたバンド”という表現がありましたが、本当はスピッツって、もっと”変テコなバンド”なんだよって、もっと”異端なバンド”なんだよって、アルバムでは伝えたかったのかなって、個人的には思います。

 

シングル曲では猫被っていた分、アルバム曲ではちょっと舌を出してみるかって感じですかね、笑。

 


それでも、初期の頃の作品(例えば『スピッツ』や『名前をつけてやる』など)と比べてみると、十分分かりやすく、とっつきやすい作品になっていることは事実です。書籍の中で草野さんは、

 


「目をつぶって遠くに飛んでいけてもね、ほんとに遠くに行ったことにはならないってことがわかってきて。目を開けて歩いていくことによって初めて遠くへ行けるっていうことだと思うんですよね」

 

という風に語っていますが、アルバム『ハチミツ』の記事でも書いたように、要はファンタジーではなく、より現実に近いところを歌うようになってきたということでしょうか。

 

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(予告)スピッツ大学ランキング企画 最終結果発表:2018年7月17日(予定)

スピッツ大学ランキング企画は、2018年7月7日でもって、投票期間を終了となりました。

 

(※何のこっちゃ?と思われる方も多いかと思われますので、下の方にルールだけでも載せておきます。終わった企画ですので、投票はしないでください、もう反映はしません!)

 

つきましては、今から集計をして(エクセルなので、もうすでに終わっているのですが)、「スピッツで好きな曲ランキング 最終結果」(スピッツ大学調べ)を、動画(多分…)とブログ記事(絶対!)で作っていくつもりです。

 

一応、保管庫(part1~part5)として、投票していただいた方のランキングを見れるように残しておきますので、ご自由にご覧になっていただいて構いません。

 


重ね重ね、投票していただいた方、ありがとうございました。およそ750人くらいの投票がありました。もちろん、投票しなかった方も、スピッツ大学を訪れてくださってありがとうございます。ランキングは、別に投票しなかった方々も見ることができますので、良かったらまた見に来てください。

 

ランキング最終結果発表:2018年7月17日(予定)

 


 

スピッツ大学ランキング企画>(こんなルールで実施していました)

 

■趣旨
「このブログを読んでくださったスピッツファンの方々で(僕も含めて)、スピッツで好きな曲ランキングを勝手に作ること」

 


■ルール

 

①この記事のコメント欄に、あなたが選ぶ「スピッツで好きな曲ランキングベスト3」を書き込んでください。必ず、1位・2位・3位を1曲ずつ決めた上で、それが分かるように明記してください。

 

投票例(筆者的ベスト3)
1位 けもの道
2位 漣
3位 僕はきっと旅に出る

 


②選べる曲については、インディーズ曲とカバー曲を除いて、デビュー~アルバム『小さな生き物』(シングル曲【雪風】は含める)までの全ての発表曲とします。

 


③皆様に選んでいただいた、①②に該当する各々のベスト3について、1位の曲:3ポイント、2位の曲:2ポイント、3位の曲:1ポイントをそれぞれ与えます。そして、そのポイントを全て加えていって、ランキングを作っていきます。

 

 

ランキング途中結果 part2
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2017/05/05/154337

 

ランキング途中結果 part1
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2016/07/25/233059

 

 

保管庫 part5
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_3

 

保管庫 part4
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_2

 

保管庫 part3
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000_1

 

保管庫 part2
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/8823/06/22/000000

 

保管庫 part1
http://itukamitaniji.hatenablog.com/entry/2015/08/01/003522

218時限目:コメット

【コメット】

 

コメット

コメット

  • provided courtesy of iTunes

 

■アルバム『醒めない』の4曲目に収録されている曲です。

 

このアルバムの収録曲だったら、僕は【コメット】が一番好きなんです。そして、後述しますが、この【コメット】こそ、アルバムのコンセプトである「死と再生」の象徴である(ような歌詞がたくさん出てくる)物語だと思っているのですが、どうでしょうか。

 


■まず、この曲は、ドラマ「HOPE ~期待ゼロの新入社員~」の主題歌に起用され、アルバム発売前にいち早く聴くことが出来ました。

 

僕も、ドラマの初回を見て、エンディングで流れたこの曲を聴きました。初めて聴いた時に、何てきれいな曲なんだと、すでに名曲の予感をプンプン感じました。

 

綺麗なピアノの旋律からイントロが始まり、そのままピアノの音がバックで鳴っていて、メンバーの演奏や曲の雰囲気もあり、いつもより優しく聴こえる草野さんのボーカルを引き立てています。流れるようなミドルテンポがとても気持ち良く、歌詞とも相まって、何ていうかちょっと切なくもなります。

 


ドラマの方は、Hey!Say!JUMPの中島裕翔が初主演を務めた、商社(営業課)で働きはじめた新入社員の奮闘を描いた物語でした。僕は、最初に【コメット】を聴く目的で第1話を見ましたが、これも縁だと、それから最終話まで毎回見ることになりました。

 

というより、いわゆるサラリーマンっていうんでしょうか、営業とか人事とか、そういう仕事を自分自身がこれまでしたことがないので、ドラマの内容も新鮮に見ることができ、個人的には面白かったんです。

 

もちろん、毎回【コメット】が聴けたので、それもずっと嬉しかったですけどね。ちなみに、ドラマの物語に、【コメット】の歌詞が沿っているということは決してないようでした。

 


■さて、タイトルの”コメット”という言葉についてです。

 

僕は最初、”コメット”という言葉を聞いて、彗星という意味を思い浮かべました。実際、コメット / cometで、彗星やほうき星という意味があるのは知っていました。(完全に、ファイナルファンタジーの知識ですけどね…同じ名前の魔法があるので、笑)

 

しかし、これはこの曲を聴いて、色々調べてみて初めて知ったことですが、”コメット”という”金魚”の品種があるそうなんです。もっとも、この金魚の”コメット”自体、金魚のフォルムを見て、元の言葉の意味である”彗星”から名付けられたものであり、あながち前者の意味を思い浮かべたことも間違いではないのですが、何より、この【コメット】の歌詞のAメロに、

 


黄色い金魚のままでいられたけど
恋するついでに人になった

 

という部分があるので、”コメット”という言葉には”金魚”を当てはめた方がよさそうです。

 


■そうなってくると、じゃあ、なんで”金魚”という生き物を曲のタイトルにしたのか?金魚にこだわるその意図は?と考えたくなります。

 

というところで思い出すのが、前アルバム『小さな生き物』や、そのアルバムに収録されている【りありてぃ】という曲です。まぁ、【りありてぃ】に関しては、僕自身がもうすでに書いたので、個人的な想像によるところが大きいですが、これらと【コメット】のつながりを、色々と想像しています。

 


まず、アルバム『小さな生き物』とアルバム『醒めない』の関係性については、MUSICAのインタビューにおいて、

 


草野「…まぁ、『小さな生き物』が旅に出る前の不安と期待が入り混じったアルバムだとすると、”雪風”は再生を匂わすものになっていたと思うんで、そういう意味では、アルバムのスタートにはなってると思いますね。」

 

という風に草野さんも語っており、精神的に『小さな生き物』から『醒めない』へと続いており、前に進もうとしている、という感じに読み取れます。

 


そして、その収録曲である【りありてぃ】についてですが、その歌詞にも、サビに”金魚”という言葉が出てくるのです。

 


変わった奴だと言われてる 普通の金魚が2匹
水槽の外に出たいな 求め続けてるのさ
僕のりありてぃ りありてぃ

 

という感じです。僕はこの【りありてぃ】の解釈として、自分の世界に閉じこもっている”僕”(と”君”)のことを、”金魚”という比喩表現で表しており、そんな”僕”が、”君”と出会ったことで、”水槽の外に出たい”と、つまり自分の世界から出たいと思うようになり、勇気を振り絞っている、という物語を当てはめたのでした。

 

ちなみに、アルバム『小さな生き物』の歌詞カードの表紙には、赤い金魚が4匹プリントされており、”金魚”が”小さな生き物”のひとつの象徴として用いられていることが分かります。(4匹なのは、メンバーを表しているか?)

 


ということで、これらを踏まえて、これは勝手な想像…というより、そうだったら面白い展開だな、という願望もあるのですが、【コメット】は【りありてぃ】と繋がっており、同じ主人公だったら胸熱の展開だなって思うのです。まぁ、あんまりそこにこだわった解釈にはなっていないですが、少なくとも、”金魚”という言葉に込められた意味は、同じじゃないかなって思うんです。

 

まず、【りありてぃ】では、閉じこもっていた世界から抜け出そうとして、ドアノブに手をかけたものの、その”冷たさにびびった”とあるように、外へ出ることへのためらいを読み取ることができます。先程の、草野さんのインタビューの言葉を借りるのならば、”旅に出る前の不安”を感じます。

 

そして【コメット】は、歌詞に”街角”や”ホーム”という、部屋の外の場所を表す言葉が出てきており、ここからも、一歩進んだ状況だということが読み取れます。

 


■では、【コメット】の歌詞を読んでみます。

 


誰でもいいよと生き餌を探して
迷路の街角で君に会った
黄色い金魚のままでいられたけど
恋するついでに人になった

 

出だしの歌詞です。この辺りは、まさに【りありてぃ】に通じるところがありますよね。ここにもまた、”金魚のままでいられた”という風に、自分が閉じた世界に居たことを示している部分がありますが、”君”に恋をして”人になった”ということで(”恋するついで”という言い方も面白いですよね)、”君”との出会いが、”僕”が閉じた世界から抜け出すきっかけになったと読むことができます。

 



「ありがとう」って言うから 心が砕けて
新しい言葉探してる
見えなくなるまで 手を振り続けて
また会うための生き物に

 

サビの歌詞です。でも、不思議ですよね。出だしの歌詞は、”僕と君との出会い”を描いているように読めますが、ここの歌詞は、どちらかというと”別れ”を描いているように読めます。

 

だから【コメット】は、出会いと別れ、その両方を描いていると考えるしかないです。何ていうか、最初の部分は、君に恋をして出会った時を描いていて、そこから実は時間が経過していて、Bメロの”夕暮れ ホーム”の場面へと飛び、件のサビへと続いていくわけです。

 


そこへきて、サビの歌詞ですよ。もう、震えますよね、本当に美しい歌詞です。

 

個人的な想像では、ここは”君”の方が旅立つシーンで、”僕”が見送りに来たという状況をイメージしました。2番のBメロに、”優しいものから離れてく”というフレーズがあるので、自分が離れるというよりは、相手が離れていくという状況が合うかなと思いました。

 

そこで、”君”が”僕”に「ありがとう」と言うわけですよね。ひょっとしたら、”僕”は、「ありがとう」を言われ慣れてなかったのかもしれません。”心が砕けて”という表現も印象的ですが、「ありがとう」という言葉をかけられ、嬉しさと、別れに対する寂しさが入り混じり、心が張り裂けそうな気持ちになったのでしょう。ひょっとしたら、涙を流したかもしれません。

 


そして、この歌詞。

 


見えなくなるまで 手を振り続けて
また会うための生き物に

 

僕は、ここの歌詞が本当に好きなんです。すごい歌詞だなって思うし、このアルバム『醒めない』のコンセプトである「死と再生」を象徴する歌詞だなって思うんです。

 

情景が浮かびますよね。”ホーム”でのシーンなので、”君”は電車や新幹線に乗って旅立つところですかね。やがて、扉が閉まり、”君”を乗せた電車が出発します。ホームに”僕”を残し、電車は走り出します。ドラマで考えると、別れを惜しむ”僕”が手を振りながら、電車に並走するシーンでしょうか。

 

やがて電車は…”君”は見えなくなり、”僕”は独りホームに取り残されます。それでも、立ちつくして、見えない”君”の後ろ姿に、いつまでも手を振り続けるのです。

 


■別れた瞬間からもう会いたくなって、また会える日を願いながら、それが何日後か、何か月後か、何年後か…いつになるのか分かりませんが、その日だけを目指して、僕は君の居ない日々を生きていくのでしょう。

 

この辺りが、まさにアルバム『醒めない』に込めたかった、「死と再生」…言い換えるならば、「出会いと別れ」の物語だったのではないでしょうか。

217時限目:子グマ!子グマ!

【子グマ!子グマ!】

 

子グマ!子グマ!

子グマ!子グマ!

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■アルバム『醒めない』の3曲目に収録されている曲です。

 

【醒めない】でテンションが上がって、【みなと】でちょっと感傷的になって、いよいよこのアルバムのストーリーへ!ってなってからの、【子グマ!子グマ!】ですからね。こ…子グマ!?ってなっちゃいますよね、笑。

 

そんな、不思議でかわいらしいタイトルにも表れていますが、草野節満載で、スピッツお得意(?)の、”かわいい”と”かっこいい”が、なぜかこんなにも共存するロックナンバーになっています。

 


■草野ボーカルとともに、終始聴こえてくる女性ボーカルは、Czecho No Republicチェコ・ノー・リパブリック)というバンドのタカハシマイさんが担当しているそうです。その辺りのことは、MUSICAのインタビューにおいて、少し触れられています。

 


田村「…”子グマ!子グマ!”でCzecho(No Republic)のタカハシさん(タカハシマイ)が歌ってくれたんだけど…凄い緊張してるのはわかったんだけど、一発目が完璧だったの。たぶん結構練習してきたんだろうし、いろんなことを想定してやってくれたんだろうなって思ったら、聴いてる時にすげぇ感動しちゃって」

 

三輪「泣いてたもんね」

 

草野「鼻水出てた」

 

田村「そこは別にいいんだけど(笑)。…」

 

こんなやり取りが、インタビューの中でされています。もう、ほんとにいいおじさんたちですよね、笑。田村さんが感動で涙を流すほどの、素晴らしいバックボーカルを聴くことができます。

 


あとは、皆で”子グマ”に応援のエールを送っているようなCメロには、スピッツメンバーに加えて、亀田誠治さんもコーラスとして参加してるそうです。

 


■では、【子グマ!子グマ!】が、どんなことを歌っているのか、考えてみます。

 

まず、これも同じくMUSICAのインタビューにおいて、正確には、アルバム『醒めない』全体に対して、草野さんが語っていることなんですけど、特に【子グマ!子グマ!】に繋がっていることのように感じますので、紹介しておきます。

 


草野「『シートン動物記 くまの子ジャッキー』ってアニメを知ってます?あのストーリーが自分の心に残ってて。もしかしたら違うかもしれないけど、俺が覚えてるストーリーだと、親熊を殺された小熊を、ネイティブアメリカンの子供が育てることになるんですよ。でも紆余曲折あって、サーカスに売られちゃったりして、離れ離れになっちゃうんですけど、最後は再会して抱き合うっていう。その時は小熊はもうデカい熊になってるんだけど、でも熊もその子のことを覚えてて……」

 

「くまの子ジャッキー」とは、また古いものを、笑。古いアニメなので(1977年にテレビ放送されたアニメ)、リアルタイムではさすがに僕も見たことありませんが、幼い頃にどこかで少しだけ見た記憶が、微かに残っています。ただし、アニメの物語は詳しくは知らないですね。


しかし、草野さんがそう言うならば、曲のタイトルが【子グマ!子グマ!】なので、否応なく、アニメの物語と曲の関連を繋げて考えてみました。

 


それで、今回は調べてみても、詳しい物語(あらすじ)を得ることが出来なかったのですが、wikiには各話のサブタイトルは一覧として載っていましたので、そこから多少の物語は想像できそうです、笑。

 

「くまの子ジャッキー」の物語は、まず、母熊を殺された(これは人命救助のために、やむなく主人公の父親が撃ったそうです)子熊のジャッキーとジルを、息子のラン(熊を撃ったのが父親)が引き取って、子熊を育て始めるところから始まります。

 

そこから、ランとジャッキーが友情を深めていく物語が進んでいき、草野さんの言う通り、物語のどこかでランとジャッキーの別れ(おそらく、望まれない形の別れ)があるようなのです。そして、物語の終盤で、ランと大きくなったジャッキーが再会を果たし、おそらくそのまま、ジャッキーを自然に返し大団円という流れになっていくと思います。

 


■なので、アニメでいうところの、”熊と主人公の別れ”のシーンをイメージして、草野さんはこの【子グマ!子グマ!】を作ったのだと、勝手に想像しています。

 

まぁ、アニメは”熊と人との出会い・別れ”を描いていますが、アルバムの方は、普通に考えると”人と人との出会い・別れ”を描いたものになっているとは思います。だから、そのままアニメの物語を追っていってもいいし、”子グマ”となっていますが、自分にとっての愛しい人の比喩になってるとも思います。

 


ということで、歌詞を少し読んでみます。まずは、出だしの歌詞から。

 


はぐれたら 二度と会えない覚悟は
つらいけど 頭の片隅にいた
半分こにした 白い熱い中華まん 頬張る顔が好き

 

”はぐれたら 二度と会えない覚悟は”という言葉があるように、二人に別れの瞬間が近付いている、という描写に読めます。そして、別れたら、もう”二度と会えない”かもしれない、と”頭の片隅”でちょっと寂しく思っているわけですね。

 

”中華まん”の下りは、面白いですね。これは、過去の思い出を回想しているのでしょうか。はたまた、別れが近付いた時期に、そういう何てことないことも、余計に愛しく感じているのかもしれません。

 


ところで、今まさに別れの瞬間を迎えようとしている二人の関係性はどういうものなのでしょうか。

 

例えば、”子グマ”という言葉や、先程の「くまの子ジャッキー」のストーリーを考えると、親子という関係を当てはめることができるかもしれません。まさに、”巣立つ子を想う親心”というものでしょうか。

 

進学のため、就職のため、あるいは、結婚のため…色んな状況を想像できますが、育ててきた愛しい我が子が、自分の元を巣立っていく瞬間をイメージすることができます。僕のイメージとしては、この方が強いですかね。

 

あとは、”頬張る顔が好き”という言葉は、何ていうか、恋愛感情にも捉えることができそうです。実際に付き合っていた恋人同士だったり、片思いをしていた、ずっと近くに居た友達など、そういう関係も当てはめることができそうです。

 


■そんな二人に、つらいけれど、必然的に別れが訪れます。

 


喜びの温度は まだ心にあるから
君が駆け出す時 笑っていられそう

 


幸せになってな ただ幸せになってな
あの日の涙が ネタになるくらいに

 

それぞれ、サビに出てくるフレーズですが、別れに際して、”君”をこんな風に送り出しています。

 

個人的に、”喜びの温度”という言葉が好きなんです。これは、先程の”熱い中華まん”にもかかっていると思っています。”中華まん”は、二人で分け合ってきた、楽しかった嬉しかった思い出の比喩でもあり、そういう思い出が残っているから、別れる時は笑って君を送り出そうという、優しさを感じることができます。

 



子グマ!子グマ!荒野の子グマ
おいでおいでするやつ 構わず走れ
子グマ!子グマ!逃げろよ子グマ
暗闇抜けて もう少しだ

 

ここが、メンバーと亀田さんがシンガロングしているCメロの部分です。ここは、完全に「くまの子ジャッキー」を意識していますよね。全員で、必死に”子グマ”を応援しているように歌っているのを聴くと、こっちまで「頑張れ!子グマ!」って応援したくなってきます、笑。

 

そのまま「くまの子ジャッキー」の物語に当てはめても良いですし、大切な人との別れを当てはめても良いと思います。

 

いずれにせよ、先程紹介したサビの部分とも繋げて考えて、大切な人と別れるのはつらいけれど、そのつらい気持ちをぐっとこらえて、笑って送り出し、そして、頑張れ!とエールを送っているのです。

 


■毎回この話はするかもしれませんが、笑。

 

アルバム『醒めない』の一つのテーマとしては、「死と再生」というものがあるようですが、それはそのまま「別れと出会い」に置き換えることができるかもしれません。アルバム『醒めない』には、そんな物語がたくさん詰まっています(あるいは、アルバム全体でひとつの物語)。【子グマ!子グマ!】も、その物語の一つと言えるかと思います。

 

それにしても、【子グマ!子グマ!】という、ゆるーいタイトルでこんな曲になるとはねぇ…。

216時限目:醒めない

【醒めない】

 

醒めない

醒めない

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■15枚目のアルバム『醒めない』の1曲目を飾る、ご覧の通り、アルバムの表題曲になっています。

 

2017年(厳密には7月17日)に、結成30周年を迎えたスピッツですが、そんな30周年イヤー目前の2016年に発売されたアルバム『醒めない』、その表題曲というんだから、スピッツの30年分の気持ちが詰め込まれていると言っても過言ではない、記念すべき楽曲です。

 

僕が、生まれて初めて行くことになった、2017年に行われたスピッツ結成30周年のライヴツアー、通称”3050ツアー”においても、1曲目に演奏されたのが、この【醒めない】でした。すでに、新スピッツテーマソングとして、すっかり定着した曲になっています。

 

そういえば、いつだったか、当時のMステのスペシャルにおいても、スピッツが出演して、この【醒めない】を演奏しました。スピッツが、こういう時にアルバム曲を歌うのって、珍しいですよね(と言うより、初めて?)

 


■さて。

 

当時、アルバム『醒めない』の発売に先立って、表題曲【醒めない】のMVがいち早く解禁になったんでしたよね。僕は最初、朝の仕事場でそれに気づいて、思わずトイレの個室に駆け込んで、少しだけMVを見たんです。【1987→】の時も、確かそうでした、笑。

 


先に、MVを貼っておきます。

 

youtu.be

 

何ていうか、僕は昔のことを知らない(生で見たことがない)けれど、スピッツがその昔、ライヴハウスで演奏していた頃のライヴシーンを、そのまま映したような映像になっています。

 

あぁ、4人だけの演奏をしっかり堪能できる、僕が好きな感じのシンプルなMVだなぁ…とか思っていたら、1番の途中から、スピーカーの後ろから、アニメーションのキャラクターにデフォルメされた小さなスピッツメンバーが飛び出してきて、そのままスピーカーの上で演奏をし始めるという、意外な展開に、笑。

 

しかも、そのキャラメンバーが、ラーメンズ片桐仁スタイルの三輪さん、ハンチング帽子スタイルの田村さん、ランボースタイルの崎山さんという、これは意図的に昔のメンバーのスタイルを模したものにデフォルメされており、どこか懐かしく、クスッとくる感じになっています。

 

そして、草野さんに関しても同様に、短髪でジーンズスタイルという、これはブルーハーツ甲本ヒロトスタイルでしょうか。ギターも握らず、歌いながらピョンピョン飛び跳ねる様は、まさにリンダリンダジャンプを彷彿させますね、笑。

 


この辺りのことは、【醒めない】の歌詞にも表れています。

 


カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々
でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

 

結成して、アマチュアで活躍していた頃のスピッツは、元々パンクロックバンドでした(を目指していました)。まさに、このMVにおけるキャラメンバーは、その頃のメンバーを具現化したものだと言えますね。

 

このMVの最後において、全員が黒い革ジャン姿のスピッツが演奏するシーンが映りますが、もしもスピッツがパンクロックバンド路線のまま、活動を続けていたとしたら、今でもこんな姿のスピッツが見られたんでしょうか。

 


■ところで。

 

2018年の年始より、草野さんがパーソナリティーを務めるレギュラーラジオ番組が始まりました。

 

毎週、草野さんが選曲した、少々マニアックなロックナンバーをまとめて聴くことができ、毎回欠かさず聞いているという方も多いのではないでしょうか。僕も、録音+生で聴くことを、今はほぼ毎回欠かさず続けています(録音は続けていくか微妙です…)。

 


そして、そのラジオ番組の名前が「Spitz草野マサムネのロック大陸漫遊記」というのですが、まさにこの”ロック大陸”という言葉も、楽曲【醒めない】の歌詞から取られたものなのです。

 


まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり

 

こんな風に、サビの歌詞に、”ロック大陸”という言葉が出てきています。ラジオの中でも、たくさんのロックナンバーを紹介することを、草野さんは、「ロック大陸を冒険していく中で知った、イカしたロックナンバーを紹介」みたいな感じ(設定?)で語っています。

 

事あるごとに、この番組の中のテーマソング的に【醒めない】が流れていますが、こういうところも、【醒めない】が、スピッツにとって記念すべき曲であることを示していますよね。

 


■それから、MUSICAのインタビュー記事を少し紹介してみます。

 

この【醒めない】という曲は、どうやらアルバム収録曲の中でも、一番最後のセッションで生まれたそうで、その辺りの話が少し載っています。

 


草野「タイトル『醒めない』でいこうってことになったので、そのテーマ曲を作りたくなって。あんまりタイトルから作ることってないんですけど……っていうか初めてかもしれない、タイトルありきで曲作ったのは」

 


崎山「リズム録る時にはもう、”醒めない”が1曲目って決まってたから、その気持ちで演奏しましたね…」
三輪「そういうこともあんまりないからね。『これが1曲目になるよ』って言ってレコーディングしたのは初めてじゃない?」

 

タイトルを予め決めた状態で曲を作ったことがないとか、曲順を決めた上でレコーディングしたことないとか、意外な感じもしますが、そういうものなんですかね。

 


いつかまた、アルバム紹介の時にでも、詳しく書いてみたいと思っているんですけど、アルバム『醒めない』は、「死と再生」という一貫した物語を設定して作ろうとしたアルバムだったのですが、【醒めない】は、スピッツのパーソナルな部分を歌っている曲で、この曲は、一貫した物語から少し外れたところにあると思っていました。

 

だから、何ていうか、本の表表紙みたいな感じの曲でしょうか。記事の中で草野さんが、「この時はもうコンセプト関係ねぇってなっちゃってたから」って言っていたので、何か腑に落ちました、笑。

 


■とにかく、何と言っても、この曲を一番象徴しているのは、この曲のタイトルにもなっています”醒めない”という言葉でしょう。”冷めない”ではなく、”醒めない”になっているだけでも、何か全然印象が違いますよね。

 

色んなところで、色んな言葉に置き換えられ語られてはいますが、この言葉に込められた想いは、要するに「ロックバンドとしてスピッツが結成され、30年も長きにわたって活動し続けてきたスピッツが(草野さんが)、未だにロックを追及していく気持ちを”醒めない”で持ち続けている」ということです。

 


先程も紹介しましたが、サビにおいて、こんな風に歌われています。

 


まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり

 


任せろ 醒めないままで君に 切なくて楽しい時をあげたい
もっと膜の外へ なんか未知の色探して
さらに解き明かすつもり

 

”最初ガーンとなったあのメモリー”とか、”なんか未知の色探して”とか、面白い表現ですよね。30年も経つのに(メンバーがロックに出会ってからだと、さらに長い月日が流れていますが)、初めてロックに出会った衝撃を今でも忘れずに、そして、今もまだ新しいロックを追い求めていく、スピッツの(草野さんの)姿を高らかに歌っています。

 


■あとは、これも先ほど紹介した、

 


カリスマの服真似た 忘れてしまいたい青い日々
でもね 復活しようぜ 恥じらい燃やしてく

 

なんかも面白いですよね。たいていの場合、何事も始まりは、誰かへの憧れだったり、そこからの物真似なわけで、そこから少しずつ、自分なりにオリジナリティを加えていくわけですよね。その始まりの日々というのは、人によっては、忘れてしまいたくなるほど、恥ずかしいものなのかもしれません。

 

しかし、30周年を前にして、スピッツは(草野さんは)あえてここで、”復活しようぜ 恥じらい燃やしてく”と、つまり、原点に帰ろうと歌っているのです。それは、この曲やMVにも表れていますし、後に発表される【1987→】なんかもそうですよね。

 



見知らぬ人が大切な人になり
相性悪い占いも余計に盛り上がる秘密の実
運命を突き破り もぎ取れ

 

この部分も好きなんですけどね、笑。”見知らぬ人が大切な人になり”とか、時間経過とともに、恋愛っぽくも読めますが、”秘密の実”とか”もぎ取れ”とか、そういうちょっとエッチな感じを入れてくところも、しっかり忘れてませんね、笑。

 


■ということで。

 

結成30周年イヤー突入に向けて、スピッツが”原点”に返りつつも、紛れもなく”今のスピッツ”を歌った新曲【醒めない】です。

 

あなたには、長く醒めずに追い続けている夢や目標などがありますかね?この曲は紛れもなく、30年も醒めずにロックを追い続け、今もなおそれが”通過点だ!”と言って、ロックのけもの道を走り続ける、男たちの魂の歌です!


最後にもう一度、MVを載せておきます。

youtu.be

215時限目:ガラクタ

【ガラクタ】

 

ガラクタ

ガラクタ

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■シングル『みなと』のカップリング曲であり、アルバム『醒めない』にも収録されています。

 

すでに紹介した通り、A面曲の【みなと】がしんみりとした、壮大な曲になっていますが、【ガラクタ】はまさにそれとは正反対の、明るく遊んでいるような曲になっています。

 

色んな音が聴こえてきて、やけにがちゃがちゃしていて、すごく賑やかです。CDクレジットを見た範囲で紹介すると、toy piano / トイピアノ、soprano recoder / ソプラノリコーダー、flexatone / フレクサトーン、samba whistle / サンバホイッスルなど、ちょっと聞きなれない楽器もありますが、色んな楽器が使われているようです。

 

しかし、それでいてメンバーの演奏などはしっかりとロックで、何ていうかそれらが妙にマッチしていて、聴いていて楽しい曲になっています。

 


■歌詞についても、結構遊んでいる感じなので、基本的には、あまり意味にとらわれることなく、言葉の持つリズム感や、ところどころで踏まれている韻を楽しんで聴くのが、結局は一番良いと思います。

 


あいつは何だ でっかい方のマンタ
しばらく会わないうちに 素敵になってジェラシー
風来坊のメッセージ 不思議な縁で
化けの皮全て脱いで 見つめ合った春の日

 

まず、こんなAメロで曲は始まります。”マンタ”(大きなエイのこと?)など、意味がよく分からない部分もありますが、そのまま言葉を拾っていって繋いで物語を妄想してみました。

 

(おそらく男性目線で)久しぶりに会った女性が、”しばらく会わないうちに”とてもきれいになっていて驚いた、という場面ですよね。ここからは、かつて自分が所属していたクラスや部活・サークルなどの旧友たちと久しぶりに会う、同窓会や飲み会みたいなものをイメージしました。

 

あとは、”素敵になってジェラシー”という言葉について、どういう場合にジェラシー(嫉妬)を感じるか考えてみた時に、例えば、再会すると綺麗になっていた女性が、かつて付き合っていた女性だった、とかだったら、あの時別れるんじゃなかったなぁとか思うかもしれません。

 

”ジェラシー”という言葉をもっと考えたら、その女性には付き合っている人が居たり、何なら、再会したらもうすでに結婚していた、とかだったら、余計に”ジェラシー”を感じるかもしれませんね。

 


■さらに続きを読んでいくと、2番のAメロではこうなります。

 


粟 稗 コーリャン 対象外のオーラ
出会っちゃいけない二人 燃え上がってランナウェイ

 

”粟 稗 コーリャン”の意味は、またしてもよく分からないですね…”粟”(あわ)はイネ科の植物、”稗”(ひえ)もイネ科の植物、”コーリャン”は中国語でいうところのモロコシを表すので、ひょっとしたら、ちょっと卑猥?男性器の比喩か?

 

そして結局、後半の”出会っちゃいけない二人 燃え上がってランナウェイ”に行き着きます。久々に出会った二人でしたが、燃え上がっちゃったんですね、笑。ということは、女性に再会して”綺麗になったな”と思った男性側だけでなく、女性の方もまんざらではなかったということですかね。

 

”出会っちゃいけない二人”という表現があるように、やっぱり、女性が結婚していた(あるいは、男性側も結婚していた)という状況のイメージが、余計に浮かび上がってきました。

 


ということで、物語をまとめてみます。例えば、こんな感じ…

 

付き合っていた過去がある男女が、時が経って、同窓会などで再会しました。女性の方がすっかり綺麗になっていて、男性の方は驚きます。しかしながら、女性の指には指輪が…女性は、もうすでに誰かの物になっていたのです。ああ、こんなにきれいになるんだったら、手放さなきゃよかったなと、男性の方は後悔、女性の心を射止めた男に嫉妬します。

 

しかし他方、女性の方も、まんざらではないようで、男性に再会して、心が揺れ動きます。

 

ということで、再会した2人は燃え上がり、もう”粟 稗 コーリャン”状態でランナウェイ状態ですよ(?)。恋人として付き合っていた時を思い出して、しかも、不倫などというふしだらな関係だったとしたら、余計に燃え上がるでしょうね。

 


■ということで、最後にサビを見てみます。

 


祝い風に舞う 黄色い花びら
もう恋なんてしない とか言ってたのに
ゴミ箱キラキラ ちょい新しいな
ゲスな指先 甘辛い ガラクタ ラブストーリー

 

ここも、これだけ見ると、何かキラキラしていて、恋のはじまりの喜びを歌っているようにも読めますが、やっぱり全体で読んだ感じがあるので、一筋縄で読むことができません、苦笑。

 

タイトルにもなっている”ガラクタ”という言葉が出てきていますが、どういう意味合いで使ったんですかね、”ガラクタ ラブストーリー”ってつながりも妙ですけどね。

 

何ていうか、そういうもの(先述のような不倫など)への皮肉っていうんですか、そういう気持ちを、草野さんが忍ばせたんでしょうか。

 


”ゲスな指先”という言葉とかね…ゲスな指先…ゲスな…ゲス?ゲス!?

 

はい、ということで、この歌は、あの”ゲス不倫”を皮肉っているのではないか?という解釈も、巷では少し広まっています…いや、時々見かける程度ですかね。

 

まぁ、先述のような歌のテーマと、この歌が”ゲス不倫”があった当時に作られた歌だということ、そして、ここにズバリ”ゲス”という言葉が出てきていること…これらを繋げて、そういう解釈が生まれたということだと思います。僕は、あんまり繋げて考えることはしませんでしたが…果たして。